意外と何とかなるものだ……と思っていた時が私にもありました
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スーハースーハー。ふーふーふー。深呼吸して心を落ち着かせる。落ち着くことはとても大切だ。特に、今の私みたいな非常事態の時にはね。
慌てて色々なことをしようとすると、絶対に失敗するしどこかおかしくなってしまうものだ。それなら少し時間が掛かってでも、落ち着いてから何かをした方が良い。
急がば回れって言うしね。……こういうことわざも覚えているのなら、寧ろ名前を覚えていないのがおかしなくらいだけど。まぁ、仕方ないか。
ないものねだりをしても仕方ないからね。
あ、ちなみに私が何をしようとしているのか。それは……。
「このぼろ屋敷から、出る」
ことである! あ、今私が居るのは廃屋の玄関だよ。どうやらこの廃屋は元々相当な金持ちが住んでいたみたいでめちゃくちゃ広いし、玄関も庶民の想像する広さではない。私だったらこの玄関だけで過ごせちゃうね。いや、マジで。
でも今は荒れ果てて広いだけ。帰ってきた主人を出迎える可愛いメイドさんも渋くて優しいダンディーな執事さんもいないのだ。まぁ、後半は全部私の妄想なんだけどね。本当にそんな人たちが住んでたのかは分かんないけど、たぶんそんな気がするってだけで。
……さて、冒頭の部分に話を戻そう。どうして私が深呼吸をするほど緊張していたのか。それは、私の中にいくつかの仮説があるからだ。
その中でもっとも嫌なもの。それを今から試そうとしているのだ。出来れば私の仮説が間違っていると良いんだけどね。
でもそれも試さないことには間違っているかどうかも分からない。シュレディンガーの猫って奴だと思う。……使い方合ってる?
……え? 変なことばっかり言ってないでとりあえず仮説を教えろって? まぁまぁ、そんなに急がなくても。今から実践してみるから……ね。
私は、朽ちつつある重厚な扉に手を掛けた。パワーアップする前の私なら届かない扉も、今なら触れることが出来る。まぁ、意図的に透かすことも出来るんだけど、まぁ気分だよね。出ていくなら扉は開けて行かないと。
力を込めて扉をバーンと開く。私のこのスケスケボディがどういう風に作用しているのか分からないが、下手すると生前より力あるんじゃないかな。
だって幾ら朽ちて多少なりとも軽くなった扉とはいえ、その大きさは私の数倍はある。そんなものを一人で開けるのは生前の私では難しかったはずだ。……生前ってなんか嫌な言い方だけどね。
まぁ、死んだ瞬間の事とか覚えてないし、このスケスケボディ以外で死んで転生した実感が湧かないからあんまり気にしてないんだけどね。神よ、想像の数倍私は、強い。
……扉が開いたので、外を見る。室内ではよく分からなかったが、現在は昼のようだ。異世界だから空が赤かったりしたらどうしようとか思っていたけど、杞憂だったようで普通に青い空に雲が浮いている。
幽霊はよく暗くてジメジメとした場所で現れるという。それは裏返せば暗くてジメジメした場所にしか居られないという訳では無いだろうか。
そう、それでも。今から私、この屋敷から出るよ。
本当にやばそうなら即引き返すつもりではあるけれど、危険なことには変わりない。目指せ脱、引きこもり。
あのボロ屋敷に引きこもった時間は短かったけれど、さようなら。
「これが新しい一歩となうひゃ!?」
扉から一歩踏み出し外に出ようとしたその瞬間、私はよく分からない謎の壁のようなものにぶつかり、玄関でひっくり返った。
いや、違う。ぶつかったと言うよりは……後ろから引っ張られた?
慌てて後ろを見るが、特に何も見つからない。先程と変わりない、無駄に広く荒れ果てた玄関が広がっているだけだ。
「もう一回……グハッ!」
先程は私がとんでもないドジっ娘で、出ようとした瞬間に後ろ向きに転んでしまったというガバ予想をして、もう一回挑戦してみるが、無惨にも結果は変わらない。
やっぱり出られない。何故か出られない。
しかし、現状を振り返り、そして考えてみると一つの最悪な結論に至った。そんな……まさか……と言いたいけれど、ほぼ間違いないと確信できる。
……いや、まだだ。もう一度、ちょっと待って夜になってからもう一度だけ試そう。結論はその後に出してもまだ遅くない。
……でも、もし私のこの最悪の予想が的中したのならば、私はやっぱりあの神が許せないかもしれない。
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