月明かりのパーティ
どうもザクロです!
ヴァラク主催のパーティに行くことを約束したソーナですが、ちゃんとパーティには行けたのでしょうか?気になりますね。
私は自分主催のパーティなんて全く想像できませんが、もし開くとしたらやっぱり余興はだいじですよねw多分そこに一番金をかけそうですw
それではよろしくお願いします。
あの夜、ソーナとヴァラクが出会ってから早くも二週間が経とうとしていた。ソーナはヴァラクの家を出てからというもの、彼から届くはずの招待状を今か今かと首を長くして待ってる。
寝ても覚めても彼の事しか頭にないソーナ。普段、手紙の類は使用人が受け取るのだが、それでは私が一番最初に受け取れないと言って、最近は何かが屋敷に届くたびにソーナ自ら出向いていた。
しかし、時が経てば経つほどに、受け取った郵便物の中にヴァラクからの招待状が入っていないと、ソーナはガックリとした表情を見せて、受け取った郵便を使用人に渡すのだった。
「ヴァラク様からの招待状はいつ届くのかしら…」
…………はぁ。
ついため息を漏らすソーナ。
それから更に、一週間が過ぎた。ソーナは午後から両親の暮らす家に里帰りをする日だった。ちなみに今朝一番に届いた郵便の中にもヴァラクからの物は無かった。
「それでは二、三日の間、屋敷を任せましたよ。家を空ける度に私が帰ってくると大変散らかっているわよね? 今回こそはそういった事が無いように。気を引き締めて家事にいそしんで下さい。分かりましたか?」
申し訳ありません、ご主人様。
そう言って頭を下げる使用人達を見て、少しきつく言い過ぎたかなとソーナ。
「それでは、行ってきますね」
そう言って、ソーナを乗せた馬車が動き始める。
結局ヴァラク様からの招待状はまだ届きませんわ。せめて実家に帰る前にはと思っていたのだけれど。お父様お母様に会うのはやっぱり気が乗らないわね。
ソーナが実家に帰るのに気乗りしない理由。それは簡潔に言うと、家を継がないからである。
ソーナ達の暮らすトイツ大国の主な産業は農業。その中でも大国一の大農家がソーナの家が代々営んでいる―ルクシュ農場―である。
ソーナの両親は出来れば家を継いで欲しいと願っているが、ソーナ本人は自由に生きていきたいと言って家を出たのであった。それから時たま実家に顔を出すソーナだが、両親に会うのは気が乗らない。 ソーナは自分の道を選んだ。けれども両親の想いも知らないわけではないので、罪悪感というものが彼女をそう思わせてしまうのだろう。
馬車の中で悶々とした表情を浮かべるソーナ。そんな彼女に後ろから一人の使用人が大声をあげて声をかけてきた。
「ソーナ様ーーーっ‼‼!」
何事かと思って馬車を一度止めるソーナ。馬車を降りたソーナに走ってくる使用人の手には封筒らしきものが握られていた。
「一体どうしたの? …………まさかっ⁉」
使用人の行動が理解できていなかったソーナだが、ソーナに追い付いた使用人から渡された物を手に取ってその意味を理解した。
「まさか、ヴァラク様からの…………招待状⁉」
急いで封筒を開けるソーナ。中に入っている物をみたソーナは、それを胸に優しくあてると目に涙を浮かべるのだった。
「やっと、やっと届いたのね」
呼吸を整えた使用人も嬉しそうにソーナを見つめている。ソーナは涙を拭くと、改めてヴァラクからの招待状と一緒に送られてきた手紙を読んだ。
「ごきげんようソーナ。元気にしているかい? ソーナとの出会いは不思議なものだったね。だからこそ僕は君にあの時運命を感じたんだ。パーティはカーニバルの日、夕方から僕の家で。美味しい料理でおもてなしするから楽しみにしておいて。待っているよソーナ。ヴァラクより」
ニヤニヤが止まらないソーナに使用人が声をかける。
「ソーナ様‼ 招待状が届いてよかったですね!」
頷くソーナ。
「ええ! これでまたヴァラク様に会えますわ」
「それではソーナ様、本日城下の方はカーニバルが行われておりますので、通る際にはくれぐれもお気をつけて」
使用人の忠告に頷くソーナ。
「忠告ありがとう。今日はカーニバルの日だったわね。ヴァラク様の事ですっかり忘れていた――――」
ソーナはそこまで言うと、額に冷汗が浮かんでいた。それから、ヴァラクの手紙を読み返しながら使用人に訊いた。
「あなた今、今日がカーニバルの日って言った?」
「はい! 今日はカーニバルの日ですよ! あ、それともう一つ、配達してきた男が言ってましたよ。私が病に倒れてて配達するのが遅くなった。申し訳ありませんって。その男じゃなかったらもっと早くヴァラク様からの招待状が届いていましたのに…」
ソーナは手紙に書いてあるパーティの開催日が今日であることに驚愕していた。
「ヴァラク様のパーティって今日ですわっ‼‼」
ソーナの大きな声に驚く使用人。
「それは本当ですか⁉」
「ええ、手紙に書いてあるもの! カーニバルの日って!」
ソーナも大分混乱しているが、それは使用人も同じだった。
「どどどどどうしましょう! ソーナ様、今日はご実家に帰らなくては――」
「それはキャンセルよ! 私はヴァラク様を取ります!」
「決めるの早っ!」
即決するソーナにまたしても驚く使用人。
「パーティが始まるのは今日の夕方よ。後どのくらい時間がありますの?」
「ええとですね、あって3時間程かと…」
恐る恐る答える使用人。なぜ使用人が恐れているのかといえば、ソーナはパーティなどの支度が異様に時間がかかるからである。今回はそのパーティがソーナの想い人という事もあっていつも以上に時間がかかるのは目に見えているので、当然3時間では足りないのである。
分かっていたことだが、ソーナはこう言うのであった。
「それじゃ足りないっ‼」
――――――・・・――――――
ソーナが実家に帰るのをキャンセルして、身支度を終える頃には既に日は遠く彼方に沈んでおり空には一番星が早くも煌めいていた。
急いで馬車に乗り込むソーナ。
「ヴァラク様のお屋敷まで出して頂戴。急いでっ‼」
今から言って間に合うかどうかは分かりませんわ。それでも、ヴァラク様に私は会いたいのっ!
