池のボート
これが例のボートか...
僕は二人でボートに乗ることに憧れていた...
女性と一緒にボートに乗ることは、すごく楽しいだろうなと...
婚約を交わしたら、特定の公園の池で、二人乗りボートに乗らなくてはならない...
それがルール...
そしてそのボートというのが、この公園の、このボートだ...
その制度が始まってしばらく経つが、別れたカップルは半分に達していないという...
それにより初めて、乗ると別れるという都市伝説は間違っていると証明されたのだ...
彼女も楽しみだったみたいだ...
彼女はボートに乗った直後から、ヤケにはしゃぎだした...
安定感はあるが、ボートではあまり動かないで欲しい...
その揺れは、落とそうと思わない限り、起こることはないくらいの激しい揺れだった...
案の定、僕たちは池の中へと落ちていった...
冬の池の冷たさよりも何よりも、〈別れ〉という言葉が先に、僕の身体を通過していった...