チョコレートから始まる侵略計画
「くっはぁ・・・っ!!」
吐血するかと思いました・・・階段の上、豪奢な玉座に御座すは・・・紛れもなく魔の王様!!
長く艶やかな黒髪は無造作に流されており、深緋色の瞳がつまらなそうに、私を見下ろしている。
引き締まった体躯は、美しい刺繡で飾られた黒のロングジャケットを着ていて、実に好みのど真ん中です!!
白くしなやかな指は、黒ちゃんが運んできたトリュフを摘まんでいる・・・。
「お前はこの世界に、昨日初めてやって来たと言っていたな?」
あ・・・黒ちゃんに愚痴ってた内容はご存じでいらっしゃる?え・・・黒ちゃん、喋れるの??
「口よりも頭の中で喋る方が好みか?コレは俺の使い魔だ。当然、見聞きしたものは全て俺に伝わる」
?!心の声駄々洩れ的な?!恥ずかしい!!黒ちゃんは魔王様の使い魔だったんですね・・・目の色が確かに同じ色・・・あ・・・トリュフが溶けちゃいそう!早く食べて欲しいな・・・
「ふむ・・・」
魔王様(確認してないが、魔王様ですよね?!)がトリュフを口の中に放り込んで、ゆっくりと咀嚼する。指についた溶けたチョコも、べろりと舐めて笑う。わっワイルド~!!
「美味いな。初見では泥を固めたものかと思ったぞ。名はトリュフと言ったか?」
「はっはい。大きく言うと、チョコレートという食べもので、いろんな調理をされたものがあります。トリュフはその一つです!他にも、ケーキにかけたり・・・こんなのとかもあります!」
私は鞄からポ〇キーを出して見せた。
「ん」
魔王様が手を差し出した。魔王様って呼んでもいいですか??
「いかにも。俺は魔族の王、リガルドだ。お前は人族か?」
「はっはい。私はこの世界とは別の場所、地球という星からやって来た人間です・・・。名前は、穂乃花と申します」
星からやって来た人間・・・の所で、ちょっと恥ずかしくなったから、声が小さくなってしまった!あわわ・・・っ
「地球・・・聞いたことのない星だな。まあいい。ん」
魔王様・・・リガルド様・・・目上の人の名前って、呼んで良いんだっけ?!頭の中で考えていると、魔王様の眉間に皺が寄ったので、慌ててポ〇キーを差し出した。黒ちゃんが受け取って運ぶよ。働き者だね!
「お前の頭の中は煩いな・・・どちらでも好きに呼べばいい」
ではリガルド様とお呼びします!リガルド様が箱をべりっと破き・・・ああ!点線がありますので!!
「・・・」
それから中袋を乱雑に破き・・・ああ!ポ〇キーが折れてしまいます!!
「・・・煩い奴だ。お前が開けろ。ここに来い」
「はっはい?!・・・お側に行っても、良いんですか?!」
こ・・・近くに寄ったとたんに、消滅させられたりとかはないですよね?!あわわわ・・・どうしよう?!
ああっリガルド様の眉間の皺がどんどん深く・・・!!く・・・逝くしかない!!
階段を駆け上がり、ポ〇キーの中袋を優しく破き、リカルド様に差し出した。ど・・・どうぞ!!
「これは細枝に土を塗ったように見えるな・・・」
訝しんだお顔も、美しいですね!近くで見ると艶やかな黒髪は、月光を塗したように煌めいている。綺麗!!
ぼりぼりとポ〇キーを噛む姿にも優雅さがありますね。お味はいかがですか??
「食感が面白いな。味も悪くない。お前の星では、他にも美味いものはあるのか?」
「ありますよ!地球の中でも、私が生まれた国、日本では世界中の多種多様な美味しい食べ物が揃っています!」
両手を握って力説すれば、リガルド様が顎を擦り、考えているご様子。
「攻め落とすか」
「へ?!いやいやいや!!それはちょっと・・・やめて頂きたいです!!」
「俺はもっと、美味いものが食べたくなった」
いやいやいや!!!!単純明快な侵略理由!!
「で・・・でも、この世界から地球までの行き方もわかりませんし・・・はっ!そうだ!このお城には、料理人の方はいないのですか?!こんなに立派なお城なんですから、いますよね?!」
この謁見の間まで、誰にも会わなかったけど・・・・・・お城だもん。料理人も使用人も沢山いるんでしょう?!
魔王様の深緋色の目が怪しく煌めいて・・・私を見て意地悪そうに、にやりと笑った。
「使えない奴ばかりでな・・・ちょうど片づけたばかりだ」
「片づけ・・・?!おわっ・・・!」
怯えて後ずさった私は、階段を踏み外し・・・転がり落ちた末に、後頭部を強打して気絶した・・・。
「・・・何をしている・・・」
意識の向こう側で、低く響く声が呆れて笑う声を聞いた気がした・・・んだ・・・。
・・・と!!が多いですね・・・読みづらかったら、すみません・・・。
・・・好きです。
やっと魔王様に出会えましたね。甘党疑惑が浮上中です。