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The Third Eyes  作者: WAIESU
38/40

夢幻戦夜(F)

 

 

     □



 眼前に映るは、血塗られた光景。


 大柄な斧使いの男は心臓を貫かれた。


 短剣を持った化粧の濃い女は胴を斬り裂かれた。


 小柄で盗賊のような格好をした男は二箇所の頚動脈を切られた。



 ――――ぞくりと、背筋が震える。



 深い海の底を思わせる青眼に、ぞっとするほど端正な顔は氷のように冷たく、感情というものがまるで感じられない。


 死神のように剣を振るう少年。彼の名を、ライは知っていた。




 フォード・セレディアス。




 昔、噂で耳にしたことがある。『深海の水龍』と呼ばれる少年の逸話を。


 ――――彼の剣技は、見惚れるほど美しかった。


 剣を振るたび太刀筋を青白い光がなぞり、鮮やかな赤い血が飛び散る。


 あっという間に路地裏は墓場と化した。パウロを含め、二人ほど逃げ出したのか死体の数が足りなかった。そんなことにも気付かないほど、ライは見入っていた。



「最後はお前だ」

 戦闘中に起きた殺人劇が、一段落したようだ。

 返り血で黒い服を染めたフォードが、こちらを向く。

 と、その時、

「……フォード、もういい。目的は達した。行くぞ」

 いつからいたのか、路地裏の奥に男が立っていた。茶色のローブをまとっている。


 最初は、男の立っている場所が暗いせいもあり、気がつかなかった。


 彼が腕に何かを抱えていることに。



 人間。


 人間だ。






 しかも、あの姿は――――






「――――ウェルエーヌ!?」






 ライは凍りついた。

 油断していた。気配を感知できなかった。


「すまないが、この少女は連れて行く。これも仕事だ。悪く思わないで欲しい」

「待て! 彼女をどうするつもりだ!? 指輪だけじゃないのか!?」

 全速で、ウェルエーヌを取り戻すために走り出す。


「――――!」


 背後でフォードが何か言っているようだったが、どうでもいい。

 ローブの男が、左手を掲げた。

 その手の数メートル上に、無数の小石が出現する。

「……地の魔道士!?」


 人間は血液型と同様に、生まれながら『属性』というものを持っている。

 主に属性は『火』『水』『雷』『風』『地』『光』『闇』の七つに分類され、血液型と異なるのは、属性は二つ以上所持することもあるということ。

 魔道士が使う魔法はこの属性が影響し、当然ながら持っていない属性の魔法は使えない。


 無数の小石が豪雨のようにライを強襲した。

 腕で顔面を覆う。雹がどれほど勢いよく降ったとしても、これほどの衝撃には至らないだろう。石の一つ一つが当たるたびに皮膚が破れ、血が飛び、全身に激痛が走る。

(ああああああああっっっ!)


 飛びそうになる意識、倒れそうになる体に必死で耐えた。

 あっという間に服が裂け、肉は千切れ、ライの体は満身創痍になっていた。


「さすがだ……。普通ならもう倒れ伏している。ここまで耐えるとは大したものだ。ライ・ハルヴァイサー」

 男の声が聞こえる。腕で顔を覆っているため姿は捕らえられない。

 体の感覚が、無くなっていく。痛みなどとうの昔に分からなくなっていた。


「くっ……そおおお!!!」


 体中を叩きつける雨は止むことなく。


 ――――ライの視界は、閉ざされた。


 

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