ソーナの想いとは裏腹に、彼女がヴァラクの屋敷へ着いた頃にはパーティの楽し気な声は一つも聞こえず。屋敷の明かりさえも少ないものとなっていた。
ソーナは間に合わなかったのである。ずっと心待ちにしていたこの瞬間に。
門の前で崩れ落ちるソーナ。馬車の操者も気の毒そうな顔をしている。
「…………ヴァラク様」
涙を流しながらソーナは一言彼の名前を呼んだのであった。
「やっと、来てくれましたね。ソーナ」
聞こえるはずのない声。始めソーナは私の幻聴が聞こえたのだと思った。けれどそうではなかった。ソーナが聞きたかった声。ソーナが求めていた人がそこにいたのだ。
「さぁ、中へ入って。少し遅いですが二人でパーティの続きをやりましょう」
ソーナの涙は拭いても拭いても止まる事は無かった。その代わりソーナは優しく微笑んでヴァラクの前に立つのであった。
「はい。ヴァラク様」
二人の真上には沢山の星々が降り注いでいた。その時の光は星たちと、頼りない屋敷の明かりだけであったが、ソーナは確かにヴァラクを感じていた。美しく、優しく、包み込む彼の声を感じていた。
それから二人はヴァラクの屋敷に入ると、先ほどまで大勢の人がいたであろう大広間に向かった。丸い机に蝋燭の明かり、それから椅子が二つ用意され、いささか二人には広すぎる会場であった。
そわそわしてしまうソーナだが、彼女を一番驚かせたのは何と言っても、出来立ての料理がこれでもかと登場してきたことだった。
驚いているソーナに種明かしを始めるヴァラク。
「ソーナの分はとっておいたんだよ。きっと君なら来てくれると思ってね」
蝋燭越しに見えるヴァラクの笑顔もいいものだなとソーナは思った。
薄暗い部屋にヴァラク様と二人だなんて、よくよく考えてみれば何この展開っ‼
いいのかしら! 私がヴァラク様と二人でパーティだなんていいのかしらッ‼
「どれもこれも美味しいですわ、ヴァラク様。素敵なお料理をありがとう」
「そう言ってくれると待ったかいがあったね。ソーナのネックレスもすごくきれいだよ」
「ああああありがとうございますわよっ!」
いきなりヴァラクから褒められて驚くソーナ。ありがとうと言うつもりが変な感じになってしまった。
「わよ?」
不思議に思ったヴァラクだが、ソーナは話を切り返した。
「そ、そう言えばヴァラク様はその両手はどうなさったのですか?」
ソーナの言う両手とは、ヴァラクが手に包帯を巻いていたからである。この屋敷に来てからずっと気にはなっていたソーナ。ヴァラクは蝋燭の明かりに手をかざして見せながら気まずそうに答えた。
「実はですね、私も今まで知らなかったのですがどうやら猫アレルギーみたいでして。あはは」
「猫アレルギーって、まさか! 私の飼い猫をあの日触ったせいでそんな――」
心配するソーナに笑って見せるヴァラク。
「ソーナのせいではありませんよ。決して。私が知らなかったことですから仕方ありません。それに医者からも薬を塗っておけば治ると言われましたし。何も心配いりませんよ」
ヴァラク様はお優しいのね。本当に。けれど私が原因なのは確かだわ。
「ごめんなさいヴァラク様、あの日私と会わなければ、ヴァラク様に怪我を負わせることもなかったのに…」
「そんなこと言わないで!」
謝るソーナに、ヴァラクは少し語気を強めて言った。それでも、次の言葉はいつもの様に優しいものだった。
「そんなこと言わないでくださいソーナ。私はあなたと出会えて嬉しいのですよ。たとえそれで両手を怪我したとしても何の後悔もありません。だからソーナ。私と会わなければなんて、言わないでください」
ソーナはヴァラクの想いが嬉しかった。胸がいっぱいのソーナには、一言言葉にするだけで精一杯。
「…………ありがとう」
それから、二人は一時間ほどパーティを楽しんだ。
「そうか、ソーナは農家の跡取り娘なんだね。それも、ただの農家じゃない。あの一大農家、ルクシュ農園の一人娘か! トイツ大国にとっては大事なお方だ、丁重にお相手せねば」
いたずらっぽく話すヴァラク。
