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叶わぬ願い

どうもザクロです!


ヴァラクがソーナの屋敷に来るってよっ‼ 何か起こるんかな⁉ 誰かが誰かに何か思い切って伝えるのかな⁉


最後の方擬態語が多めですが許してくださいw


それではよろしくお願いします。

 日差しが日に日に強さを増してくる正午前、ソーナはもうすぐやってくるヴァラクを玄関先で今か今かと待っていた。ソーナはヴァラクから褒められたネックレスと同じ赤いシンプルなドレスで着飾っている。


「日差しが強くって暑いけれど、今日は雲がたくさん出ているからきっとヴァラク様もそれほど辛い思いをせずにここまでやって来て下さるでしょう。ラッキーだわ」


 むっくりとした綿菓子のような雲がトイツの大地にいくつもの影を落としている。


 ヴァラク様が無事にここまでやってきますように!


 ソーナがそんな風に願っていると、しばらくして彼女の耳に馬車の車輪、馬の足音が届いてきた。玄関先に居ても立ってもいられず、ソーナは屋敷の外まで飛び出した。


「ヴァラク様ーっ‼」


 一台の馬車がソーナの目に入った瞬間、彼女は嬉しさのあまり思わずヴァラクの名を呼んでしまったが、すぐに恥ずかしそうに頬を赤く染めて手でドレスをきゅっと掴んでいた。

 ヴァラクを乗せた馬車はソーナの目の前で止まると、馬車の小窓からヴァラクが話しかけてきた。


「今日も元気そうだねソーナ。あんなに大きな声で僕の名前を呼んだのはきっとソーナが初めてだよ」


 目をそらしていたソーナだが、ヴァラクの声に引き寄せられるようにして彼の方を見つめる。


「お恥ずかしい所をお見せいたしましてごめんなさい」


 ソーナがヴァラクに謝る。ヴァラクはというと、そんなこと気に留めていないようだ。


「気にしないでソーナ。僕は嬉しいんだよ。だって君にまた会えたんだから」


 彼の天使の様な微笑みにソーナは今日も喜びを感じていた。


「外これからまだまだ暑くなっていきますので、どうぞ私の家にお入りになって。今日はヴァラク様に楽しんで頂けるように色々準備しましたのよ」


 ソーナはヴァラクを屋敷に案内した。ソーナの少し後ろを付いて屋敷を歩くヴァラクにソーナは一つ気になることを訊いた。


「ヴァラク様は今日は護衛などはいらっしゃらないのですね」


 ヴァラクは頷いた。


「外に行く時はあまり人を連れて出ないのですよ。人目に付くというのもありますし」


 ソーナは後ろを振り返りながらヴァラクに言った。


「そうですよね。ヴァラク様が護衛をつけてこられたら私の屋敷には入りきらないかもしれませんわ。それでも、二人くらいは一緒に同行させても良かったのではないですか?」


 ヴァラクはソーナの隣へ足を速めて行くと、言葉を付け足すように言った。


「私は何も危険な所へ出向いたのではありませんよ。ただ会いたい人に会いに来ただけですよ」


 それだけ言って直ぐに後ろに下がるヴァラク。ソーナは平静を装うのでいっぱいだった。


 深呼吸よ私ッ‼ ヴァラク様は優しい方なんだから、会いたい人=好きな人って考えるのは安直だわ。ここで私の想いを知られるのはまだ早い!


 それから一通り屋敷を案内し終わると二人は昼食をとった。もちろん昼食のメニューはソーナと使用人たちがあれやこれやと頭を捻って考え出した渾身の出来栄えである。ヴァラクは豪華な昼食に満足してくれたようで、終始美味しそうに食べていた。

 ソーナもヴァラクが昼食を楽しんでいることは見ていて嬉しかったが、彼が時折見せる悲し気な表情にも気づいていた。


「いかがでしたが? 私の使用人も料理が上手でしょう」


 出された料理を全て綺麗に食べて口をナプキンで拭っているヴァラクに訊くソーナ。ナプキンを置くとお腹をすりすりしながらヴァラクは少しきつそうだった。


「えぇ、とても美味しかった。ついつい全部食べてしまいましたよ。おかげで今日の夕食は必要ないでしょうね」


「え、夕食はお食べにならないのですか?」


 ヴァラクの何倍もの量を食べたソーナだったが、今日は彼を気にして少し量を減らしていた。ヴァラクには夕食は必要ないのかもしれないがきっとソーナはいつもより多く食べるだろう。


「もちろんですよ。こんなに食べたのは久しぶりですよ」


「わ、私もこんなに食べたのは久しぶりですわ! 確かに夕食が無くても問題ありませんよね。アハハ」


 ついヴァラクに合わせて答えてしまったソーナ。彼女の後ろについていた使用人はその言葉が虚言であることを見透かしているようだった。


「ヴァラク様、私の自慢のテラスがありますの。是非そちらでお話しませんか?」


 ソーナの言葉に賛成するヴァラク。


「いいですね。時間の許す限り、楽しみましょう」


 そう言ってにこやかに笑うヴァラクだったが、ソーナにはやはりヴァラクに何か悩んでいる事がありそうな気がしていた。

 結果的に言えばソーナの予想は当たっていたのだが、ヴァラクが抱えていた物は彼女には大きすぎた。


――――――・・・――――――

 

