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The Third Eyes  作者: WAIESU
13/40

象牙の塔(D)

     □


 夜の酒場はいつも通り賑わっていた。グラスを合わせる音や、大きな笑い声が時折聞こえる。階段を上がって自室の向かい側にある扉を、ライはノックした。

「どうぞ」

 声を聞いてから扉を開ける。


 部屋にはセリアと、少女―――ウェルエーヌがいた。


 ちなみに、ライはアゼルに指輪と少女の事を教えた後、アゼルと共に少女の部屋に行った。アゼルの興奮を抑えるのには三十分程の時間を要した。部屋では少女とセリアが話をしていた。指輪の事はひとまず置いておき、ライとアゼルも少女と話をした。


『そう言えば、君の名前は? まだ、聞いてなかったよな』


 というライの問いに少女が答えるまで、少しの時間がかかった。何かを、考えているような。


『……ウェルエーヌ、です』


 名前を聞いた後は、各自で自己紹介をした。

 ウェルエーヌは何故倒れていたのかという質問について、「村が魔物に襲われて、逃げてきた」という答えを返してきた。少し前に、魔物に村が襲われて壊滅したという事件をメテュリーナから情報として聞いていた事を、ライは思い出した。

 そして今に至る。アゼルはまた来ると言って、一旦家に帰った。アゼルはウェルエーヌから指輪をぶんどるなどといったことはせず、以外にも冷静だった。

「具合、大分良くなったみたいだな」

 ライは近くの椅子に腰掛けた。

「あ……はい。おかげさまで」

 ウェルエーヌは笑顔を見せる。昼間より、顔色も良くなっていた。

「今、花の話をしていたの。ウェルエーヌも花、好きなんだって」

 セリアがライを見て言う。もう友達になったらしい。セリアは人と仲良くなるのが上手だ。それは彼女の性格故だろう。

「セリアの家、花屋だもんな。今度、何か持ってきたらどうだ?」

「そんな、そこまでして頂かなくても」

「遠慮しないで。取って置きの綺麗な花、持ってくるからね」

 セリアが嬉しそうに言う。ライもセリアに昔教わったので、ある程度の知識はあった。

「と、そうだ。風呂沸いたんだけど、先に入るか?」

 この宿屋には客室に風呂がない。が、一階に一つだけ小さな浴室がある。色々と不便なため、客用にはせず、ライやマスターが使っていた。

「あっ、うん。ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えるね。ごめんなさい、今日も泊まるなんて言って……」

「馬鹿。うちは宿屋だぞ。何日でも泊まっていってくれ。金はもらうけどな」

「あー、意地悪。ウェルエーヌには払わなくてもいいって言ってたのに」 

「ウェルエーヌは特別。ていうか、俺が連れてきたんだし」

「すみません。何から何まで……」

 ウェルエーヌは蒼い瞳を細くして、呟いた。

「別にいいさ。怪我が治るまでゆっくりしてくれ」

 そして、セリアとウェルエーヌは風呂に行った。ウェルエーヌは自力で歩けるほどには回復していた。医者もそれほど深い傷は無いと言っていたし、この調子ならすぐに治るだろう。セリアが少し拗ねていたが気にしない。それにライは、セリアから宿泊代を取るつもりなど微塵も無かった。

(アゼルじゃあるまいし)

 二人が風呂に入っている間、特にすることも無いので、ライは外に出た。

 夜空を見上げると、月が見えていた。教会の鐘がある方向だった。

「もうすぐ、満月か……」

 月の形を見てライは呟いた。満月の日には王都で祭りがある。去年はセリアとアゼル、他にも知り合いを誘って大勢で行った。


 今年も行こうかと考えていると、


 一瞬、空を人影が横切るのが見えた。


 人影はちらりとこちらを見る――――ライと目が合った。

 そして何事も無かったかのように街の向こうに消え去っていった。




 頭に衝撃が走ったのは、その時だった。



  

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