表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Third Eyes  作者: WAIESU
19/40

廻る鐘(C)

 

 

「貴方も、この指輪を探しているのですか?」


 問いに、ライは正直に答えた。


「ああ。まさか君が持っているとは思わなかった。でも、その依頼はアゼルと一緒にもう蹴った。君の指輪をどうこうするつもりはない。本当だよ」


 そう。指輪の依頼は蹴った。

 彼女から奪うことなんて、できるわけがない。するわけがない。


「……………………」


 ウェルエーヌは黙ってライをじっと見つめた。ライも彼女の蒼い瞳を真っ直ぐ受け止める。

 そして、しばらくするとウェルエーヌはフッと表情を和らげ、優しく微笑んだ。



 初めて見た彼女の微笑みは、花の様に可憐で、儚げで、美しいものだった。



「やっぱり貴方は優しい人ですね。あの頃と全然変わっていない……」



「え……?」



 思わず見惚れていたライには、 ウェルエーヌの言葉がよく聞こえなかった。

「何でもありません。じゃあ私、部屋に戻りますね」

 ウェルエーヌは微笑んだまま、何事も無かったかのように台所を出ていく。

「ウェルエーヌ」

 ライは華奢な背中に向かって呼び止めた。この機会に、聞いておこうと彼は思った。

「怪我が完治したら……君はどうするんだ?」

「……………」

 彼女の住んでいた村は魔物に襲われて壊滅している。行くあてがあるのか、聞きたかった。もし無いのなら、このままここに住んでもらっても構わないとライは考えていた。

(おかしいな。いつからこんなにお人好しになったんだ、俺は)

 自分の考えに心の中で苦笑していると、ウェルエーヌは後ろを向いたまま顔だけをこちらに向けた。さっきとは違って、弱々しい笑みだった。

「遠くの村に知り合いがいるので、そこに行こうと思っています」

 嘘だ。と、ライは感じた。根拠は無いが、直感的にそう感じた。だが、彼女にも色々と事情があるのかもしれない。だからライは問い詰めようとはしなかった。

「そうか……。でも、もし行くあてに困ったら、ここに住んでもいいから」

「えっ……」


 ウェルエーヌは一瞬驚き、何かを言おうとして―――急に頭を抱えてしゃがみこんだ。



「っ……!!」



「……ウェルエーヌ?」




 ――――その彼女を見て、最初に感じたのは違和感だった。




 ただ事ではない様子に、ライは慌ててウェルエーヌの側に駆け寄った。彼女は声にならない声をあげて苦しんでいた。額から汗が流れている。

「どうした!? 頭が痛いのか? ウェルエーヌ!」

「だ……大丈夫です……。ただの……頭痛…です…から……」

「頭痛でここまでなるなんて変だろ! 待っててくれ、今医者を――――」


 頭痛というよりはまるで発作のようだった。

 ライは立ち上がって、台所から飛び出そうとした。が、ウェルエーヌにがしっと腕を掴まれる。


「本当に……いいんです! す…少したてば……治りますから……だから……側に…居てください……」

 懇願するように言うウェルエーヌを放っておけず、ライは留まった。


 数分が経過すると、彼女の言ったとおり、頭痛はすぐに治まったようだった。

「すいません。心配掛けて……」

「そんな事はどうでもいい。本当にもう平気なのか?」

「はい。あ、でも一応大事を取って、今日はもう寝ますね」

「ああ。その方がいい。体調が悪くなったら、無理しないで教えてくれ」

「分かりました。じゃあ……おやすみなさい」

 おぼつかない足取りでウェルエーヌは台所を出て行く。ライはもう一杯水を飲もうとして、止めた。

「ほら、肩貸すよ」

「えっ、あの」

「階段から落ちたりでもされたら困るから」

「す、すみません……」

 ウェルエーヌは俯き、小さな声で謝った。顔が赤い。ライは彼女を気遣いながら階段をのぼった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