「お戯れをヴァラク様。私の方こそヴァラク様がトイツ大国第三王子だと知らずに申し訳ありませんわ。初めに訊いた時は耳を疑いましてよ」
ソーナが今しがた言った通り、ヴァラクはここトイツ大国の第3皇子であったのだ。
「申し訳ないソーナ。私はあまり自分から身分を名乗る方ではなくてね。身分を明かすとみんな対応がよそよそしくなってしまうんだ。それが苦手でね。ソーナにはそうなってほしくなかったんだ」
許してくれと、頭を下げるヴァラクに慌てるソーナ。
「だだだ大丈夫ですわ、ヴァラク様。ご心配なくとも私は変に距離を置いたりしませんわ」
それを聞いて、表情が明るくなるヴァラク。ソーナはそんな子供っぽい一面もあるのだと嬉しくなった。
瞬く間に時間は過ぎてゆき、ソーナはヴァラクの屋敷を去る時間となってしまった。ソーナは馬車に乗る前にヴァラクに一つ提案を出した。
「そうだわヴァラク様、パーティが終わっても私を待っていてくださっただけでなくって、お料理まで出して頂いたんですもの。私に何かお返しさせて下さらないかしら?」
そんな、お返しだなんて大丈夫ですよ。というヴァラクだったがソーナはそれでも!と懇願した。
参ったという表情を浮かべるヴァラク。しばらく考えていたがいい案を思いついたのかそれならばと話し始めた。
「それならばソーナ、私をソーナの屋敷に呼んではくれないかい?」
「ええ、もちろん! 私の屋敷ですわね、分かりました―――」
途中まで快く話していたソーナ。しかし、ヴァラクの要望がソーナの家に来ることだなんて思ってもいなかったのでしばらく固まってしまった。
「…………わ、」
「わ?」
「私の家ですか‼‼‼‼‼」
驚きを隠せないソーナに涼しい顔をしているヴァラク。
「何か問題がありますか?」
「いいえ! 問題はありませんわ! むしろうれし、ではなくて! 私の屋敷に来るだなんてそんな事でよろしいのですか?」
本音をこらえてソーナはヴァラクに聞き返す。
「ええ、もちろん」
月明かりに照らされたヴァラクの笑みに太陽のような輝きを見出すソーナ。いささかソーナには眩しすぎるようである。ソーナはすぐさま馬車に乗ると、中からヴァラクに声をかけた。
「それでは、私は屋敷に居ますのでいつでもお待ちしておりますわ」
それに応えるヴァラク。
「近いうちにまた手紙を送るよ。ソーナの屋敷が楽しみだ。また逢う日まで」
「今日はほんとにありがとうヴァラク様」
二人はお互いが見えなくなるまで手を振り続けた。互いの頭上に輝く月と星々はそんな二人をいつまでも見守っていた。
――――――・・・――――――
それからしばらく立った日の正午過ぎ、ソーナは屋敷のテラスに出ていた。
午後の陽気な日差しの下、足をバタバタ揺らしながらティータイムを楽しんでいるソーナ。机にはハーブティと山積みのお菓子。それから、今朝届いたヴァラクからの手紙が置いてあった。パーティに参加した人に送られる感謝状と思われるその手紙を声に出して読んでいるソーナ。
「ソーナ。先日は二人だけのパーティ、楽しんで頂けた様で嬉しかったよ。次にパーティを開くときにはなるべく早く来てくれると嬉しいな。それから、ソーナの屋敷に行く予定なんだが、ついさっき職務の予定がキャンセルになったもので、明日行くことになったよ。この手紙も急遽書き記している。私が行く前には届くはずだから問題は無いとおもうよ。それでは明日を楽しみにしているね。ヴァラク」
ヴァラクからの手紙を読み終えると、言葉にならない感情を体で表現するソーナ。
ヴァラク様が明日来るっ‼ 私の人生の中で必ず一番素敵な日になるわ! あ、でもヴァラク様に助けて頂いた日が一番かしらっ! んー、どっちも一番ッ‼!
ソーナはテーブルに置いてあった山積みのお菓子を一口で食べ終わると、明日来るヴァラクをもてなす用意を使用人たちと夜遅くまで準備するのであった。
最後まで読んで頂いてありがとうございました!
ソーナさん、まさか家に呼ぶことになるなんてね!おめでとうソーナ!!
意外とヴァラクはもう一押しくらいでおち……
それでは、評価コメントの方お待ちしております!!




