戦い前に愚痴だけ伯爵を吹っ飛ばしました
戦いは我軍の大勝だった。
我軍は潰走した敵兵を追って、そのままオウルの町になだれ込んで、これを占拠した。
街に入った時にはクリステイーン様はハウキプダス伯爵を追って既にいなかった。
南部のキーミンキへはフィル様が伯爵軍3千と本領軍500を率いて出撃。
ロヴァミエ伯爵には近隣の伯爵家の降伏をお願いした。
1日後にはハウキプダスも占拠、直ちに本陣をハウキプダスに移した。
クリスティーン様はハウキプダス伯爵を探して次々と近くの伯爵領を占拠していった。
そして、1週間後にはハウキプダス周辺の10伯爵領が我が方の支配下に入ったのだ。
最初は1%だった支配率が20%まで高まり、我軍は稀に見る高揚していた。
今回はできる限り迅速に支配を確立するために、ハウキプダス伯爵以外は全て許す方針で挑んだのだ。
ただし、直ちに伯爵自らがハウキプダスの招集に応じればだ。
応じない2伯爵家はクリスティーン様とフィル様が占拠してくれた。
ハウキプダスの館は王城のように立派だった。有名な絵画もいたるところに飾られており、前に行ったオースティンの王宮のようだった。王宮よりも有名な絵画は多い気もした。
いかに、ハウキプダス伯爵が領民を搾取していたかだ。
妾も10名を越えて、全てが取り潰された貴族出身の娘や妻だった。希望者は侍女として雇うということで、統率はルンド先生にお任せすることにした。
そして、全ての伯爵家と私の配下というか協力してもらっているスタッフが会議室に集まった。
私は座りたくないのに、一段高い席に豪華な椅子を置かれてそこに座らされたのだ。
横にはフィル様とイェルド様が並ばれて、反対側にはクリスティーン様とガーブリエル様とヴィルマル様の戦闘部隊が並んでくれた。
そして、私の前には16の伯爵が一同に揃っていたのだ。
「なんだか、おままごと政権みたいですな」
大声で叫んでいるの男がいた。確かケミン伯爵だ。
新たに加わった伯爵で、先生によると愚痴が多いとのことだった。愚痴ケミンとして有名らしい。
「皆さん若々し過ぎて、こんなのでブルーノ様に勝てるのですか」
椅子にふんぞり返って叫んでいるんだけど。
「ケミン伯爵、王女殿下の御前ですぞ。口が過ぎましょう」
ロヴァミエ伯爵が言ってくれた。
「おお、これはロヴァミエ伯爵。あなたがこちらの陣営に加わられたと聞いて、私は参加することにしたのですが、ここは本当に若造の集団のようだ」
ケミン伯爵の減らず口は減らなかった。
「そこの口だけ伯爵」
じろりとクリスティーン様が睨みつけられた。
「おおおお、これは女だてらに大将軍と名乗っておられる女伯爵様ですかな」
それを聞いて、クリステイーン様は思いっきり宝剣を地面に突き刺した。
ピシーーーーン
大理石の床にヒビが走る。
「ほおおおお、口が減らないならば閉じさせてみようか」
じろりとクリステイーン様が伯爵を睨みつけたのだ。
さすがの伯爵もやばいと思ったのか口を閉じた。
「これより、全軍で王都に攻め込む」
クリスティーン様が宣言された。
「全軍と言われても我軍は2万と少しなのでは。王都にはなお10万の兵がおりましょう」
ケミン伯爵がそれ見たことかというのだが、
「ブルーノは新スカンディーナの攻略に5万の兵を出しています。残りは5万。それならば何とかなりましょう」
イェルド様が話された。
「しかし、向こうには史上最強の魔道士ブルーノ様がいらっしゃるのでは」
「なにかブルーノを恐れているそうだが、ここにいらっしゃるアンネローゼ殿下は2回もブルーノを撃退されている」
イェルド様が言ってくれたんだけど。
「本当でございますか。のほほんとしていらっしゃるようにしか見えませんが」
ケミン伯爵は相変わらず嫌味だ。
「お主は目が節穴なのか。先のハウキプダス伯爵との戦いにおいても、ハウキプダス伯爵を抹殺したのは殿下のファイアーボールだぞ。かやつめは本陣ではなくて端の方に隠れて対処しようとしたいたのが、殿下の目に写って殿下が攻撃されたのだ。5千の敵兵とともにな」
クリスティーン様が言ってくれたけど。ええええ! そうなの? クリスティーン様の獲物を奪ってしまったの?
「あの爆発は殿下が攻撃されたからか」
「さすがアンネ様の血を引き継がれている殿下」
「あれならば、十分にブルーノに対抗できましょう」
この前まで敵対して私の攻撃を見ていた伯爵達は驚いて口々に賛同してきた。
「ふん、このような小娘にそんな事ができかねよう。おおかたオースティンの大魔術師のガーブリエル様がされたに違いない」
ケミン伯爵は更に言ってくれた。
「アン、なんだったら伯爵に攻撃してやったらどうだ。伯爵もアンの偉大さに気付こう」
ガーブリエル様が不敵な笑みを浮かべて言われるんだけど、そんな事したらこの部屋だけではすまないだろう。
私を知っているものはぎょっとした。
「ガーブリエル様。下手したらこの屋敷諸共消滅します」
ヴィルマル魔術師団長が慌てて指摘してくれた。
「何を仰るのやら。こんな、やわな体で、そのようなことが出来るはずもなかろう。胸もないお子様ではないですか」
私はその毛みん伯爵の言葉にピキッと切れてしまった。
本来ならば絶対にやらないことだ。
「伯爵、何かおっしゃいました?」
私はニコリと笑った。
そして、私は伯爵の前に行くと私なりに思いっきり机を殴りつけたのだ。
私なりに・・・・
でも、周りにはのんびり叩いたようにしか見えなかった。
「ほらほら、全然だめ・・・・・」
次の瞬間だ。ニヤついた笑いのケミン伯爵が座っていた机が木っ端微塵にくだけたのだ。ケミン伯爵はその衝撃で、吹き飛んだのだった。
周りに粉塵が舞って大変だった。
「アン、あの机100万以上する年代物だったんだけど」
イングリッドに後で言われて私は後悔したのだが、後の祭りだった。




