修行パート2は海の底
第一章 十一話
正拳突きを教えて次の日。
今日は夢を見たような気がするが
思い出せない、、、。
良くある事だが
モヤモヤするな、、、。
脳ミソをスリープモードから立ち上げ
目を閉じて
微睡み に引きずり込もうとする悪魔と
起きなさい と叱咤する天使の
葛藤シーソーゲームをしばらく楽しんで
ベッドをゴロゴロしていた僕だが
昨日、カララとスラコに正拳突きを
教えていたことを思い出し
僕はワクワク感と期待で胸を膨らませる。
さてと、起きようかな
身体を起こし
フラフラとした足取りで
代わり映えのしない寝室を出た
もう少しゴロゴロしたい気分だったが
ワクワク感が『早く行け!』と無理やり歩かせる
このワクワク感を例えるなら
お金を無限に増やせるバグを使い。
ガムテープで固定して一晩放置したまま
朝は迎えたような気分だ。
グッバイ電気代。
こんにちは、仮想世界の勝ち組生活。
けどまぁ
経験者が教えたわけではないし
約9~10時間ほどしか経っていない
上達してる方があり得ない話というもの。
過度な期待は可哀想だな、、、
ハードルは低くしてあげるか。
だけど、カララは真面目そうだし
スラコは食欲に忠実だろうだから
きっと少しは上達しているだろう!
むふふ
まぁ、上達してるか僕が判断
出来ないんだけどね、、、。
期待を胸に抱いて
いつものように
教会を出て水溜まりまで歩く。
ちなみに、今回は玉座から伸びる
粘液ロードは無かった。
引きこもり気味だったから
人目を気にせず外を歩けるのは
解放感?と言うか気持ちが良いな。
全裸で歩くのも時間の問題だろう
なんて考えながら
草原を歩きながら考え事をする
携帯電話や音楽機器が無いから
考え事しか出来ないんだけどね。
 ̄ ̄ ̄ ̄
普段の朝だったら
寝起きでトイレに行って
歯を磨いて
飲み物を飲んで、、、
など、準備が必要だが
それらが出来ないとなると
ゲームの中の主人公達と同じになった気分になり
親近感がわいてくる。
基本的に主人公は嫌いだけど
過去にプレイしたゲームの主人公に
優しくなれそうだ。
いや、待てよ
ゲームの神様は
丁寧に事情を説明してくれるし
可愛い幼なじみがいるし
綺麗でボインなお姉さんに出会うし
お姫様や幼女にも好意を寄せられる
、、、やっぱり、優しくなれそうにないな。
主人公はぶっ殺してやる
冒険者のカップルがいたら
断じて許さん
この世界に蔓延るリア充を
苦しめる方法を考えていたら
いつの間にか
水溜まりが見えてきた。
抹殺対象の事は置いといて、、、。
さて、カララ達は
頑張っているかなぁ?
楽しみだなー
能天気な僕は
わかっていなかった
いや、わかっていたが
不器用な2人だったから
認知しようとしなかった、、、。
彼等は冒険者を殺すための
『モンスター』だと言うことに、、、。
目の前に広がる光景は
生半可ではなく
僕が名前を付ける。と宣言しただけで
大喜びしていた面影なんて
一切見られない2人が映っていた。
まず、目に入ったのはカララだ。
まるで数十年間
滝の中で正拳突きをしていた格闘家の如く
どっしりと
そして鋭く正拳突きを放つカララ
その姿は僕が見ても綺麗で美しいと思えるほど
時折、規則正しく正拳突きをしていたが
ダンジョンの出入口から
魚が流れてくると
即座に反応して的確に拳を叩き込んでいた。
そして、殴られた魚は
水溜まりから少し離れた陸地に
吹き飛ばされて
どの魚もモザイクがかかるような
有り様になっていた。
勿論。全てが即死である
だが、カララも全部の魚を
仕留めている訳ではなく
何匹か水溜まりへ
無事に渡る事が出来ていた。
しかし
魚達に更なる死神の鎌が
襲いかかる。
そう、、、スラコだ。
スラコは身体の一部を外に出して
頭は水溜まりの中に入れている様な
格好をしている。
ぱっと見はとても可愛い。
カララの正拳突きで
飛ばし集めている地点に
自分の仕留めた魚の骨を吐き出して集めているようだ。
が、ここで妙な光景が目に入る!
何故だか
どの魚の骨も『何処か』が無いのだ!
頭だったり
頭と尻尾の2つに別れていたり。の
2パターンである
どんな仕留めかたをしたら
こんな状態になるのか、、、。
知りたい。
僕が水溜まりに近づき覗くと
ちょうど魚を仕留める所が見えた。
いや、違うな
仕留めた。と理解したが
見えなかった。が正しい
スラコは初めて魚取りをした日の様に
目と鼻の先まで触手を近づけ
魚が逃げる瞬間に
スラコがぶれたと思ったら
魚の頭が消えていたのだ!
