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侍女を助けてくれた敵の聖女を連れて王宮へ転移しました

「イリヤ!」

私は飛んでいった山賊など見向きもせずにイリヤにすっ飛んでいった。

イリヤを抱き起こすが、血まみれのイリヤはびくともしない。

イリヤはまだ14歳だ。無理言って近くの村から私の侍女として来てくれたのだ。私の盾になって斬られるなんて、そんな。

「ちょっとイリヤ、死なないで」

私は大声で泣き叫んでいた。




私は焦りに焦っていたのだ。本来は冷静に考えて行動すれば良かったのだ。本当に駄目な王女だ。


だって今までは、平民のアンとしてしか生きてきていないのだ。そんなすぐに王女然と振る舞えるわけは無いのだ。


でも、本当に馬鹿だった。普通はエルダかイングリッド、あるいはフィル様が指摘してくれたのだが、今ここにはいない。

馬車に同乗していた伯爵令息の二クラスや護衛のミーケルやマッケルはただただ慌てるばかりで指摘してくれなかった。


「ヒール!」

後ろから私の慌てように同情したのか、今まで勇者と一緒にいた女がヒールをイリヤにかけてくれていたのだ。


ヒールを浴びてイリヤの傷がみるみる塞がったのだ。


「良かった。あなた有難う。本当に有難う」

私はイリヤを抱きしめながらその子に御礼を言った。その子はとても戸惑っていた。


「そこのお前、山賊の一味だな」

そこに私が弾き飛ばした勇者をふん縛っていた、マッケルが帰ってきて女を拘束しようとした。


「マッケル何しているのよ。その子はイリヤを治してくれたわ」

私がムッとして言うと


「しかし、王女殿下、この女は襲撃犯の一味です」

こいつは全然融通がきかない。

元々お前ら護衛が勇者の襲撃を防いでくれていたら、イリヤが傷つくことも無かったのだ。防ぎきれなかったからこうなったのだろうが。


この女は重症のイリヤを助けてくれたのだ。それを敵だと言って拘束するのか?


私は怒りを何とか抑えようとした。ここで怒鳴り散らしても仕方がない。




そもそも、私、アンは、通っていた隣国オースティンの王立学園で公然とブルーノに襲われた。スカンディーナの内政に関わろうとなんてしていなかったのに。両親の仇を取ろうとも思ってもいなかった。ただ、ブルーノの魔の手から逃げていただけなのだ。逃げているだけでも襲われるのなら、いっそのこと、仇討ちに行った方が良いのではないかと周りに丸め込まれて? このオースティン王国との国境にある、ヴァンドネル伯爵領に来たのだ。


元々ヴァンドネル伯爵家は私の遠縁で、私を支援しようとしてくれていた。しかし、ブルーノはそんな伯爵家を許す訳もなく、疫病を流行らせて、見せしめにしようとしていたのだ。本当にブルーノは冷酷非情で卑怯な奴なのだ。

その疫病にかかった人々を私が必至にヒールで治していたのだが、しびれを切らしたブルーノが軍を動員して、領民全てを皆殺しにしようとしたのだ。


それを私たちは全員の力を結集して何とか防いだのが現時点だ。


ここまでくればもう私も腹を括るしか無い。流石にこんなちっぽけな国土では女王を名乗るのは烏滸がましいと、エルダによると中途半端な忖度で、私はアンネローゼ王女を名乗り、アンネローゼ王国を建国したのだ。おそらく、領地の大きさでも人口でも、世界最小クラスだ。何しろ領地の大きさはブルーノの治めるスカンディーな王国の1%にも満たないのだ。兵士の数は3千人もいない。スカンディーナ王国の兵力の100分の1くらいだ。これでブルーノに勝てるのかと絶望するほどの超弱小国なのだ。


更に私に付いて来た、と言うか面白いからやってきたオースティン王国からの面々と、元々私を支援してくれようとしたスカンディーナの面々が反発し合っていて派閥争いになっており、もうヒッチャカメッチャカなのだ。


今回も隣の領地のクイバニ伯爵家に外交に、うまく行けば我が陣営に引き込もうとして行こうとしたのだが、スカンディーンナ派、つまり、国内貴族派、いや、ヴァンドネル地方貴族派が派遣メンバーで文句をつけてきたのだ。


スカンディーナの貴族を調略に行くのだから、スカンディーナの人間を使うべきだと。

「何しろ、クイバニ伯爵は利に聡く、美しいものに目がないお方です。ここは親しくしておられたヴァンドネル伯爵家当主になられたニクラス様が、交渉の場につかれて、ブルーノが如何に冷酷非道かを理論整然と説かれるのが良いかと。その横でお美しいアンネローゼ様が涙で訴えられれば、伯爵もこちらの陣営に付くのは確実かと」

マッケルの父のダール子爵が言うんだけど。


利に聡い奴に情で訴えても効果があるのか? それに、美しいって私の容姿は人並みだ。王宮筆頭女官のエルダとか私付きの補佐官のイングリッドとかの方が余程美しいと思うんだけど・・・・私は疑問だらけだった。


私でもそう思うのだ。会議は紛糾に紛糾を重ねたが、「ここは地元の人間にお任せしよう」と内務官のイェルド様が黒い笑みを浮かべて言われたて決まったんだけど、私は不吉な予感しかしなかったのに。絶対にイェルド様は何か良からぬことを考えている。


元々不安しか無いのに、護衛も含めて馴染みのない地元の人間で固められて、不安この上ない状態でここまで来て、早速山賊に襲われたのだ。

勇者とかいきなり主役クラスが現れたんだけど・・・・これって絶対に敵に情報が漏れているんじゃないだろうか?


張り倒した山賊勇者は大した怪我はしていないはずだが、斬られたメルケルやイリヤをこれ以上連れて行くわけにいは行かないだろう。


「二クラス様、1時間ここで休憩しておいてください。メルケルとイリヤの代わりを連れて来ます」

「えっ、アンネローゼ様」

慌てた二クラスが叫ぶが、私は無視して、メルケルとイリヤ、それにここに置いておいたら何されるかわからない聖女を連れて王宮へ転移したのだ。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

今日もう一話アップします。


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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
私の

この前のお話は

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『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』

https://ncode.syosetu.com/n8311hq/

アンがこの地にアンネローゼ王国を建てる前の物語です。ぜひともお読みください。

私の

一番の

の人気小説はこちら

『悪役令嬢に転生してしまいましたが、前世で出来なかった学園生活を満喫することに忙しいので何もしません』

https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

第2部

終了しました。

第一部の紹介は
「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。

しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。

この次のお話は

はこちら

『推しの悪役令嬢を応援していたら自分がヒロインでした』

https://ncode.syosetu.com/n2714ht/

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