家族の味・・・それは。
3色団子でお腹が満たされて落ち着いたのか、その後は和やかな雰囲気で、森ヤギが居る所に案内してもらったよ!
「はわ~!森ヤギがいっぱい!」
エルフの郷の外れに柵で囲われた草原があった。柵の中には森ヤギが100頭以上は居そうな感じ!見た目は地球のヤギと同じなんだけど、瞳の色がね綺麗な緑色なんだよ!角もちょっとだけ大きいかな?
ヘイムダルさんが森ヤギに餌をやっている男の人に声を掛けてくれた。作業が終わるまで待っていると、エルフ族には珍しくニコニコと柔和に笑いながら、その人はこっちに来てくれた。
「ホノカさん、彼が森ヤギの飼育係ですよ」
「こんにちは!ホノカと申します。森ヤギを5頭下さい!」
「え~と・・・?」
緑のほわほわ髪のエルフさんは、眉尻を下げて困った笑顔をシグルズさん達に向けている。困った顔なのに、笑顔に良い人感が出てるの凄い。
「お兄さん、エルフ族なのに可愛い顔してますね!」
「「「「・・・・・」」」」
あや?!首筋と後頭部に何か、冷気を感じるよぉ・・・?!見上げたら、無表情の(その顔見た事ない!)リガルド様が私を見下ろしていた。
「浮気か、ホノカ」
「え?・・・いや・・・違います。エルフ族にしては笑顔が優しそうで可愛いし、髪の毛ほわほわだし?背も低くて、ソバカスもキュートだなって思っただけですよ?!」
無表情で顔を近づけてくるリガルド様をグイグイと押しやって、森ヤギ係のお兄さんに「ね?」って同意を求めたんだけど、なぜか赤くなって俯いてしまった。か・・・可愛い!!
「・・・早く森ヤギを寄こせ」
「脅すなって!森ヤギと何を交換するんだ?」
リガルド様の重低音が心地良い・・・じゃなくって、シグルズさんの言うとおりだね、交換品を出さなくちゃ。
「リガルド様、ちょっと下ろしてもらっても良いですか?」
「・・・駄目だ」
「え~っと?・・・じゃあ、良いか。ん~・・・何が良いかな・・・」
リガルド様に抱っこされたまま、ちょっと体を捻って鞄の中を漁った。森ヤギとの交換の相場がわかんないんだよね。
「この世界で、森ヤギの価値ってどのくらいですか?」
「・・・」
基本的に食事をしてこなかったリガルド様にとっては、森ヤギは道に落ちてる石くらいの感覚だろうなぁ・・・。
「エルフ族にとっては貴重なものだぞ。乳も肉も毛皮も、余すことなく恵みをもたらす生き物だからな」
シグルズさんが言う事にうんうんと頷く。森の中で生きるエルフ族にとっては、大事な栄養源だよね。ヤギのチーズ、ヤギの煮込み・・・そうだ、こないだ狩った魔牛の肉と交換してくれないかな?
私は熟成させた魔牛の肉の塊と、地球の普通の牛肉を鞄の中から取り出した。1パック900円くらいのやつ。
「お肉と交換とかどうですか?魚の方が良いです?」
「!美味そうな肉だな?!」
「お魚も魅力的ですが・・・この赤身と脂身の比率が素晴らしいですね」
「お肉・・・」
エルフの皆さんが肉に食い付いたよ!森の民だから草食なのかな~って思ってたんだけど、若いエルフはお肉大好きなんだって!皆でがっつくと森ヤギが居なくなるから我慢していたらしいよ。
「じゃあ、お肉と森ヤギを交換してくれますか?」
「良いとも!」
あ、懐かしいフレーズ・・・地球に居た頃、お昼にいっつも聞いていたよね・・・。もう一回、聞きたいな!
「お肉と交換してくれるかな~?!」
「?良いとも・・・?」
ちょっと元気が足りないけど、シグルズさん達が怪訝な顔してるから、もう良いかあ・・・。
無事に物々交換が終わったよ。泊っていくかってシグルズさんが誘ってくれたんだけど、ヘイムダルさんは微妙な顔してるし、リガルド様がなぜか機嫌が悪そうだしで、魔王城に帰って来たんだ。
森ヤギ達は地上に放すのは不安だから、今日の所は魔王城の裏の空き地に結界を張って、放しておいたよ。
「リガルド様、何か怒ってますか?」
私を抱っこしたままソファに座ったリガルド様は、無表情のまま口をへの字に曲げている(ように見えるんだよね~?)私のお腹にある手の甲をツンツンと突いてみたけど、お腹のお肉をギュっと掴まれちゃった!
「ちょっ・・・?!不満があるなら、言葉で言って下さいよ!」
「肉」
「私のお腹の・・・?」
酷くないですか?!そんなにお肉は付いて無いですよ・・・無いですよね?!
「ふっ・・・違う。地球の肉だ」
「あ?・・・リガルド様に地球の牛肉って、食べさせた事なかったですか?!」
ふふっと笑ったリガルド様が、私の下腹の肉をやわやわと揉みながら、恨みがましく呟いた。
「無い。浮気者のお前は、俺では無く他の男に肉を撒くんだな」
ああ~・・・深緋色の瞳でジトッと上目遣いで睨まれて・・・肉を出さない女が、この世界に(いや、地球にだって)居るわけが無い。
「食べましょう!地球の美味しいすき焼きを!リガルド様の為に作りますからね!!」
張りきった私は、リガルド様の手を引っ張って魔王城の厨房に駆け込んだ!鞄の中からすき焼きの材料と、すき焼き鍋を取り出して、調理開始だ。
熱した鉄板の上で極上の肉の脂が溶けて跳ねる!1パックのお値段は言えない位の、良いお肉をリガルド様に食べてもらうんだ!
「さあ、リガルド様!お皿の中の卵を混ぜて、肉を良く絡ませて食べてみて下さい!」
「む・・・美味い」
「私の生まれた国のご馳走ですよ!皆が大好き焼き!すき焼きで~す!」
美味しい肉の脂が口の中です~っと溶けていく。余韻が消える前に白米をパクリ。お肉を楽しんだ後は、肉の旨味がしみた野菜たちを頂こう。玉ねぎが甘いし、椎茸がじゅわ~ってなって泣きたくなる。
「む・・・泣くな。私の肉をやろう・・・」
「?!」
ちょっとおセンチな気分になった私を、心配してくれたのかな?いつもならくれないのに・・・いやいや、睨まないで下さいよ?!リガルド様が私の口にお肉を捻じ込んできた。
「おいひいれす」
深緋色の目を細めて笑ったリガルド様が、私の目尻の涙を拭ってくれた。異世界でも、大事な人と食べたら家族の味になるんだねって・・・何か、こっぱずかしい事を思ったんだ・・・。
異世界でリガルド様と美味しいものを食べるのが、当たり前の日常になってきているホノカ・・・。
この世界の常識を身に着けたら、旅立つんじゃなかったのかね・・・?巣立ちよりもすだちを選びそうな子ですね。皆さん、GWいかがお過ごしですか?
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