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The Third Eyes  作者: WAIESU
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第六話 彼方の秒針 kanatano byousin(A)

  

  

 澄んだ空に、眩しい太陽が辺りを照らす。


 鳥のさえずりが心地よい旋律を奏でる。


 木造の、簡素だがどこか温かな雰囲気を与える家々。


 農業に勤しむ老人や、植え込みの花壇に水を恵む女性。


 元気にはしゃぎまわっている幼い子供。


 生き生きとした緑が村の周囲を囲み、綺麗な花々が村を彩っていた。




 そこは、時間が止まっているかのような穏やかな場所。




 ――――懐かしい。




(ここは……)



 

『私の母が一番好きだった花が……この花なんです』


『やっぱり、貴方は優しい人ですね。あの頃と全然変わっていない……』




(そう、か――――)




 深き場所に沈んだものが、ゆっくりと浮かんでいく。

 記憶という名の器を覆う霧が、晴れていく。



『エレンの花っていって、西の山岳地帯でしか咲いていない花なの』 



(この村、だったか……)




 ――――どうして、

 どうして今まで、忘れていたのだろう。




『あなたの名前は……何というの?』


 それは重傷を負った一人の少年と、


『……俺はライ。ライ・ハルヴァイサー。君は?』


 呪われた少女の出会い。


『私の名前は――――エレン。エレン・ユミスネル……です』











       彼方の秒針――――――――第六話









  


「あなたはどうしてここに来たの?」

 少女に、問いかけられる。

「俺……?」


 よく覚えていなかった。

 確か、倒れているところを拾われて。


「どうして倒れていたの?」


 どうして?

 どうしてだろうか。



 少年は、一生懸命思い出そうとした。



 山を歩いていて、

 途中で魔物に襲われて、


 ――――そして、はぐれた?


 体中に包帯を巻いた少年は、曖昧ながらもそう答えた。

 目が覚めて、最初に視界に入った蒼い瞳に向けて。


 山。その森の中で魔物に襲われ、足を引きずりながらふらふらと歩いていた、というところまでしか記憶がない。


 少しして、部屋に大人が入ってきた。

 自分を助けた経緯を教えてくれた。村の側で倒れていたそうだ。


「全治一ヶ月というところだ。治るまでゆっくりとしていればいいさ。もしかしたら、君の仲間が来てくれるかもしれない」

 少女の父親だという人は医学の心得があるらしく、知的で優しい人だった。

 部屋には数種類の綺麗な花がたくさん飾られていた。他には、入り口をはじめ窓や壁に札が張らされていた。何の札なのか気になって聞いてみると、

「邪悪なものを祓う効果があるんだよ」

 と、教えてもらった。




 少年は、しばらくこの村に滞在することになった。

 

 

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