神にありったけの願いを無茶振りしたら、倍返しで無茶振りされて泣きたくなった
もう、何にも思いつかなくなるまで、欲しい要望を吐き切った私を見て、神が言った。
「良いよぉ~★ぜ~んぶ、君のお願い、聞いちゃうよ~!」
おお・・・まさかの太っ腹!これが噂の、神対応というやつでしょうか?!
「ありがとうございます!!」
私は素直にお礼を言って、90度のお辞儀をした。日本人として、最大限の感謝の気持ちである。
「では・・・異世界転生を希望するということで、よろしいですね?」
私の一言一句を逃さずに記録しきった、眼鏡のお兄さんがまとめに入るようだ。
「はい!」
私は元気よく返事をして、最後に残っていた涙をぐいっと拭った。
私は新天地で、自分だけの物語を精一杯生きて、今度こそ満足して、笑って生きるんだ!!
「じゃあ、はいこれ~装備一式ね。今着替えちゃう??」
「お願いします!」
神が新しい装備と今着てる服をチェンジしてくれた。
魔…魔法?それとも、神力かな?すごいねっ
「ふわぁ~これは!モカピンクのふわふわジャンスカ?!セーラー襟が可愛い☆じゃなくて!」
こんなにふわふわの服じゃ、スローライフ生活できないんじゃない??
「大丈夫ですよ。着替えも数着用意してます。とりあえずは1週間分、各種7着づつ収納に入ってますから」
眼鏡のお兄さんが冷たい布で顔を拭いてくれた。髪も綺麗に結いなおしてくれた・・・なんか恥ずかしい。
おかん?おかんなのかな?ツンツンデレ眼鏡におかん属性。最高ですね!
「悪寒?・・・何を今さら照れているんですか?」
「さっきまで、いっちばん汚っい顔、晒してたのにね~?あはは!!」
神は黙ってて下さいよ。じろりと睨むと、にやにやと私の顔をのぞき込んできた。
「さて、準備もできたねっ君が言った必要なものは、全部このバッグに入っているからね」
神がパチンと指を鳴らすと、私の足元が白く光りだした。ふお~魔法陣きたぁ~!!
「じゃあね、頑張ってね!世界でたった一人の人間の君に、ありったけのスキル(ギフト)を詰め込んだからね!」
「せいぜい、転生して直ぐに死なないように、頑張ってくださいね」
「は?!」
不穏なワードが含まれていなかったかな??!
私の足元の魔法陣が眩しく輝いたと思った瞬間、私は新しい世界に転生していた・・・。
「ちょっ・・・まっ・・・待てやぁぁぁ~!!!!!!」
新天地、新たな私の人生の始まりの場所。憧れの異世界に転生したら・・・したらっ
そこは何も無い、荒廃した世界でした。
「ちょ!!!神!!!ちょっと!!うわぁ~ん???!!!」
黒く広がる焼土は地平線まで続き、空気も焦げ臭くて、喉に張り付くようだ。
私は涙目になりながら、自身の周りに結界を張った。もちろん、神に貰ったスキルでだ。
結界内の空気を風魔法“クリーン”でクリーンにする・・・ゴホッんん。
空を見上げると黒い雲が覆っている。この辺りが焼けてから、そんなに時間が経っていないのかもしれない。
「はぁ~・・・なんか、話が旨すぎると思ったんだよね。私の謝辞を返して欲しい。今すぐに」
しゃがみこんだまま、地面をじっと見る。小石も無いくらいに、さらっさらに焼け尽きた感じだね。
「何があったんだろう・・・はぁ~もうっ」
ぐっと足に力を込めて、立ち上がる。ここが私の物語なら、ゼロから始まるのも・・・ありなのかな??
とりあえずは、状況把握しよう。先ずは安全な場所を探して、休める拠点を作らなくちゃ。
最悪、テントも欲しい物として、用意してもらってある。大丈夫・・・うん。
しばらく歩いてみたけど・・・見渡す限り、焼けた土だけ。木も無いし、生物もいない。
これは・・・あれかな??アレやってみようかな?一応ね。誰もいない場所って、地球では無いもんね?
すう~っと思いっきり空気を肺に溜める。そして、私は力の限り叫んだんだ。
「助けてください!!!!誰か~~~~!!!助けてーーーーーーー!!!!!!」
へへ・・・世界の中心で、ね?叫ぶやつね。誰しも一回はやってみたいはずだよねっ
私が満足感に浸っていると、突然爆音が響いた。上空から黒い稲光が沢山!私に向かって落ちてきたんだ!
「うわっきゃあっ!なにっ?なになに?!」
結界に弾かれてるから、直接の被害はないけど、すごく怖い。
私は雷から逃げようとして、走り出した。“身体強化”に“俊足”をかけて、とにかく逃げるんだけど・・・
「追いかけてくるよぉ~!ふええええん!!」
黒い稲光はどこまででも追いかけてくる。明らかに私狙いだよおお!何でぇ?!
異世界転生できました。転移と迷い中ですが、死んで再生してもらって、新天地で新たに生きる・・・と考えて、転生のままでいこうと思います。