文句だって言います
こんにちは。ブクマと評価増えてました!ありがとうございます!嬉しさで溶けちゃいそうです。
「クソ神がぁぁああああ!」
どうも。名前も忘れた哀れな幽霊です。有言実行。予想が的中しちゃって神が許せなくなっちゃってます。口が汚いけど許してね。
あの後言ってた通り、夜になるまでちゃんと待ってから扉を出ようとしたんだよね。……まぁ、結果は言わなくてもわかるよね。そう、駄目だったんだ。
ちなみに、この玄関が特殊で何かしらのバリア的なものが張られている説も考えて、裏口っぽい所からも出ようとしてみたけど、駄目だった。だから、そう。原因は私にあるということだ。そこで、あの時口に出さなかった仮説が正しさを帯びてくる。
……私、もしかして地縛霊なんじゃない?
これが、あの時思いついた最悪の仮説である。地縛霊が何なのかよくわからない人に説明すると、何かしらの未練によってその場から離れられなくなっている幽霊のことだ。
私にこの屋敷に対する未練は何も存在しないけれど、今の状況はまさにこれで、ドンピシャだと思う。そしてこうなった理由は、考えうる限りでは二つある。
一つはこの世界に転生したときに偶々あったこのぼろ屋敷を、私の幽霊ボディが勝手に家だと捉えてしまった可能性。これなら仕方ないと思うけど、この場所に私を転生させたのはあのクソ神だと思うので、やっぱりあの神は許せない。
そして二つ目の可能性は、あのクソ神が何らかの理由で私をこの場所に留めておこうとしている場合。この場合でもやっぱりあの神のせいなので、当然許せない。よってどちらの理由でも許せない。ギルティ、覚えておきやがれ。
……何のかんの言ったけれど、今の私はこのぼろ屋敷に囚われた幽霊姫なわけで。しかも助けに来てくれる勇者はいないというわけで。こうして文字に起こしてみると、とんでもない絶望感で思わず笑ってしまう。
だけど、決して私は諦めていないよ。まず一つ、私が幽霊ボディなのが役に立つ。この体のせいでここから出られないわけで、そこだけ見たらデメリットなんだけど、この体のおかげで空腹によって倒れることはないというのは大きなメリットだと思う。
まだ絶対とは言えないけれど、ここに来ておそらく一日以上経っているのにまったく空腹に悩まされていないのだから、おそらく食料的な問題に関しては私にとって問題とはならないはず。
これの何がいいのか。それはご飯を食べる面倒な時間を掛けずに済む……なんてことではなくて、私がこのぼろ屋敷から脱出することに関してタイムリミットがないというのが最大の理由だ。
時間制限があったら急がないといけない。どう解決していいかわからない問題にタイムリミットがあったら、誰であっても最大限のパフォーマンスは発揮できないと思う。時間に阻害されないのはでかい。
今のところ考えていないけれど、最悪の場合は私のこの拳でぼろ屋敷を破壊することすら視野に入れられるからね。途方もないことすらできるかもしれないというのはかなりの安心感が得られる。例えこのひとりっきりの場所であってもね。
でも、うん。できれば早く人と会いたいね。この幽霊ボディで受け入れられるかどうかは別にしても。……あ、そもそもこの世界ちゃんと人っているよね? 大丈夫だよね? この屋敷が人の居た証だよね?
ま、まぁいいや。これも今考えても仕方ないことだからね。話を戻すけど、私がまだ諦めていないもう一つの理由がある。どちらかと言うとこっちのほうが本命かな。もう何となく察してるんじゃない?
そう、パワーアップだ。私は最初何にも触れなかったのに、ねずみを(結果的に)驚かせたらパワーアップした。だったら、何かを驚かせて恐怖エネルギー(仮称)を手に入れてパワーアップしたら、このぼろ屋敷から出られるんじゃないか。そういうことだ。
あとは、そうだね。消極的ではあるけれど、時間経過で出られるようになる可能性もなくはない。まぁ、その可能性があるかどうかも分からないのだから、決して時間任せにはしたくないけれどね。
で……だ。今考えられる最大の問題はだれを驚かせるかという話だ。ねずみぐらいしか居なさそうなこのぼろ屋敷では中々難しい問題だと思う。これをどう解決するかだけれども……ん?
このぼろ屋敷には私とねずみしかいない。つまり、私が言葉を発したりしない限り、基本的にはこのぼろ屋敷は沈黙に包まれている。なのに、だ。
今、話し声が聞こえた。最初は気のせいかと思ったけれど、確かに人の話し声だった。……うん。間違いない。男の人の声と女の人の二人組かな? 声的に結構若そうだけど、それでも人は人だ。
どうする? 行くか? 行かないか? 行くのならどうする? ええと……ええと……。うん、分かんない! 分かんないから行ってから考える!
こんなぼろ屋敷に人が来るという、これから先にあるかどうかも分からない千載一遇のチャンスを逃したら、絶対に私は後悔すると思う。だから、行くしかない!
スタスタと……気分だけは走りながら、現実はちょっと空中に浮遊しながらも、声のする方に向かい、そして……見えた。
想像通り見えたのは若い男女二人。さて、まず大事なのは第一印象。その人に対する苦手意識とかは最初で決まるからね。最初からコケる訳にはいかない。よし……行くよ!
「こんにちは。ハロー。ボンジュール。オラ!」
次回は別視点……かな。たぶん。
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