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二人の愛読書  作者: 雪川 白
10/18

帰宅後 ~雪人~

気分転換とまではいかないにしろ、いつもと違うことをしようと、葉一に連絡を取ることにした。パソコンからメールをして返事を待つ。

 通知を知らせるランプがついて、画面を見る。

「よかった」

 返信を見て安心感を覚えた。久々に、黒いバッグを持ってうすら寒い外に足を向ける。レンズで見える景色はどんなものだろうか。

 静かな公園に、彼は足を踏み込んだ。ここが待ち合わせ場所となっている。月の明かりに照らされている幻想的な噴水に思わず見とれてしまう。

「よぉ、おまちどうさま」

「あ、どうもです」

 寂しそうにたたずんでいる自販機で水を買い、園内の風景をレンズ越しに見つめる。

「しっかし、珍しいこともあるもんだな」

「たまには、夜景でも撮影に行きたくて」

 特別な場所で特別な時間を作らなくても、日常に絶景が広がっていることを、雪人は葉一から学んだ。限りある枠内にどれだけの記憶を詰め込むか。そこに写真の魅力がある。

「そういや、デートはうまくいったのか」

 そう聞かれて、思わず手がぶれる。

「ええ、たぶん」

「自信なさそうに言うなよ」

「うまくいく自信というかがなくて」

 誰でもそうだよ、と葉一はカメラをいったん下げる。

「そういう経験があるんですか」

「いや、残念ながら」

 微笑みながら、彼はまたレンズ越しの風景を見る。

「たまにはさ――」

 その声はずいぶん寂し気に響いた。

「今みたいにやらないことをすると気分が晴れるかもよ」

「そうですね」

 初めは月並みな助言だと思った。けれども、そう思って月を見上げるとだいぶ輝き、空を照らしていた。

「――じゃあ、今日はこの辺で」

 夜がだいぶ深くなってきた頃、二人は解散をすることにした。公園の前で二人は別れ、それぞれの帰路に就く。

「久々に、真央でも誘ってグッズでも見に行くか」


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