 二人がテラスに出た頃には空もまだ雲間から青空が見え隠れしていたが、今はもう全く見えなくなってしまい、分厚い雲が二人の頭上に絨毯の様に広がってる。

 天候の移り変わりのせいか、ヴァラクの表情も辛そうな場面が増えていた。ソーナはなるべく触れない様にと思っていたが、気になって仕方ない。


「あのぅ、ヴァラク様」


 ソーナは自分にできる事があるかもしれないと、思い切ってヴァラクに訊くことにした。


「ヴァラク様は何か気になっている事があるのですか? それとも悩んでいる事があるのですか?」


 ヴァラクはソーナの質問に何故わかったんだろうと驚き目を見開いていたが、やがて小さく呼吸をするとソーナに話をした。


「ソーナは目が良いですね。私は今日を心から楽しみにしていたんだ。だから、ソーナに迷惑をかけるつもりは無いし、人に話すべきことでも無い…… だけど――」


 ヴァラクが言葉に詰まる。ソーナは彼が話し始めるまで少し待った。生ぬるい風が二人のいるテラスを通り過ぎる。

 ヴァラクは椅子に深く座り身を任せると、途切れ途切れに話し始めた。


「だけど、ソーナに聞いてもらえたら少しは楽になれるのかな… 僕はね、このトイツ王国を誰よりも愛している。国王がこの国を建ててからここに住む者はみな幸せだと言ってくれている。私もこの国がずっと繁栄し平和であって欲しいと願う者の一人だ。だけど、このままではこのトイツ王国の繁栄は長くは続かないでしょう。何故なら私の兄たちに問題があるからです」


 悲しんでいるのか起こっているのか、様々な想いを語るヴァラクを真剣に聴くソーナ。


「ヴァラク様の兄上様とおっしゃいますと、シンズ様とノヴァシス様の事ですか?」


「そうだね。シンズ兄さんは病弱で殆ど国政には関与していないんだよ。普通は長男であるシンズ兄さんが次期国王になるのだけれど、兄さんは国王になることを辞退すると言ってるんだ」


「確かにシンズ様のお姿はめったに見られないですがお身体があまり強くなかったのですね。それが理由で辞退なさると…」


 ソーナは自分が知っていい事なのかためらったが、ヴァラクの気持ちが楽になるのならばと覚悟を決めたのだった。


「という事は、次男のノヴァシス様が次期国王になるという事なんですね」


 ソーナの言葉に頷くヴァラクであったが、その顔つきは先ほどよりも暗くなっていた。


「ああ、そうだね。でもそれが一番この国にとっては危険な事なんだ」


 語尾を強めるヴァラク。優しく組まれていた指はいつの間にか固く握りしめていた。


「危険?」


ソーナは聞き返す。


「ノヴァ兄さんは一言で言えば戦争狂なんだよ。彼もまたトイツ王国の繁栄を望んではいるが、そのために力で他を侵略しようと考えている。暴力の支配は憎しみしか生まない。これまで世界中で何度も繰り返されてきたというのにその教訓を全く理解していないんだよ」


「そうなんですね」


 ソーナはヴァラクの為に力になりたいと思っていたが、その考えは甘かった。彼女はヴァラクの言葉を聞くだけで、ヴァラクに何と言っていいか思いつかなかった。いいや、思いつかないというよりは分からないと言うべきである。

 きっとヴァラクはシンズやノヴァシスと何度も話をしたはずだろう。それでも変える事の出来ない現実に未だ抗い続けているのだ。

 ヴァラクは最後に自らの望む願いをソーナに伝えた。


「私はこの国の為に国王になりたい。しかしその願いが叶う事は無いだろう。私が兄弟の中で三番目だから… ただ私が一番に生まれていたらと思うといつも心が締め付けられるんだ」


 ソーナは返す言葉もなく静かに聴いていた。トイツの中心にそびえ立つこの国の王城を辛そうに眺めるヴァラク。それから、弱弱しい笑みを浮かべながらヴァラクはソーナに別れの挨拶をした。


「今日は耳に痛い話を聞かせてしまってすまなかったね。なんだか雨が降りそうだ。僕はそろそろ行くよ。今日は楽しいひと時をありがとう」


 ヴァラク様、あなたは本当に楽しかったのですか? 純粋に楽しんで頂けたのですか? ずっと、一人で戦い続けて、凄く苦しいはずなのに。どうしてそんなに優しいのですかっ‼


 ソーナは気づかないうちに涙が流れていた。席を立ってテラスを後にするヴァラクの背中はぼやけて揺らいでいた。


「ヴァラク様」


 後ろから聞こえたソーナの声に振り返るヴァラクは、彼女の頬に流れる雫を見た。ヴァラクを真っ直ぐに見つめ、流れる涙を拭こうともせずにソーナは話した。


「私には何も出来ないかもしれません。だけど、ヴァラク様は一人じゃないのですよ! 私がいます! 苦しくなったらいつでもここに来てください。また昼食を一緒に食べましょう!」


 ソーナの言葉を聴いて少し表情が明るくなったヴァラク。


「ありがとう。ソーナ」


 ヴァラクはそれだけ言うとソーナの屋敷を後にした。ソーナは自分の無力さを痛いほどに感じていた。思いを寄せる相手が苦しんでいるのに、辛い表情を浮かべているのに、それを晴らすことが出来ない自分に怒りが込み上げてきた。


 絨毯の雲が光を遮り、大地は薄暗くなり始めていた。ヴァラクの姿が見えなくなってもずっと玄関の前に立ちすくんでいたソーナだったが、やがてポツポツと雨が降り始めてくると彼女のもとにやってきた使用人と共に中へ戻った。

 その雨は小一時間ほどで止み夕日がきらきらと濡れた木々を照らしていたが、ソーナの胸はもやもやと渦巻いていた。

 

最後まで読んで頂いてありがとうございました‼


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