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四話

あの日から3ヶ月が過ぎた。

俺達はすっかり仲良くなり、互いに名前で呼び、タメで話せるくらいになった。


だがその間いじめは続いた。

いじめは酷いものだった。

ある日はトイレのモップを押し付けられ、机の落書きはもちろん、上靴は捨てられる。


これを一年間独りで受けていたと思うと心が苦しくなる。

俺も一緒になっていじめられたが、そのおかげで多少、詩織(黒咲さん)へのイジメを減らすことができていた。


どうにかイジメから抜け出す方法はないだろうか…


ーーキーンコーンカーンコーン

放課後になった。すると多分そろそろ…


「はくあくんいますか~?」


川島 亜美の取り巻きのひとりが大声で俺を呼ぶ。俺が呼ばれる声がするとクラスのみんなは気まずそうな顔で俯く。

…そりゃあそうだ。誰も虐められてる奴なんかに関わりたくないだろう。

俺は周りの人に周りに迷惑が掛からないように、すぐに自分の荷物を持って教室を出る。


「着いてこい」


俺は何も言わず後ろをついて歩く。

すると途中で詩織と合流した。


「今日は詩織も呼ばれたのか」

「ごめんね白鴉くん、私のせいで…」


詩織は毎回こう言って謝ってくる。


「いいや、俺がしたくてしていることだから」

「あ…ありがとう」


俺らが話しているとどうやら着いたらしい。

空き教室のようだ。


「おら!早く入れ!!」


俺らは後ろから蹴られて教室に入れられる。


「っ…大丈夫か、詩織」

「だ、だいじょうぶ」

「あら?十分お友達になれてるじゃない」


俺は声のした方を見る。

そこには足を組んで椅子に座っている川島 亜美がいた。

俺はキッと睨みつける。


「あらあら怖いじゃない睨んだりなんかして、今日はそんな貴方達に楽しいゲームを用意してあげたっていうのに」


ゲーム…?俺たちに何させるつもりだ?

川島は目を細め、口を三日月のように歪ませる。


「友情ゲ~ム~!!ゲームのルールはね~、二人でジャンケンして勝った方がこの箱から一枚紙を引く、そしてその紙に書いてあることをしてもらいま~す!アハッ」


……ちっ、鬼畜だ。

よくそんな胸くそ悪いことを考えられる。


「もちろん相談してどっちが勝つか相談してもいいよぉ?」


そうだ。これがこのゲームの一番酷いところだ。

多分…互いの性格を考えると自分が負けようとする。


「それじゃあ第一回!友情ゲームの開催で~す♪」


俺達の周りを川島の取り巻きが囲む。

これじゃあ逃げることも出来そうもない。


「取り敢えず俺が勝つから、詩織はパーを出して」

「そんなのいやっ!そしたら私グーだすもん!」

「おい!……ああ、分かった。ジャンケンしよう」


俺は詩織の裏をかけばいける。

詩織は俺がチョキを出すと考えるはずだ。

そこで俺はパーを出す。


「それじゃあいっくよ~!ジャーンケン…ポン!」


…………えっ、、


「白鴉くん、優しいから分かってたよ」


詩織が微笑みながら言う。

俺はパー、そして詩織がチョキを出していた。

つまり俺が裏をかこうとしたら鈴に裏の裏をかかれたということだ。


「ちょっ…さっきのは違う!」

「は?何言ってんの?違うわけないじゃん」

「白鴉くん、私なら大丈夫だよ」


詩織は決心した顔をし、箱から紙を1枚取り出す。

折りたたまれた紙をゆっくり開き、書いてある文字を読む。


「う…うそでしょ…」


すると詩織の目は見開かれ、膝から崩れ落ちた。


崩れ落ちた拍子に落とした紙を川島が拾った。

するとニヤニヤしながら俺に向かって歩いてくる。


「え~と~…なになに~?ジャンケンに負けた人がここに居るみんなからリンチにあう、と書いてありました~」


……そういう事か。

つまり、助けようとジャンケンに勝った人が逆に助かってしまい、助けたと思ってた人が辛い目にあうことになるのだ。


俺としては、詩織に被害がいかなかったから良かったが、詩織は…少し精神的に来るだろう。


「アハッ♪その顔が見たかったんだよぉ!!いつ見ても最っ高っ!!」


川島が天を仰いで恍惚とした表情を見せる。


「実はね~この箱の中身、全部同じことが書かれてるの!!自分が守ろうとして勝ったのに逆に自分が助かって友達が傷つくってどんな気持ちぃ!?ねぇねぇ?!!!」


詩織の方からポツリポツリと涙がこぼれ落ちる音が聞こえた。


「はくあくん…ごめんなさい…」



ーー俺は……俺は何をしているんだ…

彼女を助けるために話しかけたというのに…

結局辛い思いをさせている。

何も出来ない俺に激しい憤りを感じる。



ーーーいや…俺なら出来るはずだ。この俺だからこそ。


それをするなら覚悟を決めなくちゃいけない

だがそれがどうだって言うんだ。


俺は、黒咲 詩織を守りたい


思い立ったら俺はすぐ動いた。

何も言わず少し強引だが、倒れ込んでいる詩織の腕を掴んで立ち上がらせる。


「おいおい、何してるんだ?」


川島が訝しむように睨んでくると、取り囲んでいる奴らも警戒し始める。


俺は詩織に耳打ちする。

すると虚ろだった詩織だったが、ゆっくりと涙をふいた。

泣いていて腫れしまった目だったがそこには確かな覚悟の色が見えた。


俺はゆっくりとあるものに向かって歩き出す。


「いいやぁ…ちょっと…っね!!」


俺はそれを両手で持って、トビラの近くにいる取り巻きに思いっきり投げつけた。


投げたのはさっきまで川島が座ってた椅子だ。さすがに当たりどころが悪いと危ないので下の方を狙った。


「がはっ……」

「いってぇぇええ!!」


見事に並んでた奴らはの腹や足にぶつかり倒れ込む。

椅子を投げつけるという奇抜な行動に周りは呆然とする。


俺は詩織に目で合図を送る。

俺達は取り巻きが倒れてできた包囲の穴から逃げ出した。


「お、おい!何してる!早く追え!!」


廊下から手下達に怒鳴りつける川島の声が聞こえる。


俺達は階段を一段飛ばしで降りていく。

幸い俺も詩織も運動神経は良い方だったので、つまづくこともなく、上靴から履き替えてる時間もないのでそのまま外へ逃げる。


外の空を見ると雲ひとつない快晴だった。


読んでくださってありがとうございます。

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