目覚めの後には・・・。
「報告いたします。西の森の捕縛網を破壊した者を、連れてまいりました!」
「ご苦労。・・・で、その者は何処にいる?」
シグルズが真面目な顔を作って報告しているが、当の侵入者がいない。扉の前に控えているのは、ヘイムダルだけだ。ふぅ~・・・と溜息が零れる。眉間の皺をグイグイと揉み込んだ。
「ヘイムダル」
「はっ・・・侵入者2名を客室で休ませています。明日、こちらにお連れ致しますので、対応をお願い致します」
「・・・肝心な情報が、侵入者は2名だという事だけだな?何故、牢ではなく客室なんだ?」
シグルズと組ませてから、ヘイムダルが少しずつ、アホになっていってるようで不安だ。
「直接お会いして頂ければ、わかるかと!」
シグルズが眉尻を下げて言った。ヘイムダルも似たような顔で微笑んでいる。何だその顔は?
「明日の朝食後、族長の執務室にご案内致します。それでは、我々はこれで失礼致します!」
2人は私の返事を聞かずに、早足で部屋を出て行った。・・妙な胸騒ぎがするな・・・。
***************
う~ん・・・温い・・・胸に抱き込んだ・・・黒ちゃんかな?丸いのが温かい。
無意識に手が伸びて、撫でてしまう。つるつるしっとりの毛が、指先をくすぐる。
「ふふふ・・・毛がつるつる・・・気持ち良いねぇ・・・」
撫で撫で撫で・・・なで・・・?黒ちゃんて、毛が生えていたっけ?指で毛を摘まんでみる・・・長い・・・
「?!」
意識が急にはっきりして、私はカッと目を開いた。バッと腕の中を見ると・・・何てことでしょう・・・
「リ、リガルド様・・・?!」
私が黒ちゃんだと思って抱き締めていたのは、リガルド様の頭だった・・・ど、どういう状況?!
「な、何で・・・?」
頭の中は混乱したまま、キョロキョロと辺りを見回す。知らない部屋だ・・・どこだ、此処?
と、とりあえず・・・起きよう!リガルド様の頭から手を離して、そ~っとベッドの端に向かおうとした。
「?!」
背を向けた私を、今度はリガルド様の腕が捕まえて、後ろから抱き締められてしまった。
「あ、あの・・・!リガルド様?!起きてたんですか?!」
「ふ・・・魔族は眠らぬ」
慌てて身を捩っても、抜け出せない。リガルド様の手が、私の頭をゆっくりと撫でている・・・。
「ちょ・・・・っ?!何して・・・」
「お前の真似をしているのだが?」
「?!」
私の頭に・・・リガルド様が鼻を埋めている・・・?!あわわっ抱きしめる力が強くなった??!!
「こんなふうに、俺の頭を抱きしめて・・・頬ずりしたり、髪を撫でたり好き放題だったな?」
「?!・・・いやっ!だって・・・無意識っていうか・・・黒ちゃんと間違えてたし!!」
リガルド様の指が私の顎を撫でで、唇をなぞっていく・・・そのまま、口の中に侵入して・・・
「ん?!・・・んんっ」
「あれは、俺だろう?間違えようが無いな?」
リガルド様の指が、私の口の中をゆっくりと侵していく。歯列をなぞって・・・舌を2本の指でやわやわと揉まれた。うわあああああ???!!やめっ・・・なんか、変な感じがするぅぅ??!!
「やめっ・・・」
逃げようとして顔をいやいやと振ったら、グイッと向きを変えられた。リガルド様の瞳に映る、自分と目が合うのが恥ずかしい!!!
リガルド様がふっと笑って、顔を近づけた。あ・・・キス・・・?
「起きてるか?」
コンコンとノックが鳴って、シグルズさんがドア越しに声を掛けてきた。
「~~~~~~~!!!!!!」
ドッっと体中に血が巡って、一気に熱くなった。はっ恥ずかしいいいいい!!!!
自分がエルフの郷に来ていたことを、急に思い出した。金虫見て、驚いたんだっけ?!!
「起きている」
私が悶絶して、リガルド様の胸に顔を埋めていると、リガルド様が代わりに返事をしてくれた。
「朝食の用意が出来た。食べられそうか?」
リガルド様の手が、優しく私の背中を撫でてくれた。手・・・あったかい・・・。
「支度する」
私を抱えたまま、リガルド様はゆっくりと起き上がった。私の目を揶揄うように見つめて・・・ちゅっと唇を重ねた・・・!!。
「おはよう。ゆっくり休めたか?」
ドアの前で待っててくれた、シグルズさんが笑顔で声を掛けてくれる。うう・・・お待たせしました!
「・・・おはようございます。すみません、昨日・・・話の途中で眠っちゃって・・・」
「良いよ、大丈夫だ。朝食の後に、族長に合わせるが・・・大丈夫か?」
「あ、はい!大丈夫です!お腹空いちゃってて、ご飯嬉しいです!!」
族長さんに会うのは緊張するけど・・・先ずはご飯が楽しみだ。なんか、この世界に来てから食事が不規則になってるんだよね・・・3食ちゃんと食べて、+おやつを食べたい。
広い廊下を歩いて行く。昨日は夜だったからか、シグルズさん達以外のエルフに出会わなかった。
今日は廊下を歩くときに、何人かとすれ違った。皆さん、私を興味深そうに見てから・・・私の後ろを見て、ビクッとしている・・・。
「エルフ族と魔族・・・魔王様って、交流ない感じですか?」
前を歩くシグルズさんに、こそっと聞いてみた。振りむいたシグルズさんが、微妙な顔で笑っている。
「エルフ族は自給自足で暮らしているから・・・多種族との交流はほとんどない。魔族を見たのは・・・たぶん皆、初めてだろうな」
「あっ・・・そうなんですね~」
そりゃ、リガルド様を見たら、ビクッとなるよね?
「あ、じゃあ・・・人族も初めてですか?私はあんまり、驚かれて無いですね?」
「ぶっ・・・ごほんっ!それはな・・・」
「お前が蛹に似ているからだろう。森のエルフは、虫を見慣れているからな」
お前を見ても、違和感を感じないんだろうなだって!!また人のことを虫扱いして!!
シグルズさんの方を見ると・・・慌てて、私から背を向けた?!・・・ちょっと?!
「ほら!着いたぞ!ここで朝食をとると良い」
給仕の人に後を任せて、シグルズさんは早足で部屋を出て行ってしまった・・・。
「あの~すみません!お姉さんから見て、私って虫の蛹に見えますか?」
給仕のお姉さん達に、ちょっと聞いてみたんだけど・・・一人は困ったように笑ってて、もう一人は噴き出した後に、奥に引っ込んでしまった。
「何で・・・?そんなに虫っぽいの?リガルド様、この世界に私が着ているみたいな服って無いんですか?」
浅緑色のツナギの、お腹の部分を摘まんで見せる。リガルド様は顎を撫でながら、私をジロジロと見た。
「ふむ・・・俺が知る限りでは、初めて見る形だな。蛹以外では」
そういって、にやにやと意地悪そうに笑った。ふん!
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