知られた秘密。
いるはずのない彼女に、今ここにいる理由を聞くと…。
「きゃっ、ごめんなさい!」
朝急じゃない話しかけ方なんて無いとかいっていたが、めちゃくちゃ驚くのでこれは驚きである。
「なんだぁ君かぁ、先生かと思ったぁ。っじゃなくてなんでここにいるの?!!」
さっきの泣き声は幻聴かと思わせるほどに彼女は元気になった。
「いや、別に」
「なんでもない人が深夜の学校になんて来ないでしょぉー」
「はぁ、探し物だよ。些か重要なものを探しに来たんだ。ねえ、鶯色の封筒を見なかった?」
その瞬間、彼女の何かが変わったのを感じた。
「う、ううん、見なかった。あ!私眠いから帰るね。おやすみ!」
彼女は駆け足に深夜の学校を去ってしまった。
それから二十分ほど探し回ったが。成果は得られなので帰ることにする。
「これじゃぁ深夜徘徊じゃ無いか…」
念の為もう一度下駄箱を見ると、すぐに異変に気付いた。
開いてる…。先ほど侵入した際には閉じていた。
そして学校内で下駄箱を開けるような人物は今、一人。
彼女だ。
恐る恐る中を確認すると、やっぱり…
「見栄えの良く無い診断書」はそこにあった。
「彼女が見たってことか?…」
だとしたら泣いていたことにも辻褄が合う。
人間は最悪の状況に陥った時、何も考えることが出来ないというが、本当らしい。
頭の中、いや、視界すらも真っ白になった気がした。
呆けていること一時間。
気づけば東の空が明るい青色に変わってきていることに気がついた。
「……帰ろう」。
次の日の学校には、余命を申告された少年の姿はなかった。