始まりだった町④
先程の兵士たちが見えなくなるぐらいどこかへ進んでいくと、カリナ様が自分の手を掴み「移動するよ」と一言いうと瞬間景色が変わって見覚えのあるところに来た。ここはあの、自分が勇者として旅立つことになったヒラシア王国の門だ。相変わらずカリナ様のこの移動する力は便利だなと感じる。街の前にはかなりの人が居座っておりおそらく本陣なのだろう。もしかしたらあの中に自分を送り出そうとした国王やその周りの人たちがいるのかもしれないが特に何もしないことにした。そもそもカリナ様が傍観することに決めているからである。カリナ様がこちらに移動してきたということはもうここが戦場になるとでも言いたいのだろうか。ただ、自分も基本は見るだけに徹することにしたので戦場のすぐ近くで戦況を見つめることにした。
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各地で釣りの戦術が刺さったようであちこちから各個撃破の報告が挙がる。可能な限り少ない犠牲である程度の戦果を出すことに成功したようだ。ただ、こちらでも無くなってしまったものは多少出てしまっている。一応、自分が魔法を敵陣に目掛けてぶっ飛ばしてしまえばこの戦争は終わるかもしれないがそれは最後の手段だし、相手の兵士も殺しすぎるのは良くない。やりすぎると憎しみが相手国に募り、負の悪循環を呼び起こしてしまいかねない。なので、各個撃破したところでは可能な限り相手の兵士を捕らえるだけにするように伝えているがみな守ってくれているようだ。
「アメリア様、ヒラシア王国の軍勢を各個撃破することに各地で成功しています。また、高台にも軍勢が来ましたがネイラ様が無事退けることに成功し、形勢はかなり有利とみます。ここからどうされますか?」
「そう、なら相手の兵士の無力化を続けてちょうだい。可能な限り殺すことのないようにしてくれると助かるわ。私はそろそろ相手の本陣に畳み掛けていこうかしらね。私たちに手を出したことを懲らしめてあげましょう」
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「各地の戦線で部隊の敗走が続いています!可能な限り逃げるようにはしていますが既にかなりの数が相手に捕えられてしまっているようです」
「また、高台を取る事にも失敗したとの報告が挙がりました。相手方が既に陣取っていたようでこちらも敗走しているとの報告があります」
「ええい、なぜどこもかしこも失敗の知らせしか来ないのだ!!」
声を荒らげ国王は怒る。おかしい、兵士の数では明らかに差があるが各地で敗勢の報告ばかり流れてくる。まさか、攻めたのは間違いだったというのか。勇者は2人連続で原因不明の理由で見失ってしまうし、序盤は相手が撤退するところや優勢に戦闘を進めていたようだが、それは相手の罠でありこちらの戦列が伸びてしまった所を狙われて叩かれてしまっていたようだ。念の為に最後の手段を用意していたがまさか使う羽目になるかもしれない。近くにいる魔法士どもを呼び寄せる。
「一応使わぬつもりだったが、仕方ない。今ここで呼び出すことにする」
「で、ですがここは召喚に適した場所では無いのです・・・」
「ええい、黙れ黙れ!やれと言ったらやらんか!」
「は、はい!今すぐ準備致します!!」
国王はもしもの為に逆転の策を用意していたが、これによってどうにかなると安心した。ただ、急ぎで用意した魔法陣が歪な光を発していることに国王は気付くことは無かった。
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「おや?ちょっと嫌な予感がしますね。なんだかあちらの方で何かしているのかもしれません。様子を見に行きましょうか」
などと言い、平気で突っ込んでいくことを提案してくるカリナ様。自分は特になにかしているのかよくわからないがカリナ様だけが気付いたということは特に大したこともないのだろうか。なんだかんだ、ヒラシア王国の陣営からも近くで眺めているというよくわからない状況には気づいていないようだ。なんとも便利な力をカリナ様はたくさん持っているようである。音を立ててしまうとばれる可能性があるためそろ~りと近づいて様子を見に行く。これはこれで何か楽しいかもしれない。状況は何も楽しくないが・・・。
ところが突如本陣が慌ただしくなる。まさかばれたかと思ったが違うようだ。誰かが現れたようで慌てふためているようである。すると雷魔法が突然飛んできて何人もの兵士たちに直撃する。火力は抑えられていたのか気絶しただけのように見えるが一瞬で数十人が無力化された。それにより若干の空白が訪れる。誰によるものかと思い魔法が飛んできた方向を見るとアメリアさんたちがいた。
「あ、アメリアちゃんだぁ、ここまで来たんだねえ」
「あら?聞き覚えのある声がしたけどどこからかしら・・・ってカリナちゃんとメイドちゃんじゃない。さっき魔法を撃った時には見えなかった気がするのだけど」
とアメリアさんが自分たちに気付く。突如のアメリアさんの来訪に続きありえないぐらい近い位置にいる自分たちの存在にも気づき、「だ、誰だ!」と数人の兵士たちが慄く。・・・いや、カリナ様が自分から声を出して居場所を知らせたら隠れていた意味がないのでは?
