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【書籍化】わたしはたまごで異世界無双する!  作者: 葉月クロル
おまけ話『魔剣・紅蓮の神影』

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たまごが本になったよ! 記念SS

 たまごは、お年頃の女の子。

 モテたいの。

 モテモテのたまごになりたいの。


「うおっ、たまごだ」


「ヤバい倒し方をするあいつか?」


「ヤバいもんを持って踊るあいつだろう」


「マジかよ」


 ちょっとやめてよ、わたしが求めているのはそんな評判じゃないよ!


「ちょいとおだてると、調子良く肉を食わせてくれる太っ腹なやつだぞ」


 うううう、それもちょっと違うんだよね。


 わたしは、この世界のモテモテアイドルにならなければ、元の世界に帰れないのだ。しかし、中身はかわゆいJ Kなのだが、たまごから出られないので、このつるっとした姿でみんなからきゃあきゃあ言われる必要がある。

 ううむ、前途多難である。

 わたしの似顔絵を描いて、たまごの前面に『これが入ってます』と貼りつけておこうか。

 それとも、リザンの頭を持って、この世界中を歌い踊りながら回り、ぶいぶい言わせようか。


 わたしは、朝の混雑する冒険者ギルドで悩み、この悩みを解決するための依頼でも出そうかと考えていた。


『急募! たまごアイドルのマネージャー』


 とかさ。


「たまご、邪魔」


「あっちで考えてろ」


「おやつをくれてもいいんだぞ?」


 荒くれ冒険者たちにどつかれながらたまごはくるくる回り、たまごアームを組んで考える。


「リカちゃん、営業妨害しないでちょうだい。いい子だから、そのテーブルのところで待ってなさい」


 冒険者ギルドのモテっ子職員のチアさんに叱られた。


「悩みごとがあるなら、手が空いてから相談に乗ってあげるわ」


 や、優しい!

 さすがはモテっ子でありながら有能な冒険者だけあって、問題解決能力に優れたお姉さんだね!


「リカさんを下手に放置しておくと、ろくなことになりませんからね」


 笑顔で朝からキッツイことを言ってくれるね、ライルお兄ちゃん!

 ツンデレのデレが少なすぎて、今日も単位がppmだよ!






「ううん、リカちゃんの人気を上げる方法、ね」


「そう! 詳しい事情は言えないんだけどさ、たまごは人気者にならなければならないの。それも、Sランク冒険者並みのスーパーアイドルだよ」


「じゃあ、Sランク冒険者になっちゃえばいいわ」


「なっちゃえばいいわって、チアさんたら、そんな簡単に……なれそうだね、たまごなら」


「うん、問題解決♡」


 チアさんは掲示板に近づくと、いくつかの依頼を選び取った。


「割と手ごわいのと、面倒で人気がないのと……こういう依頼を受けてこなしてくれれば、ランクアップのための加点がされるし、他の冒険者からも一目置かれるわね。人気につながるわよ」


「なるほどね! じゃあ、お兄ちゃん、さっそくこれらをピッてしてよ」


「はい、こちらにカードをください。そして、チアの仕事の見事さには驚かされますね」


「うふふ、なんのことかしら?」


「……チアさん、依頼をこなすのもいいけどさ、そういう『うふふ』っていう笑い方をたまごに教えてよ、そっちの方が人気が出るような気がするんだけど」


「あら、たまごがうふふって笑ったら」


「気持ちが悪いのでやめましょう」


「ほらね?」


「ひどいやお兄ちゃん!」





「ただいまただいまたまごだよ! チアさん、依頼は全部完了してきたよ」


「まあ、早いわね! さすがはリカちゃんだわ、スーパーアイドル志望だけあるわね」


 わたしはとっとと依頼(主に魔物狩りだよ)を済ませたので、まだ早い時間なので空いている冒険者ギルドのカウンターに声をかけると、チアさんにびっくりされた。


「はい、カード」


 ギルドカードには、自動的に依頼の完了が書き込まれるのだ。魔法って便利だね。


「魔物は引き取り所に出せばいいんだね」


「そうね。カタールカトルのツノだけは預かっておくわ。セラールギルド長からの依頼だから。助かったわ、カタールカトルを狩れる人がなかなかいなくてね。ギルド長が休暇を取って狩りに行こうかって言い出してたんだけど、忙しくて延び延びになってたのよ」


「ふうん」


 ちなみに、カタールカトルとは巨大なカタツムリの魔物で、すべてのものを溶かすというぬらぬらした液体をかけてくる嫌なやつだ。もちろん、たまごはそんなものにはびくともしなかったけど、ぬらぬらをひっかけられて少しむかっとしちゃったね。


 わたしは、ゴムでできたみたいな半透明のカタールカトルのツノをびよーんと出して、チアさんに渡した。


「こんなもの、なにに使うの? 肩叩きかな?」


「エルフ秘伝の薬の材料らしいわよ」


 飲むと身体がゴムみたいにビヨーンて伸びたりしてね。


「リカちゃん、お疲れさま。さあ、そこのテーブルにかけて」


「ここに?」


 たまごは座れないので、テーブルの後ろに立つと、チアさんが紙でできた札を立ててくれた。


『みんなのアイドル、役に立つたまごと握手しよう! 今なら特製たまご饅頭がもらえます』


「え? なにこれ」


「ここでアイドルとしての活動もしていっていいわよ」


「この、特製たまご饅頭って」


「それは自前でよろしくね♡」


 そしてわたしは、仕事を終えて戻ってきた冒険者と握手をしては、その口にたまご饅頭を押し込むというアイドル活動をした。喜ばしいことに「疲れた身体に甘いものがしみるぜ!」「おお、役に立つたまご、がんばれよ!」と、大変好評だった。


 これでたまごのファンが増えたね!


「たまご饅頭のおかげで、冒険者たちが待っている間にイライラすることもなくて、よかったわね。リカちゃんをビルテンの冒険者ギルドの公認アイドルにするよう、セラールギルド長に進言してみるわ」


「チア……恐ろしい人ですね」


「あら、みんな幸せになっていいじゃない」


 チアさんがにっこりと笑った。


 ライルお兄ちゃんが、口元をヒクヒクさせていたけど……たまご、細かいことは気にしないで、アイドルへの一歩を踏み出すよ、てへっ!

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