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眼中に無くても、食らいついて行く所存です。

「私ねぇ、今日初めてこの世界に来たんだけど・・・だぁれもいなくてね。・・・空気は焦げ臭いし、草の一本も生えてないし?ちょっとふざけて、助けて~って叫んでみたらさ・・・黒い稲光が突然、ドーン!って襲ってきたんだよ?!」

観察は直ぐに飽きた。黒ちゃんに慣れてきた頃、夜が明けて辺りが明るくなってきた。


「朝か~・・・ちょっと、お腹空いちゃった。何か甘いものが食べたいな~」

鞄の中を覗いてみる。確か、死ぬ前に・・・ちょっとお高めのチョコレートから、お手頃な価格のチョコ菓子まで、食べ比べしようと思って、いろいろと買ってあったんだよね。


「チョコレート~出てこ~い!トリュフが食べたい!んっ・・・あった!」

しっかりとした作りの美しい小箱をそっと開けると、コロンと丸くて可愛い、トリュフ達が並んでいる。


「はわぁ~!可愛い~!どれにしようかな~?・・・よし、君に決めた!」

ストロベリーパウダーで飾られたトリュフを選んで、口の中に放り込む。もぐもぐ・・・。

「うっ美味~い!!お口の中が、ストロベリーフィールドだよぉ!!」


未だ癒えていない心と体の疲れが、私に意味不明の食レポをさせるが、そんなの関係ない。

舌の上でとろけるチョコレートの甘さに、うっとりとしてしまう。

私の指が次の獲物に迷って、さ迷っていると・・・何やら熱い視線を感じた。何だ??


「おわっ?!」

視線を追って顔を向けると、限界まで目を大きく見開いた黒ちゃんが、トリュフを凝視していた。視線が熱すぎて、結界が溶けないか心配になってくるよ~っ!!


「ちょっ・・・黒ちゃん?!目玉が落っこちそうだよ?!」 

慌てる私のことは眼中に無いらしく、トリュフから視線を外さない黒ちゃんは、ソワソワ、ふわふわと落ち着きなく飛んでから、結界に体当たりを始めた。うわっやめて~!!


「もしかして、トリュフが気になってるの??」

トリュフを黒ちゃんの目の前で左右に動かせば、赤い目玉が追ってくるし、トリュフを鞄に仕舞うふりをすれば・・・赤い目を憎々しげに細めて、私を睨んでくる!!

「トリュフ、あげようか?」

黒ちゃんの黒い球体ボディーから、黒くて小さなお手手が生えてきて、結界をバシンッバシンッと叩いてくる・・・寄こせってことかな?

ん~・・・意思の疎通はできてるっぽいし・・・大丈夫かな??


「ねえ、結界解いたら・・・襲ってきたりしない?」

黒ちゃんが私を見つめて、しばらく動かなくなった。考えてるのかな?ちらりとトリュフを見て、私を見て、体全体を縦にゆっくり一回動かした。肯定・・・だよね?

ちょっと警戒しながら、多重掛けしている結界を一つ解除する・・・黒ちゃんに動きなし。

よし、もう一つ解除。うん・・・大丈夫かな?・・・最後の一つを解除する。


「?!」

完全に結界が無くなると、黒ちゃんがにゅっと黒いお手手を伸ばしてきた。

トリュフの前でぴたりと止まって・・・赤い目玉で、私をガン見するのやめてください。

「ちょっと吃驚した・・・うん、約束守ってくれて、ありがと。トリュフどうぞ」

黒ちゃんに小箱ごと差し出せば、小さなお手手がそっと受け取った。


「・・・共食い?」

黒ちゃんとトリュフって、ちょっと似てるよね?

思わず呟いちゃったら黒い稲光が一筋、私の足元に落ちてきた?!


「ちょっ・・・これ!黒ちゃんの仕業だったの?!昨日、私のこと追い回したのは何で?!」

黒ちゃんが目を細めて、私をじと~っと見てくる。

暫く無言で見つめあった後、黒ちゃんが何処かに飛んでいこうと向きを変えた。


「えっ?!待って黒ちゃん!!何処に行くの?!」

誰もいないこの世界での第一村人ならぬ、第一・・・黒ちゃんて、魔物?だよね・・・第一魔物。

ついて行ったら、危ないかもだけど・・・一人でいるのは、けっこう寂しかったし・・・

「う~ん・・・」

神に無茶振りして、スキルはてんこ盛りだし・・・きっと大丈夫だよね?!

黒ちゃんはトリュフをもらえば、用は無いとばかりに、私を置いて飛んで行ってしまう。

無情過ぎない?!


レジャーシートを慌てて鞄に詰め込んで、体に“身体強化”と“瞬足”をかけると、私は黒ちゃんを追いかけて走り出した。悪いことが起きたら、その時に後悔しよう!


「黒ちゃ~ん!!私も連れて行ってよ~!!」

私が追いかけてきたことに驚いたのか、黒ちゃんが振り返って、目を見開いてる。

止まってはくれないし、速度も落としてくれないけど!

「連れて行ってくれたら他にも美味しいチョコあげるよ?そのトリュフの仲間みたいなやつだよ?」

「・・・・・・」

走りながら、黒ちゃんと見つめ合うこと暫し・・・ゆっくりと、黒ちゃんが体を縦に振った。

よし!!


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