「それはかくかくしかじかで見ていたからねぇ、基本手を出すつもりはないから」
「確かにそうね、一応これは私たちの戦いだからね。メイドちゃんは一応関係はあるけど」
と言われ相手の兵士の注目も集まる。どう見てもこんな戦場にいるのがおかしい服装が二人いてうち一人はメイド服を着ているから尚更である。兵士たちが何か生唾を飲むような音が聞こえたが無視することにした。まさか原因が自分の姿にあると思いたくないから。だって兵士たちの視線があまりにも自分に向いている気しかしない。と思っているとその男たちがもがき始めて苦しむようなしぐさを見せ始める。この光景なんだか見覚えがあるなと思っていたらカリナ様が若干怒っていた。
「リナちゃんをそういう目で見ていいのは私だけだから!!!!」
・・・あなたがこんな服装を着せるからでは?さすがに苦しそうにしている兵士たちに僅かな同情だけを送り、泡を吹いて倒れていくのを見守る。ただ、カリナ様が攻撃した仕草は見せなかったがアメリアさんと仲が良さそうに話していること、兵士たちがアメリアさん以外に倒されたことで攻撃の目標が何もしなければアメリアさんだけだったのが自分たちにも向いてきたようだ。ただカリナ様の謎の攻撃が分からない以上うかつに攻められないらしく、その横からアメリアさんの魔法によりまた何人もばたばたと倒れていく。その兵士たちが捕まえられる位置にいるものをアメリアさんについてきた人たちが縛って無力化していく。どう見てもヒラシア王国側の本陣が壊滅し始めていることから敗勢が目前に迫ってきているように見える。しかし、事はそんな簡単に行くことは無かった。急にカリナ様が自分の手を引き若干後ろに下がる。アメリアさんたちも同様に下がっていた。何かと思っていると突如本陣から不穏な空気が漂い始める。途端「ぐあああ!!!」という悲鳴が聞こえる。敵兵を含めたその場にいる人間が何事かと思うと、おそらく本陣の更に中心部にいたのであろう人々が逃げ始めてきた。「とにかく逃げろ!」と叫びながら。しかし、その人たちが逃げることは叶わなかった。その人の腹や頭から槍が生えてきた。数人が一瞬にして絶命する。アメリアさんもその光景に「なっ・・・、誰が何をしている!?」と驚きの声をあげている。するとそれは中から出てきた。・・・、血濡れの槍と国王の亡骸を掴みながら。
「急にこの世に呼ばれたと思ったらなんだこれはよォ」
「き、貴様!!まさか国王様を!!」
「あァ~、これか?これなら変なことをほざくから1度刺しといたぜ」
と言って国王をポイッと投げ捨てる。腹部辺りに刺されたのか服に血が染み付いており、仮に生きていたとしても内臓にダメージが少なからず入っていそうで既に絶命している可能性が高そうだ。
「なんだ勇者になれとか行ってきたけどよォ、なんで他人に言われなきゃならねェんだ。オレはンなこと興味ねぇよ」
「お前国王を侮辱するだけで・・・がハッ」
目の前のヤバそうなやつに反抗しようとした男が急にどさりと倒れる。男が槍を投げて刺し殺したようだ。しかも投げたはずの槍が男の元へスルスルと戻っていく。
「まァでもよ、この体の軽さにはその国王サマとやらには感謝スっかなぁ。周りのヤツらは大したことないし何故か女もいるしなァ」
とこちらにヘイトが向いた瞬間カリナ様が後ろに引いていく。ただ今回は何も手を出していないのだろうか
「あれぇ?困りましたね、体の中に干渉しているのに倒れてくれませんね。もしかしてリナちゃんの時にしなかったので気付きませんでしたが何か耐性ある感じですか」
「え、じゃあどうするんですか?」
「私が攻撃してもいいんだけど出力失敗したら怖いしなぁ。相手が近づいてくれれば楽なんですけど恐らく槍のリーチ使って来ますよねぇ。う~ん、そうだ、リナちゃんなら耐えるし私が攻撃しちゃいましょう。アメリアちゃんに任せてもいいんですが避難の手伝いしてもらいます」
「ということでアメリアちゃん、これ私が処理していいですか?1分で終わらせます、なのでみんなを連れてどっか行ってください」
「カリナちゃん?この男だいぶ強そうだけれど」
「いえ大丈夫です。どうせ元のリナちゃんより少し強い程度なので。という訳で攻撃当たるとまずんいで逃げてくれるとありがたいかなぁ」
「そう?なら任せるわ。私も周りの人たちを見ながら戦うのは勘弁ね。という訳で動ける人たちだけでも逃げるわよ」
と言って皆を連れて逃げ出す。・・・あれ?自分は?
「あァ~、んだこのアマ?舐めてんのか?」
と言って投げつけた槍はカリナ様に刺さることなく、力なく地面に落ちて男の元に戻っていく。
「ああその程度の攻撃意味無いですよ。だって私神様なので、リナちゃんを害しそうなやつは私の手で処分しますから」
その瞬間、物凄い圧をカリナ様から感じる。今までの生活から考えられない圧だ。何と言うか死を感じる。それを受けた男は少し退きながら面白そうに、帰ってきた槍を持ってニヤリとこちらを見てくるのであった。
ちょっと内容を繰り出すのに苦戦しています