全く見えない正拳突き。
いや、正拳突きと言うより
『居合い斬り』に近いものを感じた
そのくらい一瞬だったのだ
カララとスラコは
自分で考えて一晩で
今の高みまでたどり着いたのか、、、。
この子達、、なんて恐ろしい子なのッ!!
だなんて言っているが
余裕が無くなり
焦ってるのが自分でもわかる、、、。
2人は
1晩で1つの技を自分の物にした。
僕の知識チートにそこまでの量は無いのだから
全て教えようと思っても
2ヶ月もかからずに
知識チートの優位性が無くなる
もしかしたら、1ヶ月で無くなるかも知れない。
これから、数年、数十年一緒に暮らすのに
あの吸収率は危ない、、、。
何も教える事も出来ない
ダメ野郎で長い時間を過ごすのは嫌だ!
先生と呼ばれたい!
尊敬されたい!
これから、何を教えれば
時間が稼げるんだ、、、?
北斗に伝わる
一子相伝の殺人拳法か?
って、そんなもの
僕が理解出来ていないんだから
教えることが出来るかー!!
頭を抱えて悶え
今まで忍び足で近づいていたのに
草原の草の音をたててしまった!
それに気づいたが時すでに遅し。
そんな情けない格好の僕を見つけた
カララは
歓喜のオーラを纏って走り
スラコは触手を伸ばして
僕を捕獲しに来た。
2人とも
めちゃくちゃ早い。
あ、何だろう。このデジャブ感は
僕は覚悟を決めて
2人同時にタックルをくらう。
ノックバックするが
体感で数メートル飛んだ威力を
スラコが吸収してくれた
なにやらズッシリと中身が詰まった骨に成長した
カララに抱きつかれ
胸をゴリゴリと頬擦りされる
とても痛い!
肋骨もゴリゴリする!
カララは激しいが
スラコは大人しいな、、、。
いや、違う!
今は触手で包んでいるだけだが
水溜まりから
小型?中型トラックぐらいの大きさの
スラコが
『ズモモモモー!』的な効果音と共に現れた!
ズルズルと引っ張られ
巨体スラコが近づいていく、、、。
気分はB級映画にありそうな
『科学実験によって生まれた殺人生物に足を捕まれて殺される最初の犠牲者』だ。
地面に爪をたてて
必死の抵抗する気持ちがよく分かる
僕は抵抗もせずに
大きくなったスラコに
飲み込まれ
されるがまま
カララごとスライム洗濯機される。
もう、好きにしてくれー!のスタンスで
全てを受け止めよう。
ぞんぶんに好きにさせて
2人が頑張った事を
動物大好きおじさん並に誉めた。
よぉぉし!よしよしよし!
良い子ですねぇー!
よしよしよし!!
10分後。
もう満足したのか
スラコからは解放された。
カララはまだ抱き付いて
頬擦りしている。
スラコの潤滑液があるから
被害は少なくヒリヒリしないが
地味に痛い、、、。
下手くそなマッサージ師に
リンパマッサージを受けた位に痛い。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
カララも落ち着いたので
改めて、2人の頑張った成果を見せてもらった。
音を置き去りにする領域まで
達していないが
殺人級の正拳突きだと
素人の目でもわかる。
スラコの正拳突き?を陸地で見て
何となく予想してみたが
『居合い切り』より『鞭』のような気がする
いや、『抜き手』か?
ダメだ。さっぱりわからん、、、。
正拳突き発表会のあとに
スラコとカララに
食事をとるように進めた。
餡掛け刺身を食べるよう、奨めてくるスラコ
魚の骨煎餅を貪るオッサン如きカララ
基本的に僕の食事は喋らず黙々と食べる。
寂しいけれど
喋りかけられると少し不愉快になる。
今も喋らず、食べず、見てるだけ
だけど
なんだか心地良い、、、。
誰かが食べてるのを見てるのが
こんなに楽しいとは。
頬が緩むのを感じる、、、。
だが、餡掛け刺身。
お前はダメだ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「じゃぁ、今日は一番大切な防御の技を練習しようか」
この日の練習内容は防御だ!
本当は初めに練習したかったが
ただ防御の練習しただけではダメ。
持論だけど
『されたら嫌な事をして自分の有利を押し通す!』
僕の一番得意だったカードゲームにおいて
突き詰めていけば
ここにたどり着く。
防御カードばかりデッキに入れても
絶対勝てないからね。
注意
友達とゲームをする時は
ルールと空気と相手の事を考えて
エンジョイ優先でゲームをしようね!
されると、本当にイラッてくるから
話しを戻そう。
攻撃よりも防御。
防御よりも回避。
有効打は受けない
から
攻撃を受けない
から
攻撃させない
格闘技は苦手なので
自分の持論に添っていこう。
『カードゲーム持論!』(コンビニで売れない雑誌のタイトル感)
それにあたって
自分のしたいこと『攻撃』を練習
つまり、攻撃カードを選んで
その攻撃カードに合った防御カードを選ぶ
僕が『正拳突き』に合うと思って
選んだのは『回し受け』『掛け受け』『交差受け』。
なぜ格闘技の防御で知っているのかだって?
