ある雨の日のお話。
「うわっ?!今、すごい近くに落ちませんでした?!」
ピシャアアンッゴロゴロゴロッと、夜空を切り裂いて稲光が駆けて行った。異世界の雷はすごい怖い。まるで雷が生きてるみたいなんだよ。ゴロゴロ音も、巨大な岩の怪物が歯ぎしりしているみたい!
魔王城の最上階には“星見の間”という、天井と片側の壁が全面ガラス張りのお部屋があるんだよ。今夜はそこにテーブルをセットして、晩餐会をしているんだ!
照明は日本での停電時のイメージで、数本の蠟燭だけ。雷がピカッと光った時だけ、リガルド様と料理が良く見えるんだよ。
「・・・お前は、いつも変な事を思いつくな」
リガルド様が呆れたように溜息をついて赤ワインを飲んだ瞬間、ピカッと光ったの・・・何か、ふふっ・・・。
「ドラキュラの晩餐会感が・・・半端ない!!」
今夜のメニューは肉汁滴る鳥の丸焼き(ディアボロ風)、赤ワインソースを添えて。飲み物も赤ワイン。他は心臓みたいに見える、こっちの世界の果物。魔女の指みたいな形に焼いたパンとか、適当に。
この世界では魔力で光を灯しているから、停電とか無いんだよね。朝から降り続く雨を見てて、何か無性に停電ごっこがしたくなった。
私が子供の頃に、初めて稲光を見た日。夕方に停電して真っ暗な部屋の中から、夜空を走る稲光を夢中になって見ていたんだ。
あの感動を味わいたくて、今夜は雷を楽しもう会を開催したのだ。
「夜の雷って、本当に綺麗ですよね」
「・・・特に気にしたことは無いが・・・お前と見るなら、悪くない」
「はい、惑わすポイント1入りました~!もっと下さい!!」
ワイングラスを高く掲げて、胸キュン台詞をおかわりするも、リガルド様の眉間に深い皺が入っただけだったね。
「飲み過ぎだ。襲うぞ」
「はい・・・」
喜んで~!は冗談でも言ってはいけない。冗談にならない気がするんだもん。
「喜んでいるのか?」
私の心を読んだリガルド様がニヤリと笑った。はい、ここでタイミング良くピカッと光りましたね!悪い顔が美しいです!リアル、ドラキュラ伯爵様ってこんな感じだよね!
「お前が時々、名を出すそいつは何者だ?」
あ、リガルド様がちょっと不機嫌そう。そうだよね・・・リガルド様は、唯一無二のこの世界の魔王様だもんね。吸血鬼なんかと一緒にされたくないよね。
「えっと、私の頭の中の映像、見えてますか?架空のお話に出てくる・・・処・・・生娘の生き血を吸う人です」
「・・・・・・」
私の頭の中では、年代別に様々なタイプの吸血鬼たちが、吸血行為をしているシーンが流れている最中だ。もちろん、吸血鬼のお城での晩餐会や、窓から差し込む稲光で浮かび上がる、吸血鬼の顔のシーンもだよ。
「・・・・・・」
「えっとぉ・・・感想下さい」
何のコメントもくれないリガルド様が、黙々と食事を進めていく。
「この鳥は美味いな。皮はパリパリで、身はジューシーだ。赤ワインを使ったソースも良い」
あ、地球言語かぶれのリガルド様がジューシーって使った。便利だよね、ジューシー。
「・・・お前の頭の中は煩い」
「は~い。このパンとかどうです?魔女の指なんですけど」
ちゃんと爪の部分も作った力作だ。私が魔女の指でお肉を突いていると、リガルド様に叱られちゃった。
「食べ物で遊ぶな。マナーがなってないぞ」
「はあ~い」
リガルド様は食べ方も所作も、本当に綺麗だもんね。良いところは、どんどん見習っていこうかな!私も食事に集中して、食べ終わってお茶を淹れた頃には、雨は止んでいたよ。
「わあ!綺麗・・・!」
雲が晴れて、満開の星空が見える!今日は月の無い夜だったんだなぁ・・・。でも、さっきまであんなに曇っていたのに・・・。
「もしかして、お城を動かしてくれたんですか?」
「・・・夜空に走る光も良いが・・・静かな光も良いだろう」
「そうですね!えへへ・・・」
最近、リガルド様のこういう気遣いが嬉しい。毎日一緒にご飯を食べて、私のくだらない遊びにも付き合ってくれるし・・・リガルド様って・・・。
「もしかして、すごくお暇ですか?」
「・・・・」
「いひゃいれす」
深緋色の目を細めたリガルド様に、頬っぺたを両側からグイ~ッと引っ張られた。すごく痛い!優しくなってきたと思っていたのにな!勘違いだったのかな?!
涙目で睨んでいたら、リガルド様が今日で一番深い溜息をついた。その可哀そうな子を見る目を止めてもらいたいなぁ?!
「お前は・・・ちょっと、頭の中を見せてみろ」
リガルド様が私の頭を掴んで、スイカを割るみたいな感じで、両側に引っ張った。や~め~て~。
最近、魔王様ジョークも出るようになってきたけど・・・本気かもしれないから、まだ油断は出来ないんだ!
まだリガルド様がホノカを欲しくなる前の「変な女だが・・・面白いから良いか」くらいの時のお話です。このくらいの距離感も好きだったな・・・みたいな感じです^^
雨の日は嫌いなような、当たるもので音を変える雨音が好きなような、ガラスに当たる水滴が好きなような・・・アンニュイな気持ちになるような、気分が左右されて可笑しいです。
ブックマーク、評価、読んで下さってありがとうございます!励みになります^^




