五話
私の大好きなイチャラブ回です!
「はぁはぁ、はぁ…なんとか逃げ切れたぁ」
「はぁ…はぁ、う…うん…」
取り巻きの奴らはかなりしつこく追いかけてきたが、幸運にも途中の信号で引っかかったので逃げ切ることが出来た。
「ここ…どこだろう?」
詩織が周りをキョロキョロしながら聞いてきた。ここは河川敷のようなところで俺らは橋の下にいた。
「あぁ、ここら辺はうちの近くだから道わかるよ。だから大丈夫」
そう言うと詩織はホッとして胸をなで下ろした。
詩織は走ったからか前髪が後ろにいっていて、顔がバッチリ見えている。
走ったあとの汗と、上気している頬が異様に艶めかしく、俺は気づかないうちに見とれていた。
「は、はくあくん!そんなに…私ブサイクだから見ないで欲しいな~なんて…」
詩織は前髪を元に戻そうとする。
その瞬間、俺の手は詩織の腕を掴んだ。
「な、なに?どうしたの?」
詩織は不思議そうに俺を見上げてくる。
その顔は俺が変なことをしないと分かってくれているようで、自分が詩織に信頼されていることが分かる。
だからこそ、俺は誠実でなくちゃいけない。
それに、そんなことで俺は成就したくない。
「す…好きです!俺と付き合って下さい!!」
俺は詩織の目をしっかりと見ながら言った。
告白なんてしたこと無かったから、思ったことを言った。なんて言ったかもう覚えてないけど。
すると、詩織の顔がみるみる真っ赤に染っていく。
「は、はへぇ?はくあくんが…わたしのことすき?」
俺は頷く。すると詩織の目から涙が一筋零れた。
「わたし…私もはくあくんが好きです。」
こうして俺達は付き合うことになった。
ーーーーー
「今更なんだけど、俺なんかのどこが良かったんだ?ほら、前髪も長くて目見えないし、全然イケメンでもないよ?」
「そんなこと言ったら私も髪長いし、それに白鴉くんイケメンだよ!私…風が吹いたりして顔が見えた時ずっとドキドキしてたんだから…」
詩織は顔を赤くしながら恥ずかしそうに言った。その反応を見ると俺まで顔が熱くなっているのを感じる。
俺達は今、制服を着ているのにも関わらず、地面に2人肩を並べて座って話していた。
恋人になったからまたひとつ距離が縮まった。
「ひとつ、詩織と付き合えたら言おうと思ってたことがあるんだ」
「え?なぁに?」
詩織が首を傾けて俺の顔を覗き込んでくる。
あまりの可愛さに抱きしめたくなるが我慢。
俺はポケットからスマホを取り出す。
そして、Ywitterを開く。これは最近やり始めたもので、俺の仕事の担当の人が教えてくれたものだ。
俺は自分のYwitterのアカウントを見せながら第二の告白をする。
「実は俺…WhiteCrowなんだ」
「へっ?」
詩織は俺のスマホを食い入るように見ると、今度は俺の顔とスマホを交互に何度も見始めた。
「ひ、ひぇえぇええ!!きゅぅ……」
詩織は顔を真っ赤して、倒れてしまった。
もちろん倒れる瞬間に受け止めたが、寝かせるところもないので仕方なく膝枕をしてやる。
……ここまで驚くとは思わなかった。
そういう意味でも先に告白していてよかった。倒れちゃったら告白出来なかったし。
告白する前に、俺はWhiteCrowだったんだと言っていたら、俺がWhiteCrowだから付き合えたかもしれない思ってしまうだろう。
詩織はそんな性格ではないと分かっていたけど、やっぱり、そのままの俺で好きになってくれたら嬉しいと思った。
後になってこのことをを詩織に言ってみたら、そんな事思うわけないでしょ!!とすごく怒られたのはあとの話だ。
俺は目を瞑ってすぅすぅと寝息を立てている詩織を髪を優しくなでる。
顔が見えるように前髪を分けていく。綺麗な黒髪が俺の手に合わせてずっと流れていく。
綺麗だからもったいないけど…髪切ってくれたら嬉しいな…
「ん…ぅん」
お、目覚めたみたいだ。
「おはよう。詩織」
「ぅあ…はくあくん…?」
俺は寝ぼけてる詩織の頭をポンポンと撫でる。
詩織は目をしばしばさせると、どうやら完全に意識を取り戻したようで、また顔を赤くし始める。
やばい…また気絶しかねない。
俺は体を反らせてなるべく顔が見えないようにする。
そちらも横に向くのを感触で感じた。
「は、はくあくん…WhiteCrowだったんだ…」
「ああ…黙っててごめん」
「ううん…違うの」
詩織が起き上がるのを感じた。
それに合わせて俺も姿勢を直した。
すると詩織は真面目な顔で語り始めた。
「私…ずっと、WhiteCrow、白鴉くんの曲に元気をもらってたの。多分…白鴉くんがいなかったらもう、生きるのを諦めてたかもしれない。だから……あっ…」
俺は詩織を抱きしめた。
優しく頭を撫でると固まっていた詩織は体の力を抜いて身をあずけてくる。
胸に冷たい何かを感じる。俺はそれが消えるまで頭を撫で続けた。
ーーーー
「白鴉くん。ありがと、もう大丈夫」
俺は詩織を離した。
少し目元が赤くなっているのが分かる。
それを隠すように詩織は前髪を下ろしてしまった。
「そろそろ、帰ろっか!」
詩織は立ち上がって言う。
「ああ、でもその前に…俺の家に来ない?」
詩織は一時停止したかのように固まって、ギギギッと機械のように振り向いてくる。
「そ、それって…あれだよね?やっぱり恋人だもんね。私も、はくあくんなら吝かではないといいますか…あの!全然いやじゃないよ!!むしろ嬉しい…ボソッ、いや!でも、まだ早いと言いますか…なんと言いますかー…」
「ん?なんのことだ?俺はただWhiteCrowとしての仕事場とか見せてあげたいと思ってたんだけど…?」
ーーボフッ…プシュー
あ、故障した。
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