ブルーノ視点2 新スカンディーナ王国を攻め落としましたが、悪女に魅了されました
「やっと、ドロテーアを殺せる」
俺は新スカンディーナ王国の王城の前で部下を指揮しつつ、降伏の使者が出てくるのを待っていた。難攻不落の王都カヤーニの城壁を初めて突破してついにここまで来たのだ。ここまで来るのは長かった。弑逆するように俺を唆したドロテーアをやっとこの手で殺せるのだ。そして、やっとスカンディーナ国内からエスカールの軍勢を叩き出せるのだ。
エスカールの大軍が籠もる新スカンディーナ王国の王都カヤーニは巨大湖カヤーニ湖が堀代わりになっており、難攻不落だった。
城壁に囲まれて3方の大半を湖に囲まれていた。
地続きの1方はエスカール王国だ。
残された地面は細々とスカンディーナと繋がっていたが、そこを大軍が攻め込むのはとても難しいかった。
しかし、エスカールの大軍を撃破して我軍の士気は上がりに上がっていた。
なんとしても今回は攻め落としたい。
我々は何度か総攻撃をかけたが、その度にエスカール軍に撃退されていた。
狭い道を突撃しても、新スカンディーナ軍の魔術攻撃をモロに受けてしまうのだ。突撃しては撃退されの繰り返しだ。これでは死傷者だけが増えていくだけだ。
魔術師部隊を中心に攻撃しても、敵も優秀な魔術師部隊が詰めていたのだ。
一進一退の攻防が続いていた。
エスカールは新スカンディーナ王国を援助して15年、支援疲れで結構ガタが来ているはずなのだが、中々しぶとい。普通15年も戦乱が続くと嫌気が差すものだが。
和平派とも交渉もするのだが、エスカール王家は国内をそれなりにまとめているらしく芳しい返事が来ない。
俺は兵士を転移させて奇襲する攻撃を画策した。
小分けにすれば1000名は転移させられるはずだ。
その転移させた部隊に橋頭堡を作らせて、大軍を上陸させるのだ。
そして、城門を守っている兵士たちを後ろから攻撃殲滅させれば、全軍を城壁内に侵入させるのも可能だ。
俺は各軍に命じて作戦を立案した。
転移の千名と上陸部隊5千名を対岸に待機、魔術師20名を城門正面において、全軍で総攻撃すると見せて戦いは幕を開けた。
大規模な爆発で城門が吹き飛ぶ。
そこへ、突撃部隊が、攻撃開始。
大規模な戦い火蓋を切った。
そうしておいて、100名ずつ、俺は特殊部隊を転移させたのだ。
その中には魔術師20名もいる。
それと同時に上陸部隊が出撃した。
転移した部隊は、その場の敵を殲滅して橋頭堡を確保しようと動き出した。
そこで警戒していた部隊と乱戦に入る。
上陸地点を確保しようとした我が転移部隊と現地の新スカンディーナ王国軍が戦闘に入った。
敵もまさか、ここに転移して大軍を送り込んでくるとは思ってもいなかったのだ。
大混乱に陥った。
そして、その混乱の中に5000名の上陸部隊が次々に上陸したのだ。
上陸部隊は一気に城門で防戦していた敵軍を挟撃、一気に殲滅したのだ。
こうして、城壁内に侵入した我軍は新スカンディーナ軍を王宮にまで押し込んだのだ。
そう、一気呵成に王宮に押し寄せたのだ。
もう、新スカンディーナ王国は風前の灯だった。
敵の主力は挟撃で撃破した。城内には一万も残っていないはずだ。力押しに押せば勝てるだろう
一気に攻め込もうとしたその時だ。
城内から降伏の使者が出てきたのだ。
それもそこにはあのドロテーアが自ら後ろ手で縛られた格好で出てきたのだ。
「ブルーノ様。今まで申し訳ありませんでした。この身はあなた様に捧げますのでご自由になさって下さい。でも、息子だけは息子だけはどうぞお助けください」
と、俺の前に跪いて、上目遣いに縋ってきたのだ。
殺そうと思っていた俺もさすがにそこまでされると、その場で八つ裂きにすることは出来なかった。
というか、哀れだと思ってしまったのだ。そして、何を思ったのか何故か縄を解いてしまったのだ。
その触れたのがいけなかったのかもしれない。昔の女に触れてしまったのだ。そこで魅了されたのかもしれない。本来俺は魅了などされないはずなのに。
俺はその夜、ドロテーアを抱いていたのだ。
翌々日だ。アンネの娘たちが、オウルでハウキプダスの軍勢を破ったとの報が入ってきたのだ。
俺はそれをドロテーアとのベッドの中で受け取っていた。
まさか、俺には信じられなかった。
まさか、あの様な貧弱な軍勢がハウキプダスの2万の大軍を破るとは。
それと同時にアンネの娘の軍が近隣の10伯爵を味方につけていたのが初めて判明したのだ。
そして、やつらは破った地を次々と傘下に収めて、勢力を拡大しているとの連絡が入ってきたのだ。
「くそっ」
占拠した後の処置を部下に任せて、俺は慌てて王都に帰還した。
このいい加減な処置のことを俺は後で死ぬほど後悔するのだ。




