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落ち着いて考えてみよう・・・うう

ああ・・・地球が・・・!魔王様に征服されてしまう!!

「うあああ?!」

叫びながら飛び起きた。はぁはぁと呼吸が荒く乱れる。固く握りしめた手には、柔らかなシーツが握りこまれていた。汗で髪が張り付いて気持ちが悪い・・・。ぼんやりとした意識がはっきりしてきた・・・ここは・・・?

薄暗い部屋の中、マントルピースの上に置かれた小さなランプが唯一の光源だ。正直、暗くて怖い。


「光よ・・・“照らせ”!」

バレーボールくらいの大きさの光球を出して、部屋を照らす。私は大きなベッドの上で寝ていたらしい。

後頭部が少しズキズキする・・・たしか・・・あの時・・・城の料理人がいないか尋ねて・・・

『使えない奴ばかりでな・・・ちょうど片づけたばかりだ』

『片づけ・・・?!おわっ・・・!』

「っ・・・?!思い出した・・・衝撃的なお言葉に、驚いて転げ落ちたんだわ・・・」


はは・・・と乾いた笑いが出た。まじか~・・・仰向けに倒れれば、ベッドが軋む音が悲鳴みたいに響いた。

ぎゅっと瞼を閉じる。この世界に来て、初めて出会ったのが黒ちゃんで・・・その次に魔王様に出会って・・・

でも黒ちゃんは魔王様と同じだから・・・一番最初に出会ったのは、リガルド様になるんだよね・・・。


怖いけど、美しくて・・・美味しいもの食べたさに、地球を攻め落とそうと考える・・・ううっ・・・

私、神に仲間が欲しいって言わなかったっけ??『1人で良いから・・・絶対に私を裏切らない人が欲しい。権力に巻き込まれたくないから、いろいろ煩わしいことを無視できる、メンタルが強い人だと、なお良し!!』

「いろいろ煩わしいことを無視できる・・・メンタルが強い人。いやいや、まさかね・・・はは」


私は神に自分だけの物語を生きてみたいと、命を燃やして一生懸命生きてみたいと願ったはずだ・・・。

地球での最後も、この世界での始まりも、まだ自分の力では何もできていない。

誰かの物語の本流に流されているだけだ・・・抜け出さなきゃ。魔王様と・・・リガルド様とちゃんと話してみたい。

「謁見が許されるなら・・・だけどお?!うわっ!吃驚したぁ?!」

目を開くと、黒ちゃんがじっと私の顔を見下ろしていて・・・凄く、吃驚したよ!!

「・・・黒ちゃん・・・」

黒ちゃんを両手で掴んで抱きしめる。その勢いのまま上半身を起こして、ベッドに座った。


「黒ちゃん・・・リガルド様に会えるかな?」

赤い目をじっと見つめる。黒ちゃんの大きな目にはくたびれて、髪がぼさぼさの私が映っていた。

「あ~・・・こんななりじゃ、失礼だよね?このお城って・・・お風呂とか貸してもらえるかな?」

倒れた時に放り出されず、ベッドまで貸してくれたし・・・怯えなくても・・・大丈夫なのかな?

黒ちゃんが赤い目を細めた。リガルド様と同じ癖だね・・・あ!黒ちゃんて、リガルド様だっけ?!

慌てて、黒ちゃんを解放した。うわ・・・これも伝わってるのかな・・・?恥ずかしっっ


黒ちゃんが部屋の中を飛んで行くと、一つの扉にコンコンと軽くぶつかった。

「あ・・・お風呂だ。使ってもいい・・・ですか?」

黒ちゃんが縦に一度、体を振った。良いですか・・・お借りしますね。


猫足のバスタブは大きめで、気を付けないと溺れそうだったけど、温かいお湯はほっとして気持ちも体も解してくれた。

リカルド様にどう話したら良いのかな?できるだけ対等に・・・は無理かな。

一時的でも良いからこの世界に慣れるための知識と・・・出来たら部屋を一つ、暫くの間だけ貸して欲しい。

私が交換条件で出せるもの・・・異世界の知識と、この世界に無い・・・食べ物?

う~ん・・・直接聞いた方が早いかな。黒ちゃんを待たせすぎるのも悪いし・・・とりあえず上がろうか。


バスタブを出て、仕切りの布をよけて・・・ハタと気づく。着替えとタオル!!用意してなかったぁ!!

私の鞄は寝ているときは持っていなかったよね?どこにあるのかな?!焦って、布越しにバスルームを見回した。

「あ・・・あれ・・・タオルが置いてある?!私の鞄も・・・」

扉から入ってすぐのキャビネットの上に、タオルと私の鞄が置かれていた。もしかして黒ちゃんが置いてくれたのかな?途端に、黒ちゃん=リガルド様だということを思い出して、顔が熱くなる・・・ひえぇ~!!



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