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再び会うことを約束するよ

どうもザクロです!

ちょっと長くなりましたが、暇つぶしにはちょうどいい長さだと思いますよ。


ヴァラクさんちで眠りについたソーナさんですが、朝起きた彼女を待っていたのは…


よろしくお願いします!

 太陽が顔を出すか出さないかの爽やかな青空。日中は汗滴る暑さだが、早朝からそんなに暑い訳ではない。ベッドから起きようとしないソーナの肌を清々しい冷たさがさらりとなぞっていく。

 しばらくベッドの中でもぞもぞ寝返りを打っていたソーナであったが、ここが自分の家ではない事を思い出すとゆっくりと上半身を起こした。


「昨日のあれはやっぱり夢じゃなかったのね……」


 昨晩ソーナの身に起こった事件。名も知らぬ、訳も分からぬ男二人に追いかけられ、殺されかけた。憂鬱な顔を浮かべ、恐怖で手が小刻みに震えてもおかしくは無いが――――


 当の本人、ソーナはというと顔を真っ赤にしていた。

 さらに言うならば両手を胸の前に押し当てて、自分の鼓動を確認していた。


 つまり、彼女は昨日襲われた事を思い返している訳ではなく、ソーナを救ってくれたあの方の事を思い出していたのだ。


「キャー、どうしましょう! あの方を、ヴァラク様を、好きになってしまいましたっ‼」


 ヴァラク様を思い出す度に胸が苦しくなりますわ。これが人を好きになるという事ですのね!

 あぁ、ヴァラク様、愛しのヴァラク様。


 トントン。


 ソーナがヴァラクとの昨日の会話を思い返していると、窓を叩く小さな音が聞こえてきた。ソーナの位置からはカーテンが閉まっているせいで誰の仕業なのか分からない。

 正体が分からないというのは思っている以上に不気味なものである。ソーナは窓の方へ行けずにベッドの上で身を固めていた。


 トントン。

 

 トントン。


 トントントン、、、


 しばらく窓を叩き続けていたが、その犯人は以外にもソーナが一番知っている相手だった。


「ニャオ」


 トントン、、


「…………ニャオ」


「………ん? 今ニャオって…」


 その声に聞き覚えがあったのか、ソーナはベッドを降りると半信半疑のまま窓の方まで歩いていった。 閉まっているカーテンを開けると、そこには真っ白な毛並みを太陽に輝かせ座っている猫がいた。


「ヴォ、ヴォルト!! 何であなたがここに? ええ! まぁそれは後でもいいわ、早く中へお入り」


 ソーナは思ってもみなかった来客に驚きはしたものの、すぐさま窓を開けヴォルトを中へ招いた。見知らぬ部屋でそわそわしているヴォルトだったが、ソーナがベッドの端に腰かけたのを見ると直ぐに彼女の膝に乗った。


「それにしてもよく私がここにいるって分かったわね。ヴォルトって本当に賢いわ」


 ヴォルトの背中を優しく撫でるソーナ。そのまま、ソーナはヴォルトに話しかける。


「そう! ヴォルトに伝えたい事があるのよ! 私ね、好きな人が出来たのっ!」


 猫に人の言葉が分かるはずがないと踏んでなのか、ソーナは思いの内をこれでもかと言葉に乗せ始めた。


「その方はね、それはもう綺麗な顔立ちでね、昨日私達が細道で襲われたとき救ってくれた方なんだけれど、私が怪我してるかもしれないからって、気を失っている私をわざわざ運んでくれて手当までしてくれてそれにそれに、今日はもう遅いから泊まって行ってはいかが?なんて優しすぎるわよっ!!」


 彼女が熱弁している最中に後ろのドアからご本人登場的な展開になっているとは少しも気づいていないソーナ。ただヴォルトは、ドアの音が聞こえたのか彼の方を見つめていた。ヴァラクは自分の事に気が付いた猫に対して、人差し指を唇に当てるポーズをとっている。猫はそれを理解したのかどうかは分からないが、特に動くわけでも無くソーナの熱い思いをとんがった耳で受け止めていた。


