放課後 ~雪人~ ~ナナ~
謝りに行こうと意を決して、きっといるであろうカフェに駆けた。
『いつもあのカウンターにいるんですよ』
彼女のあの言葉通り、彼女はそこにいた。入り口で彼女を眺めていると、やけに楽しそうに誰かと話している。短い髪、背は低くここからでは彼女に隠れてよく見えない。
「やっぱ、そうだよな」
何を勘違いしていたんだ。カフェを背に、雪人は無表情になった。二人の部室のせいで、どこか独占している、そんな気持ちになっていた。土曜日だって、あれはデートでも何でもない。
――でも、そうしたい。
家に帰ると、すぐにパソコンを開き、真央にメールを打つ。グッズを見に行こうと口実をつけて、開いている日の放課後に呼び出すことにした。
つい、やってしまった。そんな取り返しのつかない思いを背に、カフェに向かう。コーヒーが洗い流してくれるはずだ。それに、真央もいる。店内が少しすいていれば多少は相談相手になってくれるはずだ。
「いらっしゃい」
「真央、いつもの。パフェ、あげるから少し話聞いてくれる?」
「いいよー、あ、マスター、ブレンドとチョコレートパフェ入りましたー」
すいている店内にBGMが鳴り響く。いつもより音量が大きい気がした。
普段より早めに、コーヒーとパフェが出された。
「今日さぁ……――」
コーヒーの液面に見える自分を見ながら、ナナは放課後のことを話す。なんであんなに怒ったんだろう。今考えると、些細なことではないか。
「ふぅん、なるほどね」
意味ありげに、真央がうなずく。有用な助言が期待できそうだと、彼女の瞳を見つめる。
『きれいだな』。彼がナナの字をほめた言葉が頭の片隅でこだました。もしかしたら、その言葉は、真央の瞳に向かっていったのではないか、とありえない憶測を立てる。
「ちょっと、きつい言い方だけど、男の子から離れた方がいいんじゃないかな? 私で予行練習でもしてみる? ……明日の夜とか」
「そう、だよね。的確な助言だよ、ありがとう」
時間が解決することもある、とどこかで聞いたことがある。ナナは前髪を横に流しながらにこりと微笑んだ。
「そういえば、予行練習って?」
「うん? 色々、だよ」
意味深な微笑みがナナには理解できなかった。




