地底の国へ行こう 3
「ふお!本当にドワーフが居る?!」
岩場のあちこちで、屈強なドワーフ達がツルハシで岩を砕いている。ガキンガキンッと、金属が打ち合う音が響いてきた。
少し奥の方では、大きな炉からモクモクと煙が出ている。何を作っているんだろう?
「この辺りは、何が採れるんでしょうか?」
「おそらくミスリルだろうな」
「ふぁ?!ミスリル!ファンタジ~~っ!!」
「・・・お前が時々、叫ぶその言葉はどういう意味だ?」
眉を顰めたリガルド様が、私をジッと見ている・・・あ、煩過ぎましたか?!すんません!!
「ええと、私の住んでいた世界での言葉です。空想的とか、幻想的な意味で・・・私の世界には、前にも言ったように人族しか存在して無くて。この世界に居る人達は、私から見たら幻みたいで不思議だなって・・・?!」
なぜか、リガルド様の眉間の皺が深くなった。すごく不機嫌そうっていうか・・・怒ってる?
「あの?どうしました・・・んぅ?!」
リガルド様に腕を掴まれて、少し乱暴に抱き寄せられた。グイッと顔を上向けられ、唇を塞がれた。
「ちょっ?!・・・あっ・・・ふ・・・」
まるで私に、リガルド様の存在を刻みつけるようなキスだ。は、激し・・・息ができ無いよう!
魔力を注がれているのか、私の右手の従属の紋が赤く揺れて、チリチリと焼けるような痛みが走った。
目頭に涙が滲んできた。もう、限界だ・・・私の意識が途切れる寸前に、リガルド様のキス攻撃は終わった・・・!
「はぁ・・・はぁ・・・な、何を・・・」
「俺も幻か?」
「え?」
「ホノカには、俺が夢か幻に見えるのか?」
深緋色の目が赤く揺らめいている。怒ってるというより、悲しそうに見えた。何だか、無性に愛おしくなって、私はリガルド様をギュッと抱きしめたんだ。
「幻なんかじゃないですよ!リガルド様はこうやって、触れるじゃないですか?!温かいし・・・わっ私のこと、従属させてるくせに・・・何が不満なんですか?!」
「お前の全てを手に入れたい。お前の心も体も・・・魂までも」
「~~~~っ?!!!」
耳元で低く囁かれたら、脳が呆けて・・・心臓はギュッとなったし、腰も抜けそうだった。今の絶対、声に魔力乗せてた?!耳から忍び込んだリガルド様の魔力が、私の全身を痺れさせていく・・・こんっの、魔性!!
「「「「・・・ンンッ・・・ゴホンッ!!」」」」
「え?」
突然、何人かの咳払いが聞こえて振り返ったら、採掘場に居たドワーフ達が手を止めて、一斉に私達を見ていた。
「はわっ?!!!」
「あ~・・・お嬢ちゃん達、一応ここは俺達の仕事場でな?」
「ゴホンッ・・・そういうのは、二人きりの時にやってくれんかの?」
「わっはっは!熱い熱い!熱気がここまで、飛んできよるわ!」
生ぬるい目をしたドワーフ達が、口々に揶揄ってくるから、恥ずかしくって!私はリガルド様の胸を(強めに)ポカスカと叩いたのだった!!
「ククッ俺を、身体強化して殴ってくるとは、面白い女だ」
何かな?叩かれて喜ぶ趣味があるのかな?!もう少し、周りに配慮して襲ってくれないかな?!
「配慮すれば襲って良いんだな?」
私は慌ててリガルド様の口を両手で塞いだ。発言にも気を配って頂きたい!!
「あ~・・・何か甘酸っぱいもん食い過ぎた後は、しょっぱいもん食いたくなるな?」
「そうじゃな、胸焼けして労働意欲が萎えたわい」
「ちょっと休憩すっか。おい誰か、茶ぁ淹れてくれや!!」
ドワーフのおじさん達が、私達を見て冷やかしているのか、呆れているのかわからない顔で見てくるのが・・・辛い。
「あ、あのぉ~・・・もし良かったら、お茶請けに食べませんか?」
私は作業を邪魔してしまったお詫びのつもりで、鞄から取り出したものを差し出した。
「何だそれは」
うう、リガルド様の視線が刺さる。ドワーフのおじさん達も興味深そうに集まってきた。
「これは固焼き煎餅とあんこ餅です!ちょっと硬いですけど、甘いのとしょっぱいの無限ループが・・・」
私の説明を聞き終わる前に、ごつい手が煎餅とあんこ餅を奪っていった。リガルド様がドワーフをジッと睨んでいる?!
「リガルド様の分もありますから!!」
「む、・・・硬い。・・・柔い」
差し出してから、リガルド様の口の中に消えるまでが早すぎて、見えなかった!!先ず固焼き煎餅をバリバリと噛んで飲み込んだ後、あんこ餅もいった!あ、また煎餅・・・ふふ。無限ループに堕ちましたね?
「んだこれ?!甘くてうめえ!」
「この丸くて平べってぇのも、噛み応えがあって良いな!」
「おい、こっちにも寄こせ!」
ドワーフのおじさん達の方で、争奪戦が繰り広げられている。おかわりを渡そうかな?
「ん」
あ、その前にリガルド様が手を差し出してきたので、おかわりを渡した。口に入れて飲み込むまでが凄く早いんだけど・・・食べている姿は優雅なんだよねぇ。
「あの、良かったら。おかわりをどうぞ?」
ドワーフのおじさん達におかわりの煎餅とあんこ餅を渡したら、お茶に誘われたのでお邪魔したよ。
「はあ~食った!やる気が漲ってきたぜ」
「お嬢ちゃん、美味いもん食わせてくれて、ありがとな!」
「いえ、こちらこそ、お茶ご馳走様でした!あ、あの・・・もしかしたら、秘密なのかもですけど、ノームが何処にいるか知りませんか?」
あぶない、良い感じで和気あいあいとお茶を楽しんじゃって、目的を忘れるとこだったよ~!
「「「「・・・・・・」」」」
「あ、あれ・・・?」
おじさん達が無言で、私とリガルド様の顔を交互に見ている。頭を寄せ合って、何やら話し合ってるみたい。
「あの!もし無理だったら、大丈夫ですよ?!自分たちで探しますので!!」
「良いぞ。教えてやらあ」
「えっ!良いんですか?!」
「まあ、そっちのあんちゃんは魔族だろ?それもお偉いさんだな?何が目的でノームを探してるのかは知らんが」
「嬢ちゃんが悪いことをするようには、見えねぇしな?」
「2人合わせて、差し引き0で大丈夫だろうって事になったわ!」
ガッハッハッハとおじさん達が豪快に笑って、肩を叩き合っている。そんな感じで良いんだ?ざっくりだけど、こっちとしては助かるね!
「TPOを考えて欲しいですね」
「別に良いんじゃないのお?!」
私達は時々、管理する世界を観察するために水鏡を覗くのですが・・・いつ見ても魔王と、穂乃花さんがイチャついている場面に当たる気がします。私はそれを逐一、記録しなければいけないのが辛いところです。
ホノカは知らない。天界からいつも見られているという事を・・・。
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