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絶対に無理ゲーと思うエアガンで異世界攻略を!  作者: イカのなっちゃん
第一章 学生編
4/8

第四話 『魔法学院で新たな高校生活を!・前編』

「失礼しましたっ!」


 我に返った春樹は反射的に扉を閉め、真っ先に部屋の番号を確認する。

 『二〇三九』と、扉の上にはそう記されている。

 部屋番号は間違ってない。

 なら、男子寮だんしりょうと女子寮を間違えた? いや、さすがにジキル学院長がそんなヘマをするはずがない。

 きっと何かの見間違いだ。

 そうか、美男子か。胸も小さかったし、きっとそうだ。じゃなきゃ、俺は明日から学院で変態呼ばわりされてしまう。

  編入へんにゅう初日からそうなったら本気で引き籠もりになる自信がある。


「は、入っていいですよ」


 と言われても、かなり気まずい。さっきの出来事があったのにどうやって入ればいいんだよ一体?

 これで実は女の子でしたとか言われたら本気で自殺するぞ。


「あの? ハルキくんだよね?」


 扉の隙間すきまから片目だけをのぞかしてこちらを見ていた。


「は、はいそうです」


 やっぱ可愛い……

 オラクルが特徴的な銀色の髪に、ルビーのように赤い瞳、新雪のように白く柔らかそうな肌。

 とても男とは思えないほどに可愛らしいその少年(?)は扉の前で辺りを確認すると、春樹を部屋へ引き釣り込んだ。


「良かった、誰もいなくて」

「あ、あの……?」

「あわわわわ、ごめんなさい突然」


 少年は手をバタバタとさせながら、慌てふためいていた。

 なんだろう……この可愛い生き物は。

 リヴェルやルコラも相当な美少女だが、女の子としての“何か”が欠けている。それに比べて何だろうかこの生き物は、初めてあったのに二人に比べてオーラとでも言うべきものが違いすぎる。


「それはいいんだけど、君は?」

「僕は君の同居人のミユル=アレイシア、よ、よろしくね」

「俺の名前は――――」

「ハルキ=レイ=アルケギニアだよね?」


 誰それ? 名前格好良すぎだろ。

 おそらく、ゼウス様かジキルさんが手続きをする際に、周りに溶け込めるように名付けてくれたのだろう。


「あ、そ、そうだよ」


 ミユルの女の子のような笑顔を見て、春樹は否定出来るわけなかった。

 よし、改名しよう。明日から俺はハルキ=レイ=アルケ……あれ、何だっけ? ま、とりあえず後で覚えるとするか。


「その、ハルキさん。ささささっき、ぼ、僕の体見ましたか?」


 ミユルは顔を赤くし、顔を下に向ける。

 春樹は頭に浮かんだミユルの裸を想像したが、心を落ち着かせてミユルの顔を見ながら、


「いや、見てないぞ。一瞬しか見てないからそんなに覚えてないし」


 勿論嘘である。 

 タオルのせいで大事なところは見えなかったけど、背中のラインや太ももは脳内に完璧にインプットしている。


「よ、よかった」


 ほっとしたようにため息を吐くミユルの姿に、罪悪感を感じながら春樹は苦笑いでほほいた。


「落ち着いたことですし、お茶でも飲みます? 今朝仕入れたばかりの良い紅茶がありますよ」

「いいのか? 頼む」

「少し待っててくださいね」


 ミユルは台所に行くと、やかんに水を注ぎ入れた後に、火のついたコンロの上に乗せ、鼻歌交じりで水がくのを待っていた。

 その間に、春樹は玄関前の扉に置いてある自分の荷物を部屋に持って行き、箱の中に入っていた荷物をダブルサイズのベッドに展開する。

 室内は思っていたよりも豪奢ごうしゃで広く、3LDKと贅沢だ。

 遠くの方まで見渡せるベランダが付いている上に、室内にはトイレが三つ設置されている。しかもレバーを引いて水が流れる水洗式。


 実はこの学院にいる人達って、すごいお金持ちの貴族だけかもしれなかったりする?


 まるで高級ホテルに泊まっている気分だった。


「お茶が入りましたよ」

「おう、今行く」


 ミユルが春樹の部屋の前から声をかけに来ると、春樹は台所に向かった。


 扉の先からでも分かる紅茶のいい香り、そしてバラのような香りもほのかに漂っているようにも感じる。


「なぁ、ミユル。少しなんだけどさ、バラみたいな香りがしてるような気がするんだけど」

「はい、ローズウォーターを一滴だけ紅茶の中に入れてみました」


 ああ、なるほど。

 確かローズウォーターって、ただバラの良い香りがする水じゃなくて 目や肌、髪にもいい効果を発揮するっていうやつだった気がする。


「冷めないうちにのんでみてください」

「お、おう」


 口に入れた瞬間、ローズウォーターの爽やかな香りが体全体に浸透するかのように流れ込み、一日の疲れがやされるくらいに疲れが抜けていった。


「これ、おいしいな」

「良かった」


 うれしそうに顔を綻ばせるミユル。

 おい、その笑顔反則だろ。

 ティーカップをカタカタと震わせながら、紅茶をすすった。


「どうかしましたかハルキさん?」

「いや、なんでもない」

「変なハルキさん」


 相手は男子だというのに何だろうこのモヤモヤ感。


「ハルキさん、紅茶が飲み終わったら今日はもう寝ましょう。明日は学校もありますし」

「そうだな」


 春樹はティーカップを洗面所に置き、部屋に戻る。

 そして明かりを消し、ベッドの中に潜った。

 ベッドの中に入ったのはいいが、明日から俺はどうすればいいんだ。

 春樹は毛布にくるまりながら、まず、今日の出来事を整理した。



――二分経過――


しかし、長続きはしなかった。

 