アニメの敵が使っていたからだ。
確かに、、学園系のアニメだったような、、、。
んー思い出せん
そして、防御を教えるために考えた練習法はこちら!
僕に言われるがままの結果
目の前に
生魚をくわえたカララが立っていた。
ふざけているのかって?
いいえ、とんでもない!
カララに『三種の防御』を
僕が理解してる所やイメージを教えて
正拳突きの時と
同様自分で考えて少しの時間練習させる。
えっと、絶対違うと思うが、、、。
回し受けは
相手の攻撃を受け流す。太極拳的なイメージ
掛け受けは
相手の攻撃を最低限の動きで払う。パリィのイメージ
交差受けは
上からの攻撃を腕をクロスして受ける。アニメで良く見る奴
これなら、防御の後に正拳突きや
手刀や抜き手、掌手などに繋げる事が出来るだろう。
それに、カララの無限のスタミナならば
一騎当千も夢じゃないかも、、、。
カララ1人で数千の兵隊を
千切っては投げ
攻撃を受け流しては投げて壊滅に追いやり
その後方でふんぞり返るダンジョンマスター
、、、うん、殲滅対象ですわ
っと、そんな時間になるほど妄想していたかな?
我に返り回りを見ると
カララがなんとなく理解してくれたようだ。
生魚を口に咥えて
あれでいいのだろうか?と言いたげな雰囲気で
自信なさげに立っていた。
スラコは水溜まりの魚が全滅したのか
貪欲にダンジョンの出入口に
触手を突っ込んでダンジョン外の魚を捕まえていた。
なるほど、、、。
スラコの正拳突きは
正確には『モリ突き』だったのか、、、。
まぁ
とりあえず、次の段階だ
僕はスラコを呼び寄せた
「んじゃ、次の防御の練習、、練習と言うかゲームに近いかな。ゲーム内容は『スラコはカララの咥えてる魚を奪ったら勝ち』『カララは魚を取られたら負け』どう?面白そうでしょ?」
今まで魚が相手だったのが不満だったのか
2人とも目に見えて嬉しいそうだ。
それと同時にカララが
『負け』と言う言葉を聞いて密かに燃えてる
「さ、最初はゆっくりでしてね?僕、早すぎると目に見えないからさ」
2人は頷いているが
そういえば、あのスピードで
攻撃と防御の練習をするのか、、、。
不安で不安で見てられない
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
攻撃のゴリ押しでも
何とかなるかも知れない。
無限のスタミナで奥義グルグルパンチもありだろう。
しかし!
防御は対戦ゲームでも
その人のセンスを問われる
一朝一夕で出来ないものだと僕は思う。
天才なら出来るだろうが
カララには荷が重いだろう。
真面目なカララなら
いつの日か出来るかもしれない。
すまない。
カララ、、、。
僕はまだお前達の
マスターで居たいのだ
と、思っていたのは30分前。
カララとスラコの真剣勝負と言う名のゲームは
初めの10分は僕の目に見えるスピードで
してくれていたが
時間が経つ毎にスピードがどんどん早くなった。
原因はわかっている。
スラコの食欲に
カララの負けず嫌い
魚を食べれないスラコが加速し始め
負けたくないカララがそれを阻止
また、スラコが加速して、、
の繰り返しで僕の目に見えない攻防が繰り広げられている。
2人が何をしてるかわからない。
だが、何でスラコが食べれないのかはわかる。
それを教えて
もぅ、自室に帰って現実逃避しようかな、、、。
眠くなってきた。
大きく手拍子を1つ鳴らし
「はい!ストップ!わかった事があるからちょっと集まって!」
見えなかった
スラコの触手やカララの手がピタリと止まる。
2人とも息切れしてる様子はなく
トコトコと僕の近くまで来た。
「始めて直ぐだけどアドバイスするよ。まず、スラコ。スラコは触手は2本以上だせる?」
頷くスラコ。
んーもっと早く複数の触手で練習するべきだったか。
「なら、スラコは複数の触手を動かす練習をしてね。それが終わったら色々な事を覚えていこう。カララへのアドバイスは、、全部の攻撃を捌く必要は無いからね?避けてもいいし、攻撃をされにくくするために足を使って動いてもいい。カララのやり易いようにするといいよ」
あとは、適度に休憩を取るようにと
僕は寝るから教会に帰る事を伝えて
寝に帰る事にした。
2人は付いてくると言っていたが
練習するように指示した
喋ったわけじゃないけど
何となくわかる。
スケルトン検定と
スライム検定は3級は
取れるだろう自信がある!
帰り道の途中は
2人に教える技を考える
抜き手、掌手、手刀
蹴り技も教えないとな、、、。
抜き手とかは教えるのに支障は無いが
蹴り技は足が上がるかどうか、、、。
寝る前にストレッチをしようかな。
なんて、思っても
ストレッチは『明日から頑張る病』が
発症しストレッチをすることは無く
今日は寝た。
睡魔と戦いながら
書く小説。
明日の私が気に入ればいいなぁ