緑の光2
白いゆったりとしたローブを身にまとった少年が、白い馬にまたがってそこにいた。後ろには同じ揃いの服を着た大人数名を伴っている。
見たところ少年はミディアよりいくつか年下と思われた。まだあどけなさのある顔。しかしその表情は実に落ち着き払って堂々としたものだった。
村から出てきた男は、訪れた少年らの方を見てホッとしたように顔を明るくした。
「いえいえ、こうして来てくだすればウチはそれで充分! いやぁ、助かります!」
少年は大人びた様子で静かに微笑んで村人に向かってうなずくと、今度はその薄い青色の瞳をアーバルたちの方に向けた。
「そちらは? 旅のお方ですか?」
そこまで口にしたところで、少年の目がハッと見開かれる。その視線は、馬の上でぐったりとするミディアに注がれていた。少年は一言つぶやく。
「魔法の、痕跡……」
「若」
少年は背後からの呼びかけにうなずき、懐から杖を取り出した。それをミディアに向かってかざす。
杖の先からぽうっと、若草色の光が発せられた。
その柔らかな光に包まれ、ミディアは苦しげだった表情を緩めてふーっと長く大きく息をつく。
「おお、顔色が……」
アーバルは安堵の息と共にそう口にした。
少年は杖をしまいつつ、アーバルの方に顔を向けた。しかし少年のその表情はどこか浮かない。
「これはひとまずの応急処置です。どこかでしっかりと治療をする必要があります。……何か良くない魔法を受けたのですね。今すぐにこれ以上魔法が蝕んでいくことはありませんが、とは言え、決してこのままにしておいて良いものではなくて……」
そうか……と、アーバルはぽつりとつぶやく。
「……ごめ、んなさい、お師様……、急がなくては、なの、に……」
薄目を開け弱々しい声で言うミディア。それにアーバルは首を静かに横に振った。
「……いやミディア、それは違う。お前は気に病むな。これは私の落ち度だ。お前が謝ることでは、ないのだ……」
少年の治癒魔法で多少は楽になったのだろう。アーバルの声に答える素振りをかすかに見せた後、ミディアのまぶたが眠たそうに閉じられていく。そのままミディアは静かな寝息を立てはじめた。
白いローブ姿の少年は顔を上げ、前に向き直るときっぱりとした口調で言った。
「村長殿。この方々も、僕らと一緒にこちらの村へ滞在させていただけませんか」
出迎えた男は少年のその言葉に顔をほころばせ、ええ、ええと何度もうなずく。
「もちろんですよ、ウチで何かのお役に立てるのなら喜んで! シース坊ちゃん!」
それを聞き、アーバルは心の中で『シース』と、呼ばれた少年の名を繰り返した。
少年シースは村長にお礼の言葉を述べた後、今度はアーバルの方に向き直る。
その視線が、まっすぐに老境の騎士に注がれた。
「よろしければ、詳しいお話を」




