夜の森にて・・・追跡者
リガルド様にお姫様抱っこされたまま、森の中を歩いて行く。今夜は月が無いから、辺りは真っ暗だ。
「すみません・・・私が森の中を、何時間も走り回ったから・・・すっかり暗くなっちゃって」
土が手に入ってないけど・・・森には、また来れるよね?明るい時の方が、安全だしね。
「城には帰らずに、このままエルフ族の郷を目指す」
「え・・・?!夜の森は危なくないですか?・・・前、見えてます?」
「お前は俺をバカにしているのか?魔族の目には、夜の闇など問題ではない」
へ、へえ~・・・夜目が利くのすごいですね。あ・・・良く見たら、赤い目が光って・・・綺麗。
「見惚れているのか?俺の顔が好みか」
リガルド様が意地悪そうに笑って、顔を近づけてきた。あわっ?!ま、まさか・・・また?!
私は、慌てて両手で口を隠した。クックッと喉で笑ったリガルド様が、私の右手の甲にチュッと口づけた。
口づけられた所が熱い・・・。リガルド様の魔力に触れて、従属の紋が仄かに赤く光った。
「むう・・・これ、取ってください」
「駄目だ。この紋があれば、何処にいてもお前を見つけられる。迷子になっても便利だっただろう?」
「そりゃ・・・見つけてくれて・・・助かりましたけどっ」
私に確認もしないで、勝手に刻まれたのが・・・なんか嫌だ。悲しいし・・・なんか、嫌だ。
「・・・従属と言ったが、その紋は特別製だ」
リガルド様が前を向いたまま言った。特別って、クマちゃんズとは何か違うの?
「どんなふうに、特別なんですが?」
「・・・・・・・・・」
「教えてくださいよ!」
「その紋は俺と直接繋がっているから、便利だ。詳細はそのうちな」
む~!説明が簡単すぎて、わかんないんですけど?!
頬を膨らませてリガルド様を睨んだけど、ふっと鼻で笑われただけだった!!
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郷の近くに張った罠に、反応があった。急いで確認に向かったが、既に破られた後だった。
「デカい鳥でも、引っかかったか?」
「そんなわけないでしょう。蔓の網には魔法が効きませんし、並みの生き物では切れないはずです」
「だから、デカい鳥なんだろうが。もしくは、トビザル?」
魔法を使う魔物なら、蔓がきつく絡んで抜けられないはずだ。物理で引きちぎる事は出来るだろうが、まあ、かなりの怪力でないと難しい。
「なぜ、答えがわかっているのに、ふざけて問題を先延ばしにするんですか?草に踏み跡が残ってるでしょう!」
頭の固い副隊長殿が、俺を睨んでくる。そんなのは決まっている、追跡するのが面倒だからだ!
「顔に全部、書いてあるんですけど・・・族長に言いつけますよ?エルフ族長付き近衛隊長殿?」
か~・・・俺、大嫌いなんだよね。その長たらしい役職名!は~自由になりたい。
「辞めちゃおうかな」
「・・・・・・・・」
「無言で睨むのやめて。地味にじわじわ削られるわ」
はあ~・・・俺は足元に落ちていた、蔓の切れ端を掴んで立ち上がった。綺麗な断面だ。
「かなり切れ味の鋭い、武器を持っているようですね。」
「切り口に魔力を感じない。物理的に切断したんだな。オリハルコンの剣とかか?」
「そんなもの所持しているのは、各国でも王か最側近くらいでしょう」
「王か・・・」
ここの罠はエルフの郷に最も近い場所だ。ここが破られたとなると、急いで戻らないと駄目だよな。
「はあ~また走るのか。面倒い。お前、痕跡を辿って先に・・・」
「行きますよ!」
「おい、襟を引っ張るな!締まるって!!」
副隊長に襟首を引かれ、侵入者を追いかける。ご丁寧に痕跡を残してくれてるから、見つけるのは簡単だ。
俺達は容易く、侵入者に追いついた。背が高く、全体的に黒い男が緑色の蛹・・・いや、人族の女を抱えて歩いている。
「蛹?」
「ぶっ・・・」
隣から聞こえた呟きに、思わず吹き出したじゃねえか。やべっ男が振り向いて、俺達を見ている・・・魔族だ。
エヴァンゲリオン終わっちゃいましたね。無自覚にリガルド様のセリフに「問題ない」と打っていて、慌てて消しました^^;
ブックマーク、評価ありがとうございます!頑張ります!