運命の瞬間
気を失ってしまったソーナ。あの時彼女を救った者は誰だったのか…
どうもザクロです!!
最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
ソーナが眠りから覚めて始めに脳裏をよぎったのは、誰もが感じる当たり前の事だった。
「………お腹、空いたわ」
心の声がしっかりと漏れ出しているソーナ。
しかし、最高級であろう寝具にすっぽりと収まって寝ていた彼女には扉のすぐ横に立っている男に今の声を聞かれているなど思いもしなかっただろう。
男はソーナに食欲があるとみて、安堵の表情を浮かべた。
「体調は悪くありませんか?」
そう言って、男はソーナの寝ている寝台へ進み始める。
「えぇ、お腹が空いたわ。なにか持ってきてちょうだい――」
あれ? 使用人にあんなにきれいな声をした者がいたかしら…
まるで路地の細道で私を助けてくれたあの方の声にそっくりだわ。そう言えば私あの方に助けていただいた後どうしたんだっけ? そのまま気を失って……
ソーナはベットに寝たまま眉間にしわを寄せてあれこれ考えていると、また綺麗な声が彼女の耳に届いた。しかしその声は先程よりも、鮮明でソーナの鼻の上から降り注いでいる様だった。
否、降り注いでいる様ではなくまさに男はソーナの顔の上に覆いかぶさるようにしてソーナの顔の前で反していたのだ。
「残念ながら私はあなたの使用人ではありませんよ」
急な声に驚いて目を開けるソーナ。
その時彼女の目に飛び込んできたのは――――天使だった。
中性的な顔立ちを覆うようにして緩やかな曲線を描く金髪は、彼の華奢な首筋を煌々と照らしている。
私死んだの? お迎えが来たの?
石のように硬直したままのソーナに、その男は覆い被さったまま天使の微笑みを返す。
「しかしお腹が空いているご様子ですね。この時間は既に夕食を済ませてあるので軽いものしか残っていないけれど、ご用意いたしましょうか?」
驚いてベットから起き上がろうとしたソーナが、男とこの後どうなったかは言うまでもない。
ガコンッッ‼‼
二人の額がぶつかりあった衝撃でソーナは寝台に跳ね返り、男は勢いよくしりもちをついた。それでもソーナは赤くひりつく額を右手で押さえながら体を起こして男の方をみやった。
「だだだ、大丈夫ですか⁉」
男の額を見ると白いはずの肌がほんのり赤く染まっている。
「えぇ、大丈夫ですよ。それより、膝の傷の具合はいかがですか?」
「膝の傷? あぁ…」
額とお尻を交互に気にしている彼を心配するソーナだが、彼の言う膝の傷というのが何なのかおおよそ見当がついていた。
きっと、二人組から逃げている最中につまずいて転んだ時の傷を言っているんでしょう。確かにそう言われてみれば何となく膝下の辺りがズキズキと痛む。
膝の傷を確認するためにシーツをめくるソーナ。すると、痛む傷の辺りは丁寧に包帯が巻いてあった。
「女性の体に無断で触れるなど無礼を承知ではありますが、その傷を放置するわけにはいかずこちらで治療させて頂きました」
男は片膝をついてそう言った。俯いて辛そうな表情を浮かべる彼。
慌てて言葉を紡ぐソーナ。
「そそそんなにお気になさらないでくださいっ! 私はもうこの通り元気ですし、治療までしてくださってっ‼ えっと、だからそのっ――」
焦りすぎよ私ッ‼ 全然彼のフォローになってないじゃないのよ。えっとえっとなんて言えばいいのかしらっ‼
必死に男を励ますソーナ。男は俯いたままの顔を上げると、拾われた子犬の様な笑みを浮かべてこういうのであった。
「ありがとう。感謝いたします」
ソーナは男の笑みを見て、額の赤みが分からなくなるくらい顔を真っ赤にした。
ソーナはこれまでの人生で食べ物が全てだった。美味しいものを食べ、美しい品々に囲まれ、浴びるほど食に恋をしていた。だが、たった今それは過去のものとなったのである。
食にしか興味がなかったソーナが初めて食以外のものに気を惹かれたのだ。
そう、
ソーナは、
この日、
恋をした―――
なななななにこの胸の高鳴りっ! だめっ‼ 心臓が飛び出しそう!
ソーナはもはや男を直視する事が出来なくなっていた。この思いが彼にばれてしまうかもしれない。
ソーナは男から目を少し下に落とすと、何とか話すことが出来るくらいには落ち着いた。
「私の方こそ、危ない所を助けて頂いて、こんな丁寧に傷の手当までして頂いて… ありがとう」
ソーナの言葉を聞いて安心したのか男は近くにあった椅子に腰かけた。
「今日はもう遅い。あなたがよろしければ今宵はこのまま休んでいかれませんか? 明日朝早くにお送りいたしますよ」
男の提案にソーナも頷く。
「私もあんな事があって、夜の道はしばらく歩きたくないと思っていたところですの。ご厚意に預からせていただきますわ」
「それは良かった。それならもう私は出ていきますので、ゆっくり休んでください」
そう言って、早々に歩き去っていく男の背中を名残惜しそうに見つけるソーナであったが、男がドアに手をかけたところで急にこちらを振り返ったので思わずシーツを頭まで被って隠れてしまった。
「そう言えばまだあなたのお名前を聞いていませんでしたね」
シーツ越しにでも聞こえるあの綺麗な声。シーツを肩の位置まで下して、でも目は合わせずにソーナは答えた。
「ソーナ・ルクシュと言います………… ソ、ソーナと読んでいただいて構わないわ。あなたは?」
おっと失礼。聞く前に自分の名前を名乗らないなんて私はまだまだですね。
そう言って男はその綺麗な声で、天使の様な声で、誰もを引き付ける悪魔的な声で、名を名乗った。
「私の名はヴァラク。 ヴァラク・クルーガ。これからよろしくお願いします、ソーナ」
ソーナにとって、運命の瞬間。
それはきっと、たった今交わされたのだろう。
最後までありがとうございました!!
コメント評価の方ドシドシお待ちしております。
まったきってねー!!!ww




