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【書籍化】わたしはたまごで異世界無双する!  作者: 葉月クロル
勇者召喚編

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勇者召喚編  お客さんがやってきた?

 ターキラスの丸焼きは脂がのっていて、噛むと口の中に肉汁が溢れるしっかりした肉質で、香ばしい焼き加減と香草ミックスの風味でものすごく美味しかった。

 あれだね、外はパリパリ、中はジューシーってやつだね。

 もしかすると、ライルお兄ちゃんと一緒に作ったから、余計に美味しかったのかもしれないな。ひとりで食べるご飯より、笑い合いながら誰かと食べるご飯は美味しいしね。


 そんなわけで、たまごの完璧な結界の中で、無言になってはぐはぐと夢中になって肉を味わってから、お兄ちゃんが冷やしてくれたさっぱりとした果実水を飲んでいると、結界が外から叩かれた。

 素早くたまご索敵の画面を確認すると、円いたまごの結界の外に青いたまごが数個表示されている。


「いい人が3人」


「了解です」


 素早くミスリルの鎧を身につけていたお兄ちゃんが答えた。あまりに素早すぎて、ヒーローの変身シーンかと思うくらいだよ。


 敵じゃなくても常に警戒態勢をとるあたりが、手練れの冒険者だね。たまごだったら、なんにも警戒しないで「どうしたのー」って出て行っちゃうよ。

 まあ、完全防御力があるから、相手がドラゴンでも「おたからだー」って出て行っちゃうけどね、えへ。


「どうやらケガ人がいるようです。リカさん、結界の一部のみを解除することができますか」


 結界の向こうには、血を流しながらも、身体で女性たちをかばおうとする男の人が見えた。その男性をまたかばおうとする女性たちで、ちょっとわけがわからなくなってるけど、この人たちがいい人だってことはたまごの心に伝わってきた。


 たまごは正義の味方だからね、この人たちを守ることに決定!


「やってみるよ」


 ほんのりたまご色に光るドーム型の結界の外で、女の人が見慣れない透明な壁を恐る恐るノックして、「すみません、助けていただけないでしょうか」と弱々しく言っている。差し迫った状況だろうに「助けて!」と言わないあたりが丁寧だね。


 わたしはたまごアームの先で、人が通れるくらいの大きさに結界の一部に線を描いてたどり、「ここだけたまご結界、解除」と言った。すると、しゅっと穴が開いた。


「さあ、こちらに入ってください」


 ライルお兄ちゃんがいざなうと、「ありがとうございます」と頭を下げて3人の男女が、女性優先で入ってきた。肝が座っているのか、大きなたまごが「大丈夫?」と声をかけても「はい、ありがとうございます」と驚くことなく答えたのが好印象だね。


「さあ聖女さま、こちらへ」


「ありがとう」


 え? 

 今、聖女って言ったよね?


「ほおう、こりゃまたいきなりVIPに接近遭遇だね」


 顎(のあたり)に手を当ててうなるたまごだよ。


 聖女と言われて最初に結界に入って来たのは、まだ十代前半らしい、茶色の髪をおさげにした女の子だ。鼻の頭にそばかすがある純朴そうな子で、わたしよりも年下っぽいね。そういえば、神官風な白い服を着ている。

 次に入ってきたのは、聖女のお付きの女の人みたいで、もっと年上のお姉さん。同じようなシンプルな白い服を着ている、で、最後は護衛の人かな。防具をつけたおじさんで、この人がケガをしてるんだ。


「3人分、『すごいミルクセーキ』を調合!」


 この人たちの様子を見て、わたしはすでに手に薬草と毒消し草を持ってスタンバイしていた。

 ケガ人じゃない女性たちにも、疲労している様子だから薬を飲ませておくよ。


「さあ、わたしは『魔導薬師』もやっていて、これはたまごの良く効く薬なんだ。ケガ人のおじさんは全部飲んでね。女子ふたりは一口飲んで元気が出たら、事情を簡単に説明してよ」


 たまごアームに持った『すごいミルクセーキ』を、ひとりずつに手渡して言った。


 3人は、わたしがたまごの力で薬を調合したのを見てびっくりした様子だったけど、差し出されたミルクセーキがあまりにもいい匂いがするので、素直にたまごの指示に従って受け取り、飲んだ。

 一口飲み込んで『ほわああああああ』という顔になったところで女子に質問する。

 

「まず、外の状況と、残された人の有無は?」


「怪鳥アビスパーが二羽襲ってきました。護衛の騎士二名が足止めしていますが、かなりの重傷を負いながらわたしたちを逃がしてくれて……」


「やば、騎士を助けなくっちゃ! お兄ちゃん、鳥をさくっとヤってきます。あとはよろしく!」


 たまごがしゅたっと手を上げると、ライルお兄ちゃんも片手を上げて「ヤってらっしゃい。惨殺はしない方向で」と笑顔で見送ってくれた。


 って、だからさあ、そこは『気をつけて』って言おうよ!


 それを見ていた聖女とお付きの人と、ミルクセーキを一気飲みして顔色が回復したおじさんが驚いてわたしをとめた。


「待ってください、たまごさん、アビスパーが二羽ですよ!?」


「怪鳥アビスパーですよ!? あの怪鳥が二羽ですよ!?」


「わかっておいでですか!? ありがたく献身的なお言葉ですが、どうぞ無理をなさらないでください。できればこの避難所に騎士を誘導してくださるとありがたいのですが、それすら危険なことなのでお願いするにはどうかと……」


 たまごはアームで胸のあたりをぽんと叩いた。


「だーいじょーぶだって! このたまごに任せておきなよ! ところでさ、アビスパーって美味しいの?」


 3人はその質問を聞いて、今度はあんぐりと口を開けた。


「アビスパーの、あ、味!?」


「お……いしいのかどうか、は……」


「そのような大胆なことを試した者はいませんわね……」


「だいたい、アビスパーを倒したものが今までいませんよね? 怪鳥が出たら逃げるか追い払うしかないですよね?」


 へえ、相手にとって不足のなさそうな鳥肉じゃん!

 間違えた、鳥じゃん!


「じゃあ、たまごが新しいグルメにチャレンジするよ。美味しかったら分けてあげるからさ、楽しみにしてて。じゃ」


 わたしはたまごの結界の外に出ると、Aボタンを何度か押してぽーんぽーんぽーんと飛び上がり、そのままBボタンを押してたまご飛行に入った。

 空飛ぶ鳥には飛行で対抗するよ!


「たっ、たまごが飛んだ!?」


「と、と、飛んでますわ!? なぜですの、なぜたまごが空を!?」


「……あらまあ……世の中にはまだまだ知らなかったことがたくさんありますのね」


 なんかいろいろ言われてるよ。

 たぶんお兄ちゃんは『たまごですから』って答えてるね!


 わたしは、怪鳥に襲われている騎士たちを助けるためにスピードをあげた。

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