とあるヒト族とエルフの王国
昔々、エルフの里に、金髪碧眼の美しい少年がいました。
仲間とともに慎ましく暮らしていた少年ですが、ある日森の中で赤ん坊を見つけました。口減らしのためかヒト族の男の子が捨てられていたのです。
「わぁ。なんて可愛い子なんだろう。こんなに可愛い子を捨ててしまうなんて、人間はなんて贅沢なんだろう」
美しい少年はそういって赤ん坊を育てることにしました。弟が欲しかったのです。少年は里で一番若く、ここ数百年間は里に子供は生まれていなかったので、寂しく思っていました。
里の仲間も赤ん坊を分け隔てなく育てることにしました。やはりよそ者はいけないのではないかと考える者もいたのですが、久しぶりの子供を見るとすぐに相好を崩したのでした。
赤ん坊は考えられないような早さで成長していき、すぐに歩くようになり、喋るようになり、里のことや自分を拾った美しい少年のことを知りたがりました。
やがて赤ん坊は美しい少年と同じくらいの背になり、ともに里から少し離れたところまで森に入って遊ぶようになりました。里人があまり里から離れたがらないことをいいことに、二人で秘密基地を作ったのです。
数年が経ち、赤ん坊は青年となりました。美しい少年は弟がすぐに成長してしまったのが残念でしたが、それ以上に赤ん坊が賢く強い男になったのがうれしくてたまりませんでした。
そんな幸せに満ちたある日、里人によって森にヒト族の群れが侵入しているのが見つけられました。ヒト族たちはひどく痩せていて、傷付いている者も少なくはありませんでした。
どうやらエルフの里がある森の近くにある国で内乱が起き、その難民が森へと逃げ延びてきたのでした。
青年はいてもたってもいられず、身一つで内乱のただなかへと駆け出しました。しかしエルフの里人たちに引き留められ、事情を言うことになりました。
「いつまでも姿が変わらない人たち、そしてすぐに成長する自分を見て、自分はよそ者なのだということを知っていました。里の外の人たちを見て、あれが自分の元いた場所なのだと分かったんです。これ以上ここにはいられません。自分はヒトに殉じることにしました」
それはほとんど自殺の言葉でした。
エルフたちは末の子供である青年の言葉に衝撃を受けました。赤ん坊であった彼を森の外へと捨ててくるべきだと言った里人が一番に言いました。
「ならば我が着いていこう!可愛い子を死なせるわけにはいかない!」
彼が赤ん坊であった自分になんと言ったのか、彼自身から聞いて知っていて、そして青年は泣きました。泣いて。泣き疲れていつの間にか眠ってしまってしまいました。
目が覚めたときには美しい少年との秘密基地にいました。
目の前には美しい少年がいて、青年を見つめています。青年はこの目で見つめられると、何も言えなくなってしまうのでした。
「死にに行くって、言ったんだってね。ボクがこんなに君を愛しく思っているのに、君はひどいやつだ」
そういって美しい少年は服を脱ぎ、子供のように震える青年の上に馬乗りになりました。
翌日、声を上げたエルフに加えて全ての里人たちが青年に着いていくと支度を整えていたのです。
エルフの魔法の力はとても強力でした。瞬く間に内乱を鎮め、ついには内乱の原因である、兄を暗殺した王弟を城ごと吹き飛ばしてしまったのでした。
そして青年は荒れきった民草をまとめ上げ、王となりました。
「ずっと君への心を隠して生きていた。でも王となった今ならもう負い目に思う必要もない」
「バカだね君って。王様になんてならなくてもボクはおっけーだよ」
王は美しい少年へ口づけをし、二人は幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
「という話がこの国には伝わっていてね。ちなみに金髪碧眼の美しい少年エルフは我が弟だよスライムくん」
「国の始祖がショタホモ趣味かよ。しかも姉弟揃って逆レイプ魔とかどうなってんだ。エルフってそういう種族なのー?」
「里から外に出るのも稀な引きこもり体質の種族。異種族との恋愛なんて遠い物語の話なの。種族の傾向としてそういうものへの憧れはあるわね。ついぞその一度だけ里から出て、それから里を拡張し続けて森を開拓しきって国を作っちゃうくらいだし」
「うわーエルフって怖い。ちなみにその後は世継ぎとか王朝とかどうしたの」
「元王の娘が生き残っていたからそちらと子を成した。夜の生活は元王の娘と我が弟が一緒に閨に入っていたって聞いたけど。貴族は軒並み潰してしまっていたからエルフの里を王都、エルフを貴族とした王国が始まったわ」
「え、ええ・・・引きこもりのくせにフリーダムな種族だなエルフは」