放課後 ~雪人~
トントンと軽い調子で重たいドアをノックする。
「どうぞ」
奥の方から低いトーンが響く。この声を聴くとどうもかしこまってしまう。
「失礼します」
部室棟の端。ひっそりとしたところに、写真部はある、
「おっ、ゆっくんじゃないか。お久しぶり」
声色が急に明るくなった。部屋全体を覆うかのような高い棚をかき分け、声の主のもとへ歩み寄せる。
「葉一さん、お久しぶりです」
「相変わらず、だね、ゆっくん」
茶化すように高価な黒々としたカメラを雪人の方へ向ける。高校入学時の部活動体験で写真部に一度入った時から、何かと馬が合い文芸部に入った今も、個人的な付き合いは細々と続いている。
「何か御用でもあったんじゃないですかい? 文学少年」
いつもの調子で会話を促す。何も知らないようで、すべてを見通しているような目に雪人は惹かれる。
「いや、実はですね」
昨日、真央に話した口ぶりで本屋での出会いからすべてを語った。
「いやぁ、青春だね、ゆっくんのレンズは意外と広角だね」
「広かったら苦労はしません」
相談相手を間違えたかもしれないと、今更ながらに後悔した。
「でも、わざわざ俺んところに来たのは同じ学年の子に相談するのは恥ずかしかったから、じゃないの? それって、自分で恋だって自覚してるよね」
「鋭いですね」
いつもレンズ越しにしか景色や人を見ていないのにもかかわらず鋭い指摘に新しい気付きが出てくることもある。
「デートは土曜ね、それまでになんか二人が発展するようなきっかけを準備しておくよ」
「ありがとうございます、それからデートって言わないでください、恥ずかしいんで」
口をとがらせてそう反論するも、ただのお礼だと改めて言われるのを想像すると胸が痛む。




