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冒険者ランド視点ー謎のバケモノとの遭遇

こんにちは!今回は別視点です!

 謎の屋敷が魔物の犇めく森の中にあるらしい。そんな噂が町中に拡がっていた。その真偽は分からない。そもそもその屋敷が一体何だというのか。その屋敷に何があるといったような具体的な情報は何もない。


 だから噂にこそなったものの、誰も本気にはしていない。俺……ランドとその相棒、リリを除いては。と言っても俺と違ってリリは慎重派で、飽くまでも話半分で聞いているようだが。


 だが、俺たちは夢を追う冒険者だ。今はまだランクも高くないし、冒険以外にも魔物の駆除や雑用だってこなしているが、それと冒険心を捨てるのはまた別物だ。


 そう、魔物犇めく森の中にある謎の屋敷。そこにはまだ見ぬ冒険が俺たちを待っている! 俺たちの冒険はこれからだ!



「ハイハイ。確かに冒険が待ってるかもしれないわね。それにここまで噂として浸透しているのだもの、おそらく屋敷も本当にあるんでしょう」


 リリもこうして納得してくれている。さぁ、行こう。今すぐ行こう!


「でもそこにお宝があるかは分かんないし、そもそもその屋敷が魔物って可能性もあるでしょ。アタシも仲間なんだから一緒に行くけどね。あたしも注意するから、ランドもしっかり考えて注意しなさいよね」


 !! 確かに!! 流石はリリだ。俺が考え付かないことまでしっかりと考えてくれる!! 頼もしいぜ!


「はぁ、まったく。……ランドってばアタシが居ないと本当にダメなんだから」


 おう、これからも支えてくれよな!


「ッッ! ……もう、こっちの気も知らないでそんな言葉ばっかり言っちゃってさ」


 どうやらリリを怒らせてしまったようだ。俺は考え無しだから直ぐにりりを怒らせてしまう。これは謝らないと。


 ごめん、リリ。どうしてリリが怒ってるのかは分からないけど、俺はリリを怒らせたかった訳じゃないんだ。


「ハイハイ、分かってるわよ。ランドがそんなに鋭くないことなんてわかってますよーだ」


 なんだかよく分からないが、とりあえずリリは納得してくれたようだ。ありがとう。


「それじゃあ早く行きましょう。ランドは早く冒険に出て屋敷を体験したいんでしょう?」


 あぁ。流石はリリだ。俺のことをよく分かってくれている。確かにもう冒険がしたくてたまらない。本当にありがとう! リリがいてくれて本当に良かった!


「ッッ~! もう、早く行くわよ! ……まったく、好きになった幼馴染がバカだと疲れるわね」


 リリが後半何を言っていたのかは声が小さすぎてよく分からなかったけれど、リリが俺に向かって言ってないってことはそんなに重要なことじゃないんだろう。……それじゃあ出発だ!



 ☆☆☆☆☆


「そっち行ったわよ、ランド!しっかり仕留めなさい」


 リリが泥狼の攻撃を受け流し、俺の方に放り投げる。そしてその泥狼に向かって俺の自慢の海山王……こと大剣を振り下ろす。


「うおおおおおお!!」


 当然、一撃。泥狼はなすすべなくその身を肉塊と毛皮へと変えた。比喩ではなく本当に肉と毛皮へと姿を変えたのだ。この世界の魔物は倒すとこうして素材へと姿を変える。普通の動物はそうじゃないんだけどな。


 まぁ、何してもバッチリだ!  シーフであり幼馴染でもあるリリとのコンビネーションは全くもって最高である。初心者冒険者なら間違いなく手こずる泥狼だってこの通り余裕だ。


 まぁ、この泥狼はその名の通り泥臭くてその肉は全然美味くないんだけどな。一部の人はその泥臭さが癖になるらしいが、俺には良く分からない。それでも毛皮は……あと一応肉もお金になるからしっかり回収しよう。


「ナイスよ、ランド。それにしても……もうそろそろ屋敷が見えてもおかしくないんじゃないかしら。私が事前に掴んだ情報ではこの辺りで見た人がいるらしいのよ。その人は不気味に感じて引き返したらしいけど……」


 リリはこうしてシーフとして情報を良く掴んできてくれる。俺は要領が悪いからどうやって集めているのか分からないが、その情報のおかげで何回か命拾いしたことがあるから、本当にリリには感謝しかない。


 こうして話しながら辺りを探っていると、突然俺の目の前にボロボロの屋敷が姿を現した。余りにも森にあるには不自然なほど大きな屋敷で驚いたけれど、なるほど。確かにこれほどボロボロなら在ってもおかしくないだろう。


「本当にあったわね。……さぁ、ランド。注意しながら進むわよ。屋敷が魔物とまではいわなくても、屋敷の中に魔物が住んでいる可能性までは否定できないわ」


 それはそうだ。よし、注意しながら探検だ!



 ……ところが、屋敷に入って本当にすぐ。辺りに注意していたはずの俺たちを嘲笑うかのように、そいつは現れた。どうやったのかは知らない。しかし、確かに俺どころかシーフであるリリの警戒すらすり抜けてそいつは来たんだ。


「こんにちは。ハロー。ボンジュール。オラ!」


 理解は出来る。……いや、正確には一つ目の言葉だけだが。だが、そんな事はどうでもいい。そいつの身体は透けていて……こちらに向けて笑っていたんだ。あの様な魔物の笑顔が友好的なはずがない。まず間違いなく獲物を見つけて喜んでいるんだ。


「……」

「こくこく」


 リリとアイコンタクトを取る。ここはこの透けている魔物のテリトリーだ。ならばこのまま背を向けて逃げるのは難しいだろう。何をされるか分からないからな。だから、そう。いつも通り。いつも通りにすればよいのだ。


 リリはこっそりと短剣を構え、俺も大剣に手をやり……3,2,1で透けている魔物に飛び掛かった! 勝負だ!!

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