今日から神様のペットです④
(カリナにとっての)サービス回です
料理できる環境ではなかったので普通に食事するだけになってしまったが、カリナ様に申請した調理スペースはまたカリナ様が近くの木を折って作り始めたので小一時間ないぐらいで申請してから完成してしまった。ただ調理道具は鍋とお皿ぐらいだけだったので残りは今度用意することになった。
「することが無くなったとはいえなんで私はご主人様に撫でられているんですか?」
「えぇ~、よくない?それに最初に私のペットにするって言ったもんね!」
そう、なぜかカリナ様が即効で作った椅子に来いと言われ一応行ってみたら強制的にカリナ様の膝の上に座らされ頭を撫でられている。とても恥ずかしいのでやめてほしい。それにしてもカリナ様の体が柔らかすぎてなんだか興奮・・・、するものは無くなっていたのである。がっかりしている自分の、そんなことを知る由もなく構わずカリナ様は撫で続ける。しばらくするとリナも撫でられるのがだんだんと気持ちよくなって無意識的にしっぽをご主人様に擦り付けぶんぶんと振り、目を閉じてなでなでを享受していた。
「ふわあ、きもちぃ~です」
などとご主人様が私のために頭を撫でて気持ち良くしてくれている事実に溺れ、つい目を瞑り続けるとうとうとと眠くなってきた。・・・
「・・・、あら?無心で撫でていたらリナちゃんが寝てしまっていましたか。色々と仕事をさせて疲れていたのかもしれませんが、落ち着いてもらえたようで何よりです。・・・この笑顔もかわいらしいですが無理に刺激するのも良くないのでこのままにしてあげましょう」
「勇者などという使命は忘れて私にこのまま拾われ続けてくださいね。あなたには幸せになってもらう権利がありますから・・・」
と最後は何を言っているかリナは理解することが出来なかったが、ご主人様はゆっくりと私の頭を丁寧に撫で続けてくれた。
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なんだか寝てしまっていたようである。寝る前にまた変な考えに支配されていた気がする。そんなことより胸のあたりがなんだかむず痒い。例えるならばなんだか揉まれている気がする。それも現在進行形で。
「うわぁ!!!」
と慌てて立ち上がると、バチンと誰かを叩いてしまったようである。
「いたた。うぅ、せっかくのいいものがあるから私にも分けてもらおうと揉んでただけなのに~」
などと言ってカリナ様は自分の胸に手を当てる。ほのかに膨らんではいるが自分の比較的豊満な胸に比べると大してない。ふん、能力とかは負けていても胸のサイズは自分の方が圧勝のようである。いや元男である自分にこんなおっきな胸があっても迷惑なのだが・・・。
「と、とにかく胸を触るのはやめてください!」
「え~、けち。減るもんじゃないのに」
「いいから!おさわり禁止です!」
などと言って胸を手で隠す。男だった自分がこんなポーズをとる日が来るとは思わなかった。非常に恥ずかしい。とはいえそうそう何度もセクハラされても困るので注意しておいた。この神様が守ってくれる気がしないが・・・。ふと外を眺めると外は暗くなっていた。
「寝ていてしまったのでもう夜になっていましたか。カリナ様は夕食も取られますか?」
「いや~、別に要らないかな。その道具とか食材とか持ったあった方が料理とかは作りやすいでしょ?まだ家に少ないし、私は別に食事なんてとる必要性は無いからね」
「というわけでリナちゃんがお腹すいてたら食べてていいけど」
「いえ、私もそこまでお腹がすいていないようなので遠慮しておきます」
いつもなら全然お腹が空いているのだが思ったより胃が小さくなっているのかもしれない。それかストレス。思い返すとストレスの原因になってそうなことしか起きていなくて思わずため息をつく。とにかく食事はまた明日にでも食べることにする。そもそもカリナ様のおっしゃる通りこの家に食材が少なすぎる。今度から対策を考えておくべきだろうか。・・・とりあえず食材の件はまた今度考えていくとして、せっかく家にいるのだから体を洗いたい。そう思いカリナ様に尋ねる。
「そういえば風呂とかは・・・、当然ないですよね・・・」
「風呂って何?」
マジか、この世界の神様は風呂を知らないらしい。もしかしたらそういう概念が無いのだろうか。
「お湯や水で体を洗って綺麗にして、一日の疲れをとるためのものですね」
「へー、そういうのがあるんだ。水浴びとかは聞いたことあるけどこの世界では見たことなかったな。見落としてたかな?」
そもそも風呂という概念が無かったようである。しかし、石鹸などはあるようなのでせっかくだからお風呂のイメージを伝え、カリナ様の力を使って作ってもらうことにした。そしていつものようにしばらくすると風呂が完成した。こういうところは神様に感謝という感じである。完成したものを見てみると、だいたいイメージ通りの風呂になっていた。なぜか数人入れそうなぐらい大きいのだが・・・。また水を出すところも見当たらないがどうするのだろうか。と思っていると、
