放課後 ~ナナ~
午後三時の店内はゆるやかなBGMとともに時間が流れていた。
「いらっしゃい」
支給された制服がぶかぶかなほど小柄で細身の少女がナナを席へ案内する。ナナのお気に入りはカウンター席。広々とした店内は背になり見渡せないがそれがこの一人の時間をより楽しめる。
「真央ちゃん、コーヒーとチョコレートパフェ、お願いします」
と、ナナは先ほどの店員に向かって声をかける。
「はい、いつものね! マスター、ブレンドとチョコパフェでーす」
生き生きと働いている彼女を見ると人にきちんとお礼すらできない自分が情けなく感じる。それと同時に、このもやもやした恋心が自分の中で熱を帯びているのを実感する。
「はい、おまちどう」
静かな口ぶりで店主の男性はナナに注文の品を置く。
「ありがとうございます」
甘いパフェを一口食べる。コーヒーを二回ほど、息を吹きかけ冷まし唇から喉へ通す。甘いものの後のコーヒーは苦みが引き立つ。恋はパフェか、コーヒーか。少なくとも今はコーヒーのように思えた。
「はぁ……」
思わずため息がおぼれた。
「ナナちゃん、悩みごと?」
左から急に自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ひゃっ」
目線を下におろすとフルーツが模式的に書かれたシャツに濃い青色を基調としたチェック柄の上着を着た女の子がいた。
「え、だれみたいな顔はやめてほしいな」
「ごめんごめん、真央。あと、バイトお疲れ」
だぼっとした制服からは推測できないほど細い脚や体のラインが明確に見える。時間的に真央の本日のバイトは終わり。これから二人は客と店員ではなく友人である。
「何か悩みごと? 聞くよ、話」
「ありがと」
はじめはただの常連さんも気づけばこうして二人は仲良くできる友達になっていた。人づきあいがあまり得意でないナナにとっては唯一の校外の友達になっていた。
「――つまり、人生初のデートってわけか」
一通りの話を聞き終わった真央は、難しい顔をしながらナナのパフェをほおばっていた。
「そういうこと。真央の豊かな人生経験をお聞きしたいわけで。恋愛とかしてそうだし」
「ナナの胸よりは豊かじゃないけど――まとまった時間を過ごせる場所がいいと思う。買い物とか、ゲームセンターとか」
買い物といっても、可愛い雑貨なんて買ったこともないし、女性向けの雑誌を読む習慣もなく情報が全く入ってこない。洋服を買うにしてもダサいなんて言われたらどうしようと思うと、彼と二人で行くのは足取りが重い。しかし、助言をくれた以上、なんとかやってみるしかない。
「ありがとう、参考にするよ。あと、パフェ、全部食べたんだね」
てへっと笑う真央にナナは気楽に考えようかという気分になった。




