有る所からは貰っていくスタイルです。
その後の数週間は地上に降りて、ノームのお爺ちゃんと領土の浄化を進めたり、リガルド様に魔法を習ったりして過ごしたんだ。
「おかげ様で、何とか近距離の転移を覚えましたあ!!」
うわ~い!ドンドンパフパフ~!!と口で言って盛り上がる私を、可哀そうな子を見る目で見ないで下さい!
「魔の領土の半分は浄化が済みましたし、同時進行で緑化も進めているので、そろそろ小型の家畜が欲しいです!」
鶏とか豚とか牛とか・・・食べても良し、育てても良しの家畜を育てたい。牛は魔牛に似てて、豚は・・・魔物って言ってたよね?ゴブリンみたいなやつかな?!
「良い方法があるぞ」
「何でしょうか?」
ニヤリと笑ったリガルド様の顔が悪そうで、嫌な予感がするなぁ。
「有る所から貰えばいい」
「持ってる奴から奪えばいいと同意語です?」
リガルド様が満足そうな顔で頷いた。そうですよね、忘れていたけど魔王様ですもんね・・・悪サイドに居た自覚が無くてすんません!
「エルフの郷に行くぞ」
「あ~なるほど・・・」
以前、肥沃な土を分けて貰ったりお世話になったエルフの郷には、確かにヤギっぽい何かが居たかも。前は適当に鮭とばをお礼に置いて来たんだよね・・・今回はもうちょっと良い物を置いてこよう。
「エルフの郷の入り口には、一度行ったな。飛んでみろ」
「うう・・・頑張ります」
私の転移できる限界が“地上で行った事のある場所”だ。場所を正確に知っていれば座標が出せる。距離的にはエルフの郷が限界だろうな・・・地下の採掘場や海底神殿は無理。リガルド様なら魔力の消費を気にしなければ行けるそうだけど。
「では、行きます!」
リガルド様としっかり抱き合って、エルフの郷の入り口をイメージした。薄青色のスズランの道へ・・・。
「すわっ!」
景色が魔王城から森の中へ、一瞬で切り替わった。練習では魔王城から地上にある花畑まで、行ったり来たりしただけで、こんなに遠くまで来たことは無かったんだ。
「ふむ。無駄な揺れも無く、魔力消費にも無駄は無かったぞ。良くやったな」
リガルド様が私の頭をヨシヨシしてくれた!リガルド教官に褒められて、嬉しいであります!暫く抱き着いたまま、頭を撫でて貰っていたら背後から溜息が聞こえた。
「・・・貴方達、また来たんですか?」
「あ!こんにちは、ご無沙汰してます!また来ましたよ~!」
振り返れば、顔を顰めたヘイムダルさんと、困った顔で笑うシグルズさんが私達を見ていた。
「知っているような魔力を感じてな、見に来たんだが・・・お前たちだったか」
今度は何をしに来たと顔に書いてあるよ?シグルズさん。そんなに気になるなら、答えてあげよう・・・
「森ヤギを寄こせ。5頭で良い」
「我らの郷の財を奪いに来たのか?!」
ヘイムダルさんが剣の柄に手を伸ばしたけど、シグルズさんに止められている。この2人って何か面白いよね!
「落ち着け、たぶん・・・魔王はそういう意味で言ってるわけじゃ・・・」
「蜂蜜酒も寄こせ。樽で3つだ」
「いや、確実に略奪に来てるでしょう?!」
「あ~・・・来てるのか?」
ヘイムダルさんが警戒態勢でリガルド様を睨んでて、シグルズさんが私に真意を確認中。前に来た時にもこんなやり取りしなかったっけ?エルフ族は疑い深いのかな?
「はい、貰いに来ました!」
「あ~・・・一方的な搾取は看過できんぞ?」
ヘイムダルさんが我が意を得たりと、どや顔で剣を構えた。表情を厳しくしたシグルズさんも、ゆるりと剣を抜いたよ・・・。
異世界の食べ物とはいえ、鮭とばと大量の土は釣り合っていない気がしました。
わりと気軽に奪いに行く魔王様と、そこで異世界の偏った常識を学んでいく弟子です。
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