元側妃視点2 義妹の配偶者を騙して生き残り、反撃の機会を伺いました
王宮を逃げ出した私はブルーノからの追跡を必至に躱して、何とか国境のカヤーニ伯爵の城に乗り込んで、シンスカンディーナ王国を建国したのだ。
国を維持するためには何でもした。
カヤーニ伯爵に媚を売ったし、求められれば脂ぎったカヤーニ伯爵に体を開いた。エスカール王国の将軍にも媚を売った。
カヤーニ伯爵が死ぬと完全にカヤーニ伯爵家を乗っ取りもした。
初恋のオスヴァルドには相手にされず、初体験のブルーノに殺されかけて、私にはもはや、息子のオットーしかいなかった。どんな苦労をしても息子の顔を見れば疲れは取れた。この可愛い息子をなんとしてもこのスカンディーナの支配者にしたい。私はそう思って頑張ったのだ。
エスカールからの援軍を常時1万人滞在させて、折あらばスカンディーナ王国に攻め込んだが、ブルーノの守りは鉄壁だった。
それからの15年は大変だった。
攻めても攻めてもスカンディーナ軍に押し返された。
そして、支配権を確立したブルーノは逆にこの国を攻撃し始めたのだ。
しかし、天然の要塞になっているカヤーニはなんとかブルーノの軍を撃退した。
しかし、あまりにも攻撃が激しい時は、息子をエスカールに逃がすことも考えたほどだった。
守るために軍事費は鰻登りに多くなり、新スカンディーナ王国はエスカール王国からの援助なしでは成り立たなくなっていた。度重なる援助要請に、父から兄に代替わりしていたエスカールからの援助も最近は減り気味で、危機感を覚え始めた時だ。
アンネの娘が生きていることが判ったのは。
そう、アンネは憎かったが、その娘は役に立ってくれた。
ブルーノの注意が我が国から、オースティン王国にいる娘に行ったのだ。当然、新スカンディーナ王国への圧力は減った。
我が国は一息ついたのだ。
そして、その娘がなんとヴァルドネルに進出してきて、アンネローゼ王国を建てたのだった。
私としてはこれは好機だと思った。スカンディーナ王国を我が息子のものにするチャンスだと。
私の故郷のエスカール王国では私からの度重なる援助要請に厭戦気分が蔓延しているようだったが、今まで苦労をかけた兄にもこれでやっと報いることができると私は思ったのだ。
ブルーノさえ倒せば、あとはアンネローゼ王国など小娘の素人集団。なんとでもなると思った。
私は兄に手紙で依頼すると、兄は直ちに5万の軍勢を送ってくれたのだ。
我々の軍勢は直ちに国境を越えてスカンディーナに進出した。
我々は破竹の勢いだったのだ。
しかし、何をトチ狂ったのか、ブルーノはアンネローゼの方は捨て置いて持てる戦力の大半をこちらに投入してきたのだ。
ブルーノの現れた途端に、我軍の優位は消え去った。
それに、地の利のあるスカンディーナ王国軍のほうが強かった。
我軍は連戦連敗、あっという間に元いた国に押し込められてしまったのだ。
そして、ブルーノの奴は更に我が方に奇襲をかけて、大半の軍を殲滅してくれたのだ。
我が国は空前の危機に陥った。
我が息子を守るにはここは私が犠牲になるしか無いだろう。
恐らく、私が謝ればブルーノも許してくれるはずだ。私の数少ない魅了の力が優位に働くはずだ。
皆は反対したが、私は自らを縛ってブルーノの前にこの体を差し出したのだ。
ブルーノは魅了という魔力を纏った私という餌に食らいついてきた。
本当に昔から単純な男だ。
私はこの体をブルーノに与えて、猛獣を飼いならしたのだ。
そして、機を伺っていると、なんとアンネの娘が勢力を拡大してスカンディーナの大軍を破ったとか。
すわ、チャンスがやって来た。
私は兄に極秘で総動員を依頼したのだ。今アンネの娘と協働すれば絶対に勝てると。今までの借金もスカンディーナを取ればチャラになるだろう。兄にも援助してもらった以上の物を返せるはずだ。取り敢えず、ブルーノさえ倒してしまえば、スカンディーナはこちらのものだ。あとはアンネの小娘など、こちらの手の上で踊らせて適当に処分すればスカンディーナは完全にこちらのものになると私は思ったのだ。
愚かなブルーノは私のベッドから、私が何を考えているか、何も知らずに慌てて王都に帰って行ったのだ。
ブルーノの残して行った1万の軍勢は3日後に現れたエスカールの大軍の前に敗走した。
私はエスカールの大軍とともに一路スカンディーナの王都目指して動きだしたのだ。
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