「リナちゃんが言ってた蛇口?っていうのはよくわからなかったし作らなかったけど水は魔法で出せるようにしたよ。これなら誰か増えた時でもMPさえあれば使えるからね」
誰か住人を増やす予定でもあるのだろうか。第二の犠牲者が出るのを祈るばかりである。というか代わりの犠牲者になってほしいまである。ただ、水に関しては問題ないようだ。ここでも魔法アシストが活躍してくれそうである。大量に水やお湯を放出するという事態にならず量を調整することが出来そうだ。そこで気付いてしまった。
「あれ、風呂を作ったのはいいけど服脱がないといけないじゃん・・・」
まずい、自分の裸を見る羽目になるのを完全に忘れていた。いやいつか来ることだったしそもそも着替えるときに若干見たのでもう今更なのだが・・・。それよりもお風呂に入るときにカリナ様に入ってこないように注しておかなければ・・・。絶対にろくなことにならない気しかしない。
「いいですか、カリナ様!お風呂に入るときは”絶対に”入らないでくださいね!!!」
「え~、そんなこと言わないでよぉ。第一、男の子の体から女の子の体になったのに大丈夫なの?」
「うぐっ、それはその・・・、自分で何とかしますので!」
痛いところを突かれたがここは乗り越えなくてはならない。とにかく急いで風呂場に駆け込んで何か起こるより先に服を脱いでさっさと済ませることにした。服を脱ぐときに大きな感触が直に伝わってきたが心を無にしてお風呂に入った。が、ささやかな抵抗も虚しく、さも当然かのようにカリナ様はお風呂に入ってきた。裸で。ただし、大切なところは何故なのか白い靄がかかったかのように見えなかった。
「も~、せっかくだから一緒にいようよ~。あと、尻尾とか私が洗ってあげるよ!ちなみにご主人様の命令だからこれは絶対ね!」
などと言いながら抱き着いてくる。純粋に入ってくるのと抱き着くのを辞めてほしい。そして強制的に尻尾を触ることを確定させるのをやめてほしい。ただ尻尾が洗いにくいのは確かかもしれない。あと、耳も。今まで存在していなかった部分であるし、どう洗えばいいのか分からない・・・、あれ?もしかして風呂入るたびにカリナ様に洗われないといけない感じか?さすがにそれはまずい。今日はもうウキウキで尻尾を洗ったりブラッシングしようとしているカリナ様をどけるのを諦め、即急に自分で洗えるようになろうと決意した。
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その後も風呂の中でもみくちゃにされ、ぜぇはぁと息を吐きながら風呂から出てきた。疲れをとるために風呂に入った気がするのにどっと疲れがたまってしまった気がする。本末転倒過ぎるのだが・・・。
「いやぁ、風呂っていうのは楽しいものなんだね!」
「カリナ様のはベクトルが違う方向に向かっているのですが・・・、それと明日からはしっぽや耳は自分で洗うので入ってこないでください!・・・恥ずかしいので」
「う~ん、恥ずかしがるリナちゃんも可愛いけどまあまた別の機会かな。とりあえず体を乾かしてあげるよ。こっちおいで」
と言われついついついて行ってしまう。そして体の水分をカリナ様の力で程よく飛ばす。・・・あれ?タオルいらない感じですか?そして、そのタイミングで気付いてしまう。自分が着替える服がないことに。
「あのぉ、カリナ様につかぬことをお聞きするんですが私の着替えはどうしたらよいでしょうか・・・」
「大丈夫!すでに用意してるから待ってて!」
などと言い風呂場から裸で飛び出ていくカリナ様。なんだか不安しかない。毎度不安しか感じていない気もするが。しばらくして、下着と服を抱えてカリナ様が戻ってきた。なんだか服に見覚えがある。昼間の片付けの時にパジャマっぽいのがあるなぁとは思っていたが・・・。
「えへへ、リナちゃん用のパジャマだよ!耳を隠す部分と尻尾を通す部分を作った特製品だから!」
などと言ってもこもこのパジャマを見せてくる。ちなみにカリナ様も似たようなパジャマを持っている。お揃いにしたいらしい。
「まあパジャマ着る前に尻尾とか乾かさないとね。とりあえず下着をつけるから」
と言って問答無用で下着をつけられる。拒否権は無いようだ。すると昼間と同じように膝の上に体を運ばれてどこから取り出したのかブラッシング用のブラシを取り出した。非常に優しい手つきでゆっくりと丁寧にブラッシングしてくれる。私のためにふさふさの尻尾によるわざわざ手間をかけてくださって、えへへご主人様はお優しい・・・。などとまた変なことを考えていることに気付き頭をぶんぶんと振るとちょうどブラッシングも終わったようだ。朝からそうだがカリナ様に撫でられていると非常におかしな気持ちになっている気がする。カリナ様なんかに手懐けられないように一層リナは心を引き締めることにした。
ただ一日を過ごすだけで気付けば四話も書いていました。多分次回にはやっとこの一日が終わるかなと・・・。