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詩のようなものたち

シャッフル・デイ

作者: 暮 勇

 あれは、炬燵の中での出来事だったか

 視界一杯に舞い散る花弁が鮮やかで

 恐ろしくなるような、底抜けに高い青空の下

 さくさく足音を立てて、葉の崩れる音を聞いた

 東から昇った日差しを浴びつつ

 団地の2階から見た風景は

 手前の庭の子供らが、雪塊をかき集め

 奥では、桃色に染まる彼方の山々があり

 その更に向こうの浜で、波に揉まれる人々が

 腹に染みる、秋刀魚の焼ける香りを嗅いで

 ヘッドライトは暗闇を照らす

 だらりと提げた右手で光る

 スマホの液晶ががなり立てる

 誰にも看取られず、孤独に死んだ祖母のこと

 先輩に2人目の女の子ができたこと

 エアコンが壊れたこと

 従兄弟が運動会で、転んで足を擦り剥いたこと

 あれから何年経ったのか

 季節は何度、巡ったのか

 スキーに行ったのは

 桜を見物したのは

 沖まで泳いだのは

 松毬を拾ったのは

 夫との別れを済ませた後に

 大きくなった子の背中を送り出し

 蒸し暑い夜に2人で手を繋いで病院に行き

 紅葉の雨の中で告白を受けた

 私は1人、ベランダに立ち

 頬に触れる細い雨粒を手で拭い

 部屋で薄く光る液晶を見やる

 これからどれ程

 過ぎゆくのだろうか


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