「それでね、何と言っても彼の声はまるで天使の様なんですわ。心に寄り添ってくれるような、優しく包み込んでくれるような…… 私はヴァラク様のあの声に救われましたわ」


 そこまで静かに聴いていたヴァラクだが、少しからかいたくなった様で口を開いていた。


「それは例えばこういう声なんでしょうか?」


「そうそう!そんな感じですわ」


 うんうんと頷くソーナ。まだ気づいていない彼女をさらにからかうヴァラク。


「私の声をそんなに評価して頂いて、嬉しいですよ」


「いえいえ、当然の事ですわ。ヴァラク様のそのお声に私は救われたのですから!」


「そこまで言って頂けるなんて、光栄の限りです。何か私に言って欲しい事がありましたら何なりと」


「あらあら、沢山ありすぎて決めきれませんわ。んーそうですわね、まず始めはやはりす――」


「……す?」


 ソーナが何と言って欲しいのかはっきり聞こえなくて聞き返すヴァラクであったが、ソーナからの答えは沈黙であった。なぜソーナが黙り込んでいるのかと聞かれれば、答えは彼女がやっとヴァラクがいる事に気づいたからであり、ソーナの熱弁をどこから聞いていたのか一気に不安になったからである。


「ソーナ?」


 ヴァラクは黙り込んだ彼女を心配して声をかける。その声がヴァラク本人だという事を理解しているソーナであったが、恥ずかしさで声が出ないでいた。


 どどどどどどうしようぅっ! 私がヴァラク様を好きになった気持ちがばれてしまった⁉ ってあれ?ヴァラク様こっちに歩いてきてるっ⁉


 焦るソーナを知ってか知らずか、ヴァラクはベットに座り固まっているソーナの傍へ行き耳元で声をかけた。


「ソーナ」


「はいっ‼」


 耳元でささやかれた自分の名前に思わず返事をして起立してしまったソーナ。恥ずかしさも相まって彼女の顔は真っ赤だ。

 急に立ったせいでヴォルトも膝から転げ落ちてしまったが、そこはやはり猫である。空中で姿勢を立て直すとうまく着地して見せた。

 ヴァラクは元気な返事をしてくれたソーナを見て少し驚いた様子だった。


「いい返事だね。ごきげんよう、ソーナ。昨日はよく眠れたかい?」


 ヴァラク様が話しかけてくれているわ。無視するわけにはいかないけどっ! やっぱり恥ずかしいぃ。


 黙ったまヴァラクに返事できないでいるソーナ。


「ソーナ、隣座ってもいいかい?」


 ………コクリ。


 かろうじて反応をするソーナ。次に話し始めたのもやはりヴァラクであった。


「この猫君が飼っているのかい? よくここが分かったね。もしかすると二人の絆が引き寄せたのかな?」


 そう言って、ヴォルトに手を伸ばし、頭や背中を撫でるヴァラク。それを見ていたソーナは自然と言葉が声になっていた。


「ヴァラク様は、お好きなのですか? その… 猫などは」


 話してくれたソーナに笑顔で頷くヴァラク。


「好きだよ。でも僕は猫だけじゃなくて動物はみんな大好きさ。それでも、ほとんどは書籍や図鑑で読んだだけなんだけどね」


「何か飼っていたりなさらないのですか?」


「そうだね、家が動物禁止でね。飼いたくてもかえない、触れたくても機会がない。ってとこかな。猫に触れるのも今日が初めてなんだよ」


 初めてにしては触るのが上手なヴァラクに感心するソーナ。


「ヴァラク様はどうして動物が好きなんですか?」


 ふと思った疑問を言ったソーナ。しかし、その答えは満面の笑みだった。


「どうしてかって? それは…………、内緒」


 この時のソーナの感情を音で表現できるとしたらきっとこんな感じだろう。


 …………ボンッ‼


 ソーナは心を沸騰させる勢いで、ヴァラクへの想いを募らせるのであった。


 外では既にソーナを家まで送る手はずの馬車が待機しており、顔を出した太陽は今日も自身の仕事をすべく、大地を熱し焦がさんばかりに照らしていた。馬車の操者はというと、既に暑いのだろうか日陰に陣取っている。

 ベッドから立ち上がって外を眺めていたヴァラクは、待機している馬車を見ながらソーナに話しかけた。


「ソーナ。あなたを家まで送る馬車を下に待機させているから、その者に自宅までの道を伝えてあげるとよいでしょう。この国の道なら全て知っている操者ですから。安心して下さい」


「ヴァラク様はなんてお優しいのかしら。本当にありがとう、感謝するわ。………あの、ヴァラク様。一つお訊ねしたい事があるのだけれどよろしいかしら?」


 不安そうなソーナに、優しく声をかけるヴァラク。


「ええ、なんでもどうぞ」


「お尋ねしますわよ。きょ、今日の私に初めて声をかけて頂いた時の事、覚えていらっしゃいますか?」


 ソーナが聞こうとしているのは、早朝の事らしい。ヴァラク様への想いをべらべらと話している最中にヴァラク様から声をかけられたのだ。もうしかしたら、彼女の想いを聞かれていたかもしれない。

 最初からずっと気にしていたようである。 


 ヴァラクは今朝の事を思い出していた。


「ええ、覚えていますよ。ソーナが一人で私の事について話していましたよね?」


 ヴァラクの返答を聞いて、ソーナの心臓は一段と強く弾む。


 これは全部聞かれていたに違いないわ。こうなったら覚悟を決めるのよ私。

 当たって砕けろの精神よ私ッ‼ ……やっぱり砕けるのは嫌ッ‼‼


「ヴァラク様、わ、わたしはですね、その、えっと、、あなたの事がす――――」


「そうそう、私の声が綺麗だって凄く褒めてくれてましたよね。直ぐに声をかけるのも何だか恥ずかしくなってしまって… あの後ソーナを驚かせるようなことになってしまって申し訳ない」


 ヴァラクはソーナの言葉を聞き終わる前に、喋りだした。ソーナはきょとんとしている。


「つまり、ヴァラク様はそこからしか聞いていないという事ですか?」


 ソーナの言葉に頷くヴァラク。


 …………。


 危なかったっ‼ 私の思い込みでつい何も知らないヴァラク様に思いを伝えるところでしたわ。


 深く心を撫でおろすソーナ。


「良かった」


「良かったとは?」


 ソーナの言葉の意味がよくわからず、聞き返すヴァラク。


「え、ああ、、えっと、ななななんでもありませんのよっ‼」


 不思議そうな顔をするヴァラクをごまかすソーナだが、ふとヴァラクの手に赤い斑点が現れているのに気づいた。ソーナはその事が気になってヴァラクに訊こうとしたが、もう屋敷を出発する時間を過ぎていた。


 急いで身支度を整えると、ソーナはヴォルトを連れて用意してもらっていた馬車へ急いだ。ヴァラクは外まで見送りに来てくれていた。ヴァラクの髪は太陽の光を吸収しているかの様にキラキラと輝いている。

 それから、馬車に乗り込むソーナに声をかけるヴァラク。


「それではソーナ、気を付けて」


 太陽の輝きに負けない笑みが、ソーナの心を躍らせる。


「ありがとうヴァラク様。また会えるかしら?」


 ソーナの問いにヴァラクは少し考えて答える。


「そうですね。それではこういうのはどうでしょう? 近いうちに私主催のパーティーを開く予定でして、それにご招待させて頂くというのは?」


 ヴァラクの返答に驚きを隠せないソーナ。まさかヴァラク主宰のパーティーに呼ばれるなんて、ソーナの想像をはるかに超えていたのは間違いないだろう。


「いいいいいいのですか⁉ 私が参加しても!」


 馬車から身を乗り出して食いつくソーナ。ソーナの重みで馬車の片輪が浮いてしまっている。


「ええ、もちろん。日にちが決まったら改めて、ソーナの家に招待状を送りますね」


 最早ソーナの喜びは隠しきれないものになっていた。ニヤニヤが止まら様子である。


「ヴァラク様からの招待状が届くのを心よりお持ちしております。その際には必ず、必ず足を運びますわ!」


 ソーナが馬車から身を乗り出しているので車輪は片方浮いたままだが、操者はそんなのお構いなく馬車を進め始めた。


「私も楽しみにしていますよ」


 そう言ってソーナに手を振るヴァラク。ソーナもヴァラクが見えなくなるまで手を振り返していた。

 ヴァラクが見えなくなって、馬車の席に座り直すソーナ。操者はソーナが座ったのを確認してから行き先を尋ねてきた。


「ソーナ様、あなたのお家はどこですか?」


 それから、ソーナは思い出したように答えるのであった。


「…お腹空いたわ」

最後まで読んで頂いてありがとうございました!


評価コメントの方お待ちしております!!

もう、どしどし送っちゃってくださいW

それでは!

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