出鼻挫かれ、今日のところは、こんくらいにしてあげよう。
“冥府に繋がる渓谷の枯れた土地”ってネーミングセンスが絶妙だなって思ったよ・・・。
転移から降り立った途端に飛び込んできた景色は、荒野に見慣れた私でも不安になる感じがした。
魔王様の領土も同じ感じで、枯れ切っていて植物が生えていないんだけど・・・ここは何というか・・・指輪を捨てに行くあの有名な物語の、最終ステージにちょっとだけ似ているんだよね。
そびえ立つ岩肌を切り開いて出来た渓谷には、枯渇した川の痕跡だけが残っていて、生き物の気配が全くしない。曇った空には鳥が飛んでいないし、虫さえも見当たらない。
「何か、全体的に薄暗くて・・・ちょっと怖いですね?」
「ふむ。お前でも怖いものが有るのか。この先に進めば、益々闇が深まってくるぞ?」
「うえ・・・」
リガルド様の言った通り、渓谷の奥に進んで行く程、空気がどんよりと濁ってきた。心なしか、肌寒い気もする・・・。ひび割れた大地からはゴボゴボと音を立てながら、コールタールみたいなどろどろの黒い液体が湧きだしていて、あちこちで小さな液溜まりを作っている。
「うう・・・何ですかあそこ・・・」
私が指差した先では、其処が渓谷の最終地点であるかの様に、岩山が行先を塞いでいた。問題なのは、その岩山にリガルド様の身長の3倍の高さの黒い洞穴が口を開けていることなんだよね。
「冥府への入り口だな」
私の質問にリガルド様が何でもない事の様に答えた。ええ、そんな気はしていましたよ?!
「ちょ?!洞穴の周りに何か居るんですけど?!」
「ふむ。近づいて見てみるとしよう」
「やっ?!」
ニヤニヤと意地悪く笑うリガルド様が、腰が引けている私の肩と腰をがっしりと押さえたまま、洞穴の入り口に向って歩き出した。ちょ?!やだ!!そっちに行きたくない!!だって、だって・・・!!
「もうっ嫌だってば!!おっ、お化けっ怖い~~っ!!!」
半泣きになる私の顔を覗き込んで「ハハッ」と笑ったリガルド様が、ギュッと抱き締めてきた。
「レイス如きが怖いのか。可愛い奴め」
そのまま、チュッチュッてキスしてくるんだけど、そんな場合ちゃうでええええ!!!私は抱かかえられたまま、両手の平に魔力を練り上げた。
「消えろおおおおおお~~!!」
着弾する間際にレイス達がこっちを見て「あ」って顔をしていた様な気がしたけど、そんなの関係ねぇ!私は両手から光魔法「浄化の光いいいいいい!!!」を放った。もう、思いっきりね!
「・・・何が浄化の光だ。あれでは殺戮の光ではないか」
リガルド様の呟きも今は無視する。とりあえず、光魔法のビームで洞穴周辺を漂っていたレイス達を焼き尽くしたんだ・・・。
「はぁ・・・はあ・・・よ、良し!綺麗になったね?!」
洞穴の入り口に屯っていたレイス達は1匹も居なくなった。洞穴の中から、おどろおどろしい煙と悲鳴のような声が聞こえた気がしたが、きっと風の音だね、うん。
「ふぅ・・・神に再生されてから、感情面の起伏が薄くなった気はしていたんですが、やっぱりお化けは駄目でしたね」
「お化けとは、レイスの事か?」
「はい。お化けってのは、私の国での呼び名ですかね」
何を隠そう、私はお化けとか・・・お化け屋敷とか、大大大っ嫌いなんだよね!子供の時のトラウマが完全に今も尾を引いているんだよね。
「お化け屋敷とは何だ?レイスの住み付いた屋敷の事か?」
リガルド様が私の感情を読んで掘り下げてくるんだけど・・・。
「まぁ、そうですね。お化けとかゾンビとか・・・そういうのが住み着いた屋敷を、あ、屋敷の偽物を作って・・・お金を取って、度胸試しで入るっていうのがあって。私は子供の時にお化け屋敷で親と逸れて、1人で恐怖体験してから・・・苦手なんですよ!」
「なるほどな。あの洞穴の最奥が冥府に繋がっている。ハデスはあの先に居るが、どうする?」
「えっ・・・行きたくないです!会うのは・・・今度で良いです!」
私の返事を聞いたリガルド様が、深緋色の目を細めて笑った。私の頭をヨシヨシと撫でた後に、指先で眦を撫で・・・頬を通り過ぎて、顎をクイッと持ち上げられた。それからキス・・・。
「此処は住処には向かないだろう。お前が気に入る場所へ移動するか?」
唇を触れ合わせたまま、リガルド様の美しい双眸が至近距離で覗き込んできたから・・・恥ずかしいやら、見惚れちゃうやらで、私は黙ってコクコクとしか頷けなかったんだ・・・。
大変間が空いてしまって、すみません^^;
リガルド様に連れられて、新居地候補を探し中です。頑張って洞穴に入れば、黄泉の国に行けたんですけどね~。ホノカはお化け系が苦手の様です。
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