蜂蜜甘いな、はひふへほ。
「リガルド様が変なことするから、肝心な話ができなかったです!」
頬を膨らませて怒る私を、リガルド様が笑って見ている。ぜんぜん話が進まないから、午後のお茶を飲みながら話すことにした。フレンチトーストも出した。シンプルに蜂蜜とバターだけのものだ。美味しい!
「もう笑っているのか?お前の顔は忙しいな」
「放っておいて下さい。ああっ!そんなに早く食べないで?!味わってますか?!」
「ん」
おかわりを寄こせと、手を出さないでください・・・・これ、断ったらどうなるのかな?
「痛い目をみるだろうな」
「・・・どうぞ」
おかわりのフレンチトーストは、さっきよりは!ゆっくり食べてくれてる。うう・・・うん、癒される味!
「この黄金色のどろどろしたのは何だ?とても甘いな」
「どろどろと・・・これは蜂蜜といって、蜂という虫が集めた花の蜜です」
「蜂蜜・・・虫がか?」
眉間に皺を寄せ、何かを考えているリガルド様。じっとしていると、綺麗でかっこいいのにな・・・。
「その蜂の見た目はどうだ?」
「えっと、羽があって、黄色と黒の縞々柄の体。滅多なことでは攻撃してこないですけど、お尻の針で刺されることもあるみたいです。巣の中に蜂蜜を溜めて、女王蜂のために働きまくる軍勢がいたりして」
「なかなか興味深いな・・・作ってみるか?」
「え・・・作るって蜂をですか?どうやって?」
「既存の生物を掛け合わせて、望む形に持っていけばいい。お前もそうだろう」
「は?」
私もそうだろうって、どういう意味だろうか?全然わかんないんですけど。
「とぼけているのか?それとも自覚がないのか」
リガルド様が、指についた蜂蜜をべろりと舐めとる。お行儀悪いですよ!目に毒だし・・・。
「まあいい。そのうちに自覚するだろう。この辺りに生物はもういないからな、エルフの森を攻めるか」
「え?!エルフ?!いるんですか?!会いたいです!!」
もう、どこまでも荒廃した世界に落とされたと思っていたのに・・・王道ファンタジーの住人がいらっしゃる?!
「教えてください。この世界の種族を全て!!」
期待に胸が膨らむ。私は思わず、リガルド様に詰め寄った。
「・・・魔族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、人族がそれぞれ、国を興している」
「ふおお!!凄い!いろんな種族の国に行ってみたい!家畜はどうですか?お肉・・・ミルクとかはありますか?」
「煩い。卓を揺らすな・・・もう他の種族に浮気か?」
言い方!!深緋色の目が細まって、私をじろりと睨みつける。顎クイはやめてください!!
「う、浮気とかじゃないですよ・・・私の星には人族しかいないから・・・珍しくて興味があります」
「言い訳か?お前は俺の玩具だろうが」
わ~!!そういう雰囲気出すのもやめて!!話が全然進まなくなっちゃうから!
「私が今一番、興味があるのは・・・リガルド様ですから!他は機会があったら、行ってみたいなって」
わああああっ!何言ってんの私?!私が今一番、興味があるのは、畑でしょうがあ!!
「まあいい。あまり揺さぶると狂いそうだしな。お前が欲しいのは畑か?」
「すう~はぁ~(深呼吸)そうです、畑が欲しいんです。野菜を育てたくて」
やっと本題に辿り着けたよ!長かった・・・!
「リガルド様の城の空き地で、畑を耕しても良いですか?」
先ずは場所を確保しないとね。
「城の敷地もそうだが、ここらの土地は魔法で汚染されたからな、暫くは使い物にならないだろう」
「え・・・汚染ですか?暫くって、どのくらい先まででしょうか?」
「少し前、愚かな人族が大規模な攻撃魔法を仕掛けてきてな。扱いきれずに周辺の魔物を巻き込んで、自爆した。そいつらの死骸が土地に焼き付き、浸みこんでいる。そこで育ったものを、お前は口にできるか?」
む!無理!!何でもない顔で、とんでもない話をさらっとされた!!
「せ、1000年くらい経てば・・・食べられるかも?」
リガルド様は私の反応を見て、ふっと笑った。目の色が意地悪色だ。
「エルフの郷にある森の土を貰えばいい。肥沃な土は作物がよく育つだろう。そこで蜂の材料も探せばいい」
あ、蜂蜜に戻るんですね・・・忘れてなかったんだあ。けっこう、食い意地張ってるよね?
「?!いひゃいれす!」
「お前の口も頭の中も、よく喋る。千切り取ってやろうか?」
やっやめて!私のほっぺたが、ぐいぐい伸ばされて痛い!痛いことしないって言ったのに!・・・こうなったら、こっちだって!!
怒った私は、リガルド様の両ほっぺたを掴んで、左右に引っ張ってやった!!
「ほお?くくくっ・・・命知らずか。お前は本当に面白いな?」
「ひあっ!!」
条件は同じはずなのに、リガルド様は全然ダメージ受けていない!痛た・・・ああまた!
リガルド様が顔を寄せて、私を見据えた。深緋色の目に飲み込まれそう!怖くなった私は、リガルド様のほっぺたから手を放そうとしたんだけど、リガルド様に指を齧られた!!ぎゃああ!!
「も、もう・・・なん!何でそういうことばっかり、するんですかああああ!!!!」
私は空いている方の手で、リガルド様の胸をポカポカと叩いた。
「はっ俺は食い意地が張っているらしいからな。目の前にいたら、何でも食いたくなるだろう?」
「~~っ!!!!」
体が熱くなって、言葉が出なくて・・・私は声を上げて笑うリガルド様を、気が済むまでポカポカ叩き続けたのだった・・・。
私の目指す先と、別方向を向いて進む魔王リガルド………操縦できるか、不安であります。
面白いと思ったら、ブックマークと評価頂けたら嬉しいです!
よろしくおねがいいたします。