宝石
10話目!
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冒険者ランド視点
「やっぱり。これ、魔石だわ」
幽霊の少女、ホローとの別れの後、俺たちは町の宿まで戻ってきていた。今思えば、あの幽霊は本当に不思議だった。
確かに俺たちは極悪非道の悪人ではない。どちらかと言えば善人だと言えるだろう。
だが、だからと言って魔物の言うことをそのまま信じてしまう程のお人好しではなかったはずだ。
冒険者は割とドライな関係が多い。一部の優しい冒険者は後輩たちが生き残れるようにアシストしたりするけど、それでも基本的には自己責任だ。だから自己責任といえばそうなのだけれども……まぁいいや。この話はここでやめておこう。
話を戻すけれど、ホローからとある噂を広めてほしいと俺たちは言われていた。話を聞いてみた感じ、正直ダンジョンみたいだなと思った。
でも、どうやら違うようだ。ダンジョンは宝もあるが、その本質は人を誘い出し、食い散らかす殺戮者である。それに比べて、ホローの言っていたお化け屋敷は人を害することがないように思える。
そしてその噂を広げる……まぁ、屋敷で宝石を手に入れたと話すだけでよいという話だったが、その報酬で貰った宝石。それが、リリの言う通りなら魔石らしい。
「魔石ってあの魔石か?」
「えぇ、あの魔石よ。専門家じゃないからたぶん……としか言えないけど、魔力も感じるし十中八九あってるとは思うわ」
魔石。それは様々な武具や道具の元となる素材だ。大きければ大きいほど価値は大きくなる、と聞いたことがあるが、たとえ小さくとも魔石である以上価値があるのは間違いないはずだ。
だが、その分手に入れるのが難しいという話も有名だ。俺でも知ってるくらいだからな。おそらくほとんどの人間が魔石の価値は知っているはずだ。なぜ手に入れるのが難しいのか。それは……。
「魔石って魔物を倒さないと手に入らないんじゃなかったのか?」
魔物を倒す必要があるからだ。一般人ではよほど優れた武器と類稀なる幸運を所持していないと魔物は倒せない。冒険者であればほとんどの物が魔物を倒せるとは思うが、弱い魔物からは魔石は手に入らない。
「えぇ。そのはずよ。そして弱い魔物からは魔石は手に入らない。魔石は強い魔物の体の中で魔力が凝縮されてできる物だから、あの森の中にいるような魔物からは魔石は手に入らないはずなのよ」
だからおかしい。ホローが俺たちに魔石を気軽に渡してきたこと自体がおかしいのだ。俺たちにとって希少な魔石は、当然魔物にとっても希少だ。
単純に魔石の価値を知らなかった可能性もある……のだろうか。もしくはそれだけ感謝していたとか?
「価値を知らなかったなんて有り得ないはずよ。そもそも魔石を手に入れられるということは、高位の魔物を倒すことが出来る強さを持っている証明でもあるわ。そんなに高位の存在が知らなかったとは思えないわ」
うーん確かに。
「それに、価値を知らないのだとしたら私たちに報酬として渡してくる理由が分からないわ。まさか、ただ綺麗だから……なんて理由で渡してきたわけじゃないだろうし。それに、あの気軽さはまるで自分で創り出せるみたいだったわ。そんなことは不可能なのに」
「考えるだけ仕方ないんじゃないか?」
本当に考えるだけ無駄な気がする。ホローは悪い奴には見えなかったし強そうにも見えなかった。そもそも生者への恨みとか破壊衝動的なことから解放されたアンデッドの考えることなんて分からないしな。
ただ、案外細かいところなんて何も考えてないんじゃないかという気もしている。本当にただの勘だからリリには言えないけど……な。
ホローは自分の渡した宝石が何だとか深くは考えてませんw