新・魔王誕生?!
「ホノカはお前が気に入らないようだ」
「それはいけませんね、ご挨拶が遅れて大変申し訳ございません。私は魔王リガルド様の忠実な僕、アビッソと申します。以後、お見知りおきを」
優雅に腰を折る様が、胡散臭い。弓なりに細められた目が開いたら、どんな感じなんだろうね・・・。
「え~っと・・・正直、胡散臭いなって思うんですけど・・・会ったばかりなので、好き嫌いはわかんないです」
メインの肉料理を頬張りながら、アビッソさんを観察する。赤っぽい黒髪ロン毛・・・もぐもぐ。このお肉、何のお肉だろう?噛めば噛むほど、旨味が出てくるね!
「ククッ・・・肉以下か。それは地底牛だ。魔界の中でも限定された地域にしか生息しない、希少種だぞ」
「はあ~!希少種ですか!しっかりとした歯ごたえながら、噛みしめれば肉の繊維がほろっと解けていくのが、不思議ですね!調理方法に秘訣があるんでしょうか?!」
馬のお兄さんの方を見ると、目線を下げたまま震えていたよ。どうしたのかな?
「答えろ」
「は!はいっあの・・・っ穀物を発酵させたものを、下ごしらえの時に使用しています!肉の旨味を引き出してくれて・・・っ肉も柔らかくなりますので・・・」
お兄さんが尋常じゃないほど緊張してるんだけど・・・リガルド様が怖いのかな?魔王様だから、緊張しちゃうのかな。
「それって、麹ですかね?今度、調理方法を見せて貰っても良いですか?」
「は、はい!大丈夫です!」
「・・・浮気か?」
「ええ~?!違いますよ!私の世界の調理方法と、魔界の調理方法を比べてみたくって。この世界での自給自足が私の目標なので!地産地消をしながらも、故郷の味に近づけたいんですよ!」
リガルド様の低くなった声に怯えた、馬のお兄さんの顔色がいよいよヤバい。
「魔王妃となられるお方が、調理をする必要はありませんよ。それは使用人の仕事ですので」
アビッソさんが胡散臭い笑顔で言ったけど、料理はけっこう好きなのにな。趣味まではいかないけど日本でも自炊していたし、続けたかったんだけどなぁ・・・。
「魔王妃、面倒臭いね・・・」
「では、俺が魔王を辞めるか」
「「「え?!!」」」
「・・・・」
お姉さん達とお兄さんが、思わず声を出しちゃったみたいで、慌てて顔を伏せたよ。アビッソさんは・・・何か笑顔が凄い、怖い。
「魔王って、簡単に辞められるんですか?」
「ああ」
「そんなわけないでしょう」
「俺が辞めれば、次位のお前が魔王だな。数日後には城を出るぞ。ホノカ、準備をしておけ」
「えっ?!あ、はい!」
瞬く間に話が決まったの・・・かな?情報過多だったよ?!アビッソさんはリガルド様の次に強くて、次の魔王様なんだね!魔王様のリガルド様も好きだったけど、身軽に2人旅・・・あ、黒ちゃんと3人旅か!それも良いね!
「あ・・・でも、畑はどうしましょう?温泉の所に住み着いたサラマンダーとか・・・」
せっかく浄化した、魔の領土にも思い入れはあるしなぁ。
「ふむ。では、新しい魔王を殺して、魔の領土をホノカのものにするか?」
で、出た~!魔王様ジョーク!いや、魔王様は辞めたから・・・魔族ジョークなのかな?!
「ご冗談が過ぎますよ。私に魔王になれなどと・・・誰が、リガルド様を唆したのでしょうか?」
アビッソさんが私に殺気を飛ばしてくるんだけど・・・受けて立つべき?!私が立ち上がって、魔力を練ろうとしたとき、リガルド様の背後で血飛沫が舞った。
「ひっ」
ごとりと鈍い音が2つ鳴った。切り落とされたアビッソさんの頭と、時間差で倒れた体の音だね・・・。
「怖いか?」
両手で口を押えて固まる私を、リガルド様がジッと見つめてくる。怖いって何が?血?それとも、リガルド様が?
「・・・う~ん・・・吃驚はしましたけど、怖くは無い・・・かな?」
だって私・・・自分が電車に轢かれて酷い姿になった映像を、神に強制的に見せられてるからね?!それよりは・・・全然、怖くないよね。
「ふっ・・・面白い女だ」
「それって、褒めてます?!素直に喜んで良いのかな?!」
「喜べ」
「え~」
銀糸のお姉さんが淹れてくれた食後のお茶を飲みながら、デザートの真っ赤なゼリーを頬張った。血みたいに真っ赤だけど、味はアルコールを飛ばしたワインゼリーだったよ。
給仕してくれたお姉さんにお礼を言ったら、無表情だけど・・・何となくドン引いている様に見えたのが、不思議だなぁ~・・・。
「奥様は、本当に人族なのですか?」
「うわっひゃあ?!」
急に背後から覗き込むように見られて、吃驚して口の中のゼリーを吹き出しちゃうとこだったよ?!
「アビッソ・・・さん、生きていたんですか・・・」
首元から血を垂らしたアビッソさんが、生き返って私の背後に立っていたから、すごい吃驚しちゃったよ!
「声色が残念そうなのは何故でしょうか?言うほど驚いてもいませんよね?到底、人族には見えませんね」
怖い怖い怖い!弓なりの細目が開いて、すごい怖い瞳が私をジッと見てくるの、怖いよ?!
「人工レンズ・・・?瞳孔が開閉してるの何で?!ん・・・?!隠匿されている魔法陣が・・・?」
アビッソさんに見つめられると、私の全部が見透かされている気分になる・・・あ、もしかして鑑定されてるのかな?!ううっ・・・一度目が合うと、逸らせないよぉ・・・?!
「・・・おっと」
リガルド様が投げたデザートフォークが、アビッソさんの眼球めがけて飛んで来た。でも躱したアビッソさんの首に刺さって、また頭が落ちたんだけど・・・。
「今のって、絶対わざと刺さってますよね?・・・もしかして・・・変態さん?!」
床に転がったアビッソさんの頭を見たら、ニタアッって笑ったのが、凄い、すっごい怖かったよおおお?!!
間が空き過ぎちゃって、ごめんなさい^^;
アビッソのキャラが、なかなか固まらなかったんですが・・・ただの変態さんに落ち着きそうです^^;
ブックマーク、評価、読んで下さってありがとうございます^^嬉しいです!




