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【書籍化】わたしはたまごで異世界無双する!  作者: 葉月クロル
勇者召喚編

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勇者召喚編  たまごの良く効く薬だよ!

 わたしは『調合』を唱えた後に、いつものように出てくるたまごの薬をたまごアームで受け取ろうとした。

 しかし。


「わあ!」


 予想に反し、目の前にいきなり大きなテーブルが現れたので、わたしは思わず声をあげた。周りを椅子が囲んでいて『これから素敵なお茶会が始まるよ♪』っていう雰囲気だ。

 

 これは……すごい。ヤバいな。

 ヤってくれるぜたまご!


「どう……しましたか?」


 地面にぺたりと座り込んで首を揉んでいたライルお兄ちゃんが、のろのろと頭を上げて言った。


「『すごいシュークリーム』でも出そうかと思ってみんなが元気になる薬を『調合』したらさ、なんかすごいのが出てきたんだけど! たまごもびっくり! たまごの踊りは、シュークリームじゃ済まないくらいに、そんなに深くみんなに感銘を与えちゃったってことなのかな?」


 すると、ライルお兄ちゃんは弱々しく『ふっ』と笑った。


「リカさん、現実から目をそらすのはやめましょう。あなたが与えたのは、感銘ではなく……戦慄です」


「戦慄?」


 それはさ、心が震えるって意味だっけ?


 ねえライルお兄ちゃん、いつもは澄みきったブルーの瞳をしているのに、なんで今はこんなにも光が翳っているの?


 あ、そうか、今日はいろんなことがあって疲れちゃったんだね! やだ、たまごったら気が回らなかったよ! いけないいけない、早く癒やしてあげなくちゃ。


「ライルお兄ちゃん、あーん」


 わたしはテーブルの上にちょこんと置かれていた小さな容器を持ち、中に入っていた可愛いたまごボーロをライルお兄ちゃんの口に入れた。


 それをもぐりと食べたとたん、お兄ちゃんの眼に光が戻ったよ。よかった、さすがはたまごのよく効く薬だね!


「お疲れのところを使いだてして悪いんだけどさ……。今回のたまごの薬はテーブルに乗ってるから、この椅子に座って食べてもらいたいんだよ。でも、今のままじゃ、みんなが立ち上がれないみたいから、お兄ちゃんがこのたまごボーロをひとつずつ食べさせてあげてよ」


 少し顔色は悪いものの、普通に動けるようになったライルお兄ちゃんは「わかりました」と言ってたまごボーロの入った器を受け取り、みんなの口にひょいひょいと配り出した。

 

 さすがはお兄ちゃん、素早い動きだね。

 端からむくむくと起き上がって、あっという間に全員が立ち上がったよ。

 ああっ、たまごもお兄ちゃんにあれをやって欲しかった! 

 たまごだけあーんしてもらってない!

 おねだりしようにも、たまごには口がないからできないよ、くうっ!


 あーんしてもらい損ねたわたしが嫉妬に震えていると、ポーンと電子音がして小さなテーブルが現れ、そこには飲み頃の緑茶と器に入ったたまごボーロが置かれていた。


『落ち着きましょう』


 うむう、気の利くたまごだね。


 感心しながらお茶をすすり、ほんのり甘いたまごボーロを口に入れてさくっと噛んだ。


 わたしはおやつで一息つき、平常心を取り戻してから言った。


「さあ、ちょっぴり元気が出たね。みんな、こっちに来てテーブルに着いてよ。よく効いて美味しいたまごの薬を用意してあるからね」


「たまごの薬……えええええっ、薬?」


「まあ、なんて美味しそうなデザートなの!? これが薬ですって!?」


「きゃああああ、素敵! なんて素敵なおやつなの!」


 きゃあきゃあ言っちゃってるのは、お茶目な聖女のミーリアさんだ。実家が果物屋さんの聖女シルビアさんと手を取りあって喜んでいる。


「まあ、カラフルな果物がたくさん使われて、とても豪華なおやつだわ!」


 さすがは果物屋さんの娘。やはりそこをチェックしたか!


「さあさあ、早くテーブルにつきなよ。見た途端にみんなの気分が良くなっちゃったみたいだけどさ、やっぱりたまごの良く効く薬は食べなくっちゃ!」


 女子だけでなく、男性たちも顔をほころばせてテーブルにつく。神殿スタッフも集まってるから結構な人数たけど、たまごの薬はちゃんと全員分あって、セルのための専用の席もできている。神獣になったセルは「うわあ、すごいすごい! こんな美味しそうなおやつを見るのは初めて! ねえ、お母さん、早く食べたい!」と興奮するミリーちゃんの隣で、興味津々といった風情でふんふん匂いを嗅いでいる。


「みんな座ったね? じゃあ、いただきます」


「いただきます!」


 声を揃えて言うと、フォークを持ったみんながおやつに突撃した!


『すごいプリンアラモード』

 スペシャルでファビュラスなプリンアラモード。夢のような美味しさで、どんな心の傷も癒やしてしまう。食べた人は今後の人生で幸運がアップする効能もある。


 そう、これが今回の薬なのだ。

 ほろ苦いカラメルソースがたっぷりかかったカスタードプリンの隣には、バニラビーンズを惜しみなく使ったミルキーなバニラアイスが添えられ、そこにはカカオの香り高いチョコレートソースがとろりとかかっている。

 その周りには、それぞれ最高級のよく熟れたマスクメロン、いちご、オレンジ、バナナ、ブルーベリーが見た目も美しく盛り合わされていて、そこに泡立てられた生クリームがふんだんに絞ってあり、果物の酸味とミルク感溢れる濃厚なクリームで極上のハーモニーを醸し出す。

 そこへカリッとした食感を添えるのは、スライスした香ばしいアーモンドをキャラメリゼして作るクッキーであるフロランタンだ。


 細長いフロランタンをカリコリとかじり、柔らかなプリンを食べ、ひんやりしたアイスクリームと甘酸っぱいフルーツ、そしてとろけるクリーム……。

 忙しい! 味わうのに忙しいよ!

 最高に嬉しい忙しさだよ!


 そう、わたしもたまごの中で、はぐはぐうまうまと『すごいプリンアラモード』を味わっていたのだった。


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