鮭とばと火竜の子。
「び、吃驚した・・・何ですか、それ?」
「火竜の幼体だな」」
「サラマンダー!こ、これが・・・」
リガルド様に捕まって暴れているのは、体長30cm位の小さな赤い竜だった。リガルド様の目の色より少し明るい緋色の体に、手足に向かって黒に近い赤になっていく。
「かっこいい・・・」
ファンタジー映画で見るより小さいけど、幼体だからかな。抱っこしてみたいけど・・・齧られるかな・・・。
「触っても大丈夫でしょうか?」
「ふむ・・・死なない程度に、気絶させるか?」
「いや!いやいやいや!可哀そうなので止めて下さい!」
リガルド様の冗談に(冗談だよね?!)サラマンダーはビクッと震えてから、力が抜けた四肢をだらんとさせた。この状態、前にも見た事あるなぁ・・・あ!クマちゃんズもなってたよね?!
「生き物の生存本能とかなのかな・・・勝てない敵の前では、死んだふりをするみたいな?」
目をギュっと閉じて、必死に死んだふりをしている姿が健気で・・・思わずサラマンダーの頭を、指先で撫ででしまったよ。ふわあ~!火竜っていうから熱いのかと思ったら、意外にひんやりと冷たい!
「ギャッギャウウ・・・」
お、初めは嫌がって威嚇していたんだけど・・・段々と、自分から頭を擦りつけてきたよ!ふふふ・・・実家の猫で磨いた、私のテクニックに堕ちたな・・・。
「クククッ」
「・・・・」
「・・・そんな目で見ないで下さい・・・」
リガルド様の何とも言えない目線が辛い。私は鞄から鮭とばを取り出して、リガルド様とサラマンダーの口の中に押し込んだ。大人しくモグモグする1人と1匹。口をあ~んとして、おかわりを強請るのは同時だった。
「干した魚か、美味い」
「ギャ!ギャウギャウ!」
「2人共、鮭とばが好きみたいですね!リガルド様、そろそろ離してやって下さい」
首を掴まれてるから、飲み込むときに詰まりそうで、冷や冷やしちゃうんだよね。
「・・・もぐもぐ」
リガルド様の手から解放されたサラマンダーは、パタパタと飛んで私の肩に乗った・・・ふおおおお?!!テシテシと肩を叩くのは何ですかな、鮭とばをお強請りしているのですかな?
「くっ・・・お食べ・・・ううっ可愛いいいい~」
鮭とばを両手で器用に掴んで食べる、サラマンダーをデレデレと見ていたら、リガルド様の眉間の皺がもの凄く深くなったんだけど・・・何で?
「・・・だらしない顔をするな」
「ん?!」
リガルド様の頬が、ほんの少~しだけ(本当に微かな違いだよ?!)膨れて見えるのは、鮭とばのせいじゃないよね?!まさか・・・サラマンダーの方が沢山食べているとかで、拗ねていらっしゃるとか?!
「・・・違う」
「違うんだ。何か機嫌悪くなる事しましたっけ?」
リガルド様の方眉がピクリと上がって、深緋色の目が細められた。この表情は・・・何だっけ?・・・え~っと・・・。
クマちゃんズの時もしてなかったかな?リガルド様以外を見過ぎた時に、出る表情かも?!
「う~ん・・・リガルド様、あ、あ~ん・・・?」
「・・・」
勇気を出して、あ~ん攻撃だ。リガルド様は無言でぱかっと口を開けた。鮭とばをそっと口の中に入れると、指ごと食べられた!慌てて指を引っこ抜くと、ニヤニヤと笑われたよ!
「ギャッ?」
「あ、君も食べる?はい、あ~ん」
「ギャ~ン」
か、可愛い!!サラマンダーにもあ~んとしていたら、前方から冷気が突き刺さるんだけど?!私が顔を上げられないでいると、リガルド様の重低音が聞こえた。
「ホノカ」
「は、はいい?」
「もう一度、食べさせてくれ」
「は、はい!」
ビシッと背筋を伸ばして顔を上げたら、見たこと無いくらい細くなった深緋色の目が、弓なりに笑っていて凄く怖かったんだ!!
ちょっとプルプル震える指で、鮭とばを差し出したんだけど、リガルド様は首を横に振って・・・私の唇をトントンと指で軽くノックした。
「えっとお・・・どういう意味でしょうか?」
「口移しで食べさせてくれ」
「え?!!」
それはちょっと、恥ずかしいんですけど・・・。何となく辺りを見回しても、火山地帯だもん誰も居ない。誰も見てないから良いのかな・・・サラマンダーをチラッと見たら、気のせいかな・・・ジ~ッと見られている気がする。
じわじわと顔と頭が熱くなってきた・・・!急激にのぼせてきたみたいだ!あうあうとなる私を見て、リガルド様が溜息をついた。
「結界が薄れてきたか。続きは後だ、城に飛ぶぞ」
リガルド様が私を抱き上げて、魔王城まで転移してくれた。飛んだ先は私の部屋だったよ。
「冷やした方が良いな」
ベッドに腰かけた私を風魔法で冷やしたり、冷たい水を出してくれたり・・・リガルド様が優しい!
「服を脱げ」
や・・・優しい・・・?ツナギを脱がそうとして、眉間に皺を寄せている。あ、止めて!引き千切らないで?!
「自分で出来ますから!ちょっと・・・部屋から出て貰えますかね?!」
「そんなに赤い顔で、1人で着替えが出来るのか?」
リガルド様が意地悪そうに、ニヤニヤと笑っている。私が動揺してるいのが、すごい楽しいみたいだね?!
「大丈夫なんで!」
リガルド様をグイグイと押して、扉の外に押し出したら・・・扉が閉まる前に頭をヨシヨシと撫でられた。ううっ・・・揶揄ったり、意地悪する時と違う・・・優しい顔で笑われたら・・・ドキドキが止まんないよ!!
「ギャウ?」
「あれ?!君・・・ついて着ちゃったの?!」
「ギャウギャウ!」
リガルド様の転移が早過ぎて、サラマンダーを置いてくるのを忘れてたよ!どうしよう・・・。見つめ合っていたら、扉がバタンと開いてリガルド様が入って来た。
「あ?!」
「ギャウ~!ギャウウ・・・・」
あっという間にサラマンダーを摘まみ上げたリガルド様が、ツカツカと早足で出て行ってしまった・・・。サラマンダーの弱弱しい声が、扉越しに遠ざかって行くのが、凄い気になるんですけど・・・!
鮭とばが時々出てきますが、皆さんはお好きですか?
私はあんまり・・・好きじゃないです(えへへ)^^;ビーフジャーキーじゃしょっぱすぎるだろうな、と思って鮭とばを乱用しております。
ブックマーク、評価、ありがとうございます!読んで下さる方、とっても嬉しいです^^




