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世界樹と妖精はセットだと思うの・・・。

「エルフの郷にようこそ。・・・聞こえているか?」

眉尻を下げたシグルズさんが、微妙な顔で笑っている。隣のヘイムダルさんは無表情だ。

「世界樹だああ?!エルフの郷って聞いて、もしかしてって期待してたけど!本物ってこんな感じなんだあ!!」

白い土壁の家が並ぶ、エルフの郷の中心に巨大な樹が生えていて、空に向かって枝を大きく伸ばしている。葉擦れの音がサラサラと響き、たわわに咲く白い花冠がキラキラと光を零していた。

ん・・・?樹の周りを何かが飛んでいる?目を凝らして見ると、金色の粉を撒き散らしながら飛ぶ・・・よっ!妖精しゃんが飛んでいるううう??!!!


「世界樹を知っているとは・・・まさか、世界樹を狙って・・?!」

ヘイムダルさんが剣の柄に触れるのを、シグルズさんが慌てて止めている。

「お前は世界樹を知っていたのか?」

リガルド様が、私を興味深そうに見ている。シグルズさんとヘイムダルさんも、私の返事に注目しているみたい。

「もちろんですよ!!世界樹を知らない人なんて、この世界にいるんですか?!」

「・・・基本的には秘匿されているから、人族は知らないはずなんだ。世界樹はこの世界の核だ。管理がとても難しい。太古の昔にエルフ族が神族から管理を任され、密かに守り続けているんだ」

「そうなんですか?う~ん・・・私のいた国では、物語の中に伝説の樹として、普通に書かれていましたよ?」

「いったい、どこの国の話だ?!」

シグルズさんとヘイムダルさんの表情が、厳しいものに変わっている。ああ、眉間の皺が深い!!


「え~っとお・・・」

どうしよう・・・神に異世界から転移されて来ました!なんて、正直に言ったら不味いよね?

リガルド様をちらりと見て、助け船をお願いする。上手い事、説明して欲しいです!!

リガルド様は、にやにやと意地悪な笑いを浮かべている。聞こえますか?今、貴方の頭の中に・・・直接話しかけているんですけどね?!聞こえてんでしょうが?!

「こいつは・・・神がこの世界に落とした異界の者だ」

「「「はぁ?!」」」

「・・・待て。何故、お前まで驚いている?!」

「いや!だって・・・私の最重要秘密を、ぺろっとばらすからですよ!!まだ、お二人を信用できるかの最終判断ついてないのに!!あ・・・?!」

シグルズさんの突っ込みに、思わず本音を吐露してしまった!まだ二人を信じきれてません!なんて、お互い様だけど・・・なんか失礼だよね?!

私は冷や汗を流しながら、リガルド様の胸をポカポカと叩いた。も~!!オブラートとか!誤魔化すとか!!


「・・・情報過多で、頭痛がしてきました。一先ず、お二人を族長の元に連れて行きましょう」

「そうだな・・・とりあえず、族長に丸投げすれば良いな」

信用できない云々はスルーしてくれた!私達は、族長さんに丸投げされるみたい。大丈夫かな?

「異端児とか、特異点は消さねばならないとか・・・神を語る精神異常者とか責められたらどうしよう?!」

急に怖くなってきた!真っ青になって狼狽える私を、リガルド様がギュッと抱きしめてくれた。

「心配するな。お前に手を出すようなら・・・」

最後の方は私にだけ聞こえるように、耳に囁きとして吹き込まれた。こっわ・・・?!いや、くすぐったい!!


「あ~・・・そういうのは、2人の時にやってくれ?今はわりと真剣な話の最中だから、な?」

「そうですね。出会ってから、緊張感と脱力感が交互に来て、凄く疲れます」

呆れた顔のシグルズさんとヘイムダルに促されて、一番大きな家に向かって歩いて行く。緊張するな・・・

「ううっ・・・妖精しゃんに癒されたい!・・・あれ、いない?!」

世界樹を見上げて、妖精しゃんを探すけれど・・・どこにもいない!何で?!

「妖精とは何だ?」

「あ、えっと・・・さっき、この世界樹の周りを飛んでましたよね?金色の粉を飛ばしながら・・・」

「ああ、あれが見たかったのか?」

シグルズさんがひょいっとジャンプして、空中で何かを掴んだ。私に近づいてきて、掴んだものを見せてくれた。


金虫こんちゅうだ。お前の国では、妖精と呼ぶのか?」

「ひっ?!」

それは妖精しゃんでも、何でもなかった!金色に光る、ソフトボール位の丸い虫だったよ?!!

「羽の中に金粉が仕舞われていて、飛ぶときに撒き散らしていくのですが、特に害は無い虫ですよ」

ヘイムダルさんが教えてくれる。妖精しゃんじゃなかった、衝撃が凄い・・・抉られるな~

「あ、わかった!世界樹を守る、特別なお仕事をしてる良い虫なんですね?!」

そうであってくれ!という願いを込めて!

「あ~?いや、害も無ければ、得もない虫だな。見た目は派手だが、ただの虫だ」

「うう・・・っ夢破れ・・・たあああ!」

世界樹が見れて嬉しかったけど、妖精さんがいないなんて、思いもしなかったよ・・・うわあああん!!

私はしょんぼりがっかりして、リガルド様に抱き着いた。うう・・・っ魔王様で、異世界風味を吸収だあ~!!


「・・・早く族長とやらの所に案内しろ。寝そうだ」

リガルド様に密着して、ポカポカしてきたら、なんか瞼が重くなってきたような気がする・・・。

「・・・騒いで、疲れて眠くなるとか・・・子供か?」

「成人はしているが、中身は子供だな」

ゆらゆら揺れて気持ちいいな~・・・遠くの方で聞こえる声は、何言ってんのかよくわかんないけど・・・。


「熟睡してないか?」

魔王の腕の中で、す~す~と規則正しい寝息が聞こえてくる。

(そんな風に優しく揺すられたら、赤子で無くても寝てしまうでしょうね)

ヘイムダルが声には出さず、顔に書いて言った。

「煩いぞ」魔王が声を潜めて言った。腕の中の女を気遣っての事なのか、シグルズとヘイムダルは顔を見合わせて、肩を竦めた。今目の前にいる魔王は、噂とはずいぶん違うなと・・・


ホノカは少しはしゃぎすぎて、疲れたようです。

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