帰宅後 ~ナナ~
今日はカフェに行く気にはなれなかった。土曜日の疲れがどっと出てきた。昨日に真央の表情もやけに頭から離れない。恋心が芽生えたもやもやとは違う種類の感情に包まれていた。
「あーもう!」
がんっと、壁をける。足の裏がひりひりと痛むだけだった。今日はやけにムシムシする。
「真央に相談しよう」
充電器からスマホを外し、メールを打つ。返信を待つ間、ゴロゴロとベッドの上で、目をつぶる。雪人の顔、真央の不思議な表情、土曜日、横目で見たカップルの雰囲気。そんなことを思っていると、スマホが鳴る。
『もしかしてもやもやするの?大丈夫!それって今、上り坂なんだよ!山登りみたいな感じ』
自分を見透かされているようで、メールの文面をかじるように読んだ。自分はただ、土曜日の件でちょっと辛い、とだけ書いた。一歩先を行っている、そんな感じがした。
「上り坂かぁ」
返信に悩んでいると、再びスマホが鳴った。
『困ったときは原点だよ』
真央の言葉は、それは真央自身に向けているように感じた。無機質な活字が泣いているように思った。
『ありがとう、真央。頑張ってみるよ。』
自分でも無責任だと思った。頑張れるのだろうか。何をどのように頑張ればいいのだろうか。
スマホを充電器に差し戻すと、ナナはそのまま寝てしまった。