睡魔に襲われた春樹は、そのまま眠りについてしまった。






 カーテンから差し込む日差しが、熟睡していた春樹を目覚めさせた。


「な、なんだこのご褒美は?」


 日差しに邪魔されながらもまぶたを開けると、正面には寝ているミユルの顔があった。


 え、なにこれ? ミユルが俺のベッドに入っているだと。

 そういうイベントはさ、もっとこう、仲良くなってからというか、親しくなってからとういか。

 


「う、うぅん。あ、おはようございます。ハルキさん」


 揺り起こそうと手を伸ばしたところで、ミユルが口を大きく開けながら身を起こした。


「お、おはよう」

 

 心臓が止まるかと思った。

 勿論、ミユルに何かしようとはしていなかったけど、心の準備が出来てない状態でいきなり起きられると、さすがにビックリする。


「今日も良い天気ですね、ハルキさん」


 ミユルはベッドを降りて、ベランダの窓を開けると、ベランダを伝って自分の部屋に戻って行った。


 いつもなら春樹は、朝は遅くまで眠るタイプだが、ミユルがベッドに入っていたせいで、今朝はすっかりと目が冴えてしまった。


「今日も一日頑張るか」


 なにはともあれ、今日から異世界ライフだ。思いっきり楽しまなきゃ損だよな。

 春樹は珍しく、自部の部屋で、うろ覚えではあるが朝の体操をして体をほぐしていた。


「さて、運動もしたことだし、風呂に入るか」


 異世界に来る前は、夏祭りの帰りでこの世界に来たから入ってなかったし、昨日も疲れが溜まっててベッドでそのままぐっすりだ。さすがに、今日入んないとマズいよな。


 ジキル学院長から支給された箱の中から、制服とタオルを取りだし、風呂場に向かった。

 さすがに、今朝は時間があまり無いため、シャワー浴だが、体を清潔にするには十分だ。


「ハルキさん。朝食を作ったんですけど、食べますか?」 

「風呂上がったら、食べるよ」


 丁度、お腹が減っていたところだった。昨日から口にしたものといえば、『榎木えのきと松竹の里』とミユルの入れた紅茶ぐらいだ。

 それにミユルが作ってくれたものだから、きっとおいしいはず。

 ああ、待ち遠しいな。



 風呂から上がり、バスタオルで体を拭いた後、ジキル学院長から支給された制服を身にまとう。


 自分でも言うのも何なんだが、以外と格好いい。

 男子の制服はインナースーツを肌着として着用し、足にまで行き通った丈の長い黒いロングコートをその上から着用。そして特徴的なのは、肩や腰に装甲の類いのようなものがくっついていることだった。その装甲はロックを外し、ワンタッチすると、上の部分が開閉し、手のひらサイズの物なら収納することが出来るスペースがもうけてある空間が出来ている。何より重さを感じないほどに軽いので便利だ。

 地球にはない、高度な技術が集約されているのであろう。


 制服についての説明書にはこれだけしか書いていなかった。


 制服を着るのに時間を使い過ぎた。時間は――――七時三〇分。

 やばい、急いで朝食を食べないと間に合わない。

 教科書などの書籍しょせきかばんに詰め込み、右肩の装甲にはスマホを入れ、急いで台所に向かう。

 ミユルの作った食事はクロワッサンに、コーンポタージュスープとマフィンだった。 


「おいしい」


 案の定だった。

 少し冷めてはいるが、味に問題はなかった。

 朝は和風がいいと思っていたんだが、洋風もいけるんだな。

 と、関心している場合じゃなかった。確かジキル学院長が支給してくれた箱の中の紙には『八時までに職員室に来るように』って書いたあった。


 春樹は朝食を完食し、洗面所に食器を置いたあと、鞄を手に持ちながら玄関に向かった。

 扉をきちんと施錠し、あとは職員室に向かうだけだった。

 寮の廊下を駆け足で突っ走り、学院に着くまでスピードを維持したまま走った。

 おかしいな? 俺道知らないのに体が勝手に学院の方へと向かってる。

 昨日の白い壁に貼ってあった看板かんばんの字も、見たこともない筈なのにスラスラと読めた。まるで、昔からこの世界の住人だったような気分。



――――七時五十九分。職員室――――


「ギ、ギリギリ、セーフ」


 息を荒くしながらその場でひざまづき、深呼吸を繰り返しながら息を整えた。

 しっかし、この学校土地が広大すぎだろ。いったい何キロぐらいあるんだよ。


「遅いわよハルキ=レイ=アルケギニア!」

「時間的にはぴったりなんですけどね」


 春樹の目の前にいるこの女教師はフレイ=カトスピラーヌという、春樹のクラスの担任を務めている女教師だ。スラリとした身長と何よりも特徴的なのは、目つきが鋭いことだった。


「そんな言い訳はいらん。まぁ、今日は初登校日だったわけだから免除くらいはしてやろう」


 なんで上から目線。

 そしてこの女教師は、口調や態度も教師らしいとはお世辞でも言えなかった。


「あと少しでホームルームだ。荷物を持って教室に行くぞ」


 春樹は無言で頷くと、荷物を持って自分の教室に向